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アンゲルス  作者: Leone
第二章 仮初めの敵
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第百話 諸刃の十秒間

 遂に、聖なる剣の全体が明らかになった。

 水晶のように美しく、透き通った刀身。鍔の代わりに、大天使の翼と思えるものがついている。そして、刀身の根本には青い宝石のようなものが埋め込まれていた。

 その美しさは、抜いた本人であるキリエですら、魅了されてしまうくらいだ。

「綺麗……」

 キリエはそう呟いた後、即座にもう片方の剣も抜刀する。両方とも、信じられないような美しさだ。

 そうキリエが思った時、あの言葉が脳裏を過ぎった。

『それに命を奪われるかもしれないからね』

 何が原因なのか、全くわからない激痛によって――。

「あああああああああああああああああああああああッ!!!」

 全身が、まるで地獄の炎に焼かれているみたいだ。……いや、それよりももっと痛いに違いない。

 刺すような痛みに耐えかねたキリエが、大地に両膝と両腕をついた。

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い――。

「あああ……ッ」

 あまりにも痛すぎて、勝手に涙が溢れてくる。

 目の前に敵がいるというのに、こんな状態じゃ……。

「墓穴を掘ったな、ウリエルよ」

 案の定、ブラックはキリエを殺そうとしていた。

 高く掲げられる、ブラックの剣。

 それを見て、キリエは遂に決心してしまった。

 諸刃の剣となる事を――。

「残念だけど、負けるのはあなたの方よ、ブラック」

 この調子だと、痛みに耐えられる残り時間は、たったの十秒。それを超えれば、私は――死ぬ。

 振り下ろされるブラックの剣を、キリエは右手の方の剣で軽々と受け流す。

 そして、左手の方の剣でブラックの胸を貫いた。

「がはッ!!」

 返り血が飛び散ってくる中、それでもキリエは攻撃を止めなかった。

 一対の剣による、連続斬り。その回数は、両手両足の指を使っても決して数える事などできなかった。

 それだけ、キリエは怒っていたのだ。

「終わりよ! ブラック!!」

 為す術もないブラックの胴体に、キリエは剣を交差させて斬り払う事で、✕印を刻み込んだ。

 全身を斬り裂かれたブラックが、初めて、背中から倒れた。

 そして漸く、キリエは一対の聖なる剣を鞘に収めた。

 ――九秒、間に合ったのかな。

 直後、キリエはランツァ達全員に向かって微笑み、地に倒れてしまった――。

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