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アンゲルス  作者: Leone
第二章 仮初めの敵
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第九十八話 超越者、ガブリエル

 剣と剣が交錯している状態から、ランツァは無理矢理、ブラックを剣で押し飛ばした。

 二度も同じような攻撃をすれば、流石に対処されるというのか。ブラックは空中で回転し、地面に軽く手をつく事で体勢を立て直す。

「悪いが、一瞬で勝たせてもらうぜ」

 ランツァはそう言うと、突然、剣を投げ捨てた。

「……何をしている?」

「剣を捨てただけだが……? もう俺には、この剣は必要ねえしな」

 その時、ランツァの右手が黒いオーラに纏われた。

「俺は……もう一つ特殊な力を手に入れたんだ」

「……どういう事だ?」

 ブラックの問いに、ランツァは苦笑を返した。別に答える必要がなかったからなのか。既にランツァの右手には、答えのようなものが握られていたのだ。

 黒いオーラが、少しずつそれに変わっていたのだ。

 漆黒の大剣。

 刀身には、妙な赤い模様が刻み込まれている。そして、大剣の巨大さは呆れ返る程のものだった。ランツァの背丈の倍はあるだろう。

「冥土の土産に、軽く説明してやる」

 唐突に、ランツァがそう言い放った。

「俺は今、二つの能力をもっている。一つは大小操作ビッグモール。もう一つは、物体召喚イヴォリア。原則、天使や悪魔は特殊な能力を一つしか使えないようになっている。だが、俺はその決まりをぶち壊し、二つの能力を手に入れた。正直、どうやったのかは俺にもわからねえが……」

「…………」

 ブラックは言葉を失っていた。

 その意味を、少し離れたところで休んでいるレリアが説明する。

「ランツァ……あんた、選ばれし者だったのね……。天使と悪魔の中で、唯一複数の能力を扱う大天使……いや、大天使すらも超越している者『ガブリエル』……」

「……そうか。まあ、別に俺が何であっても、てめえを殺す事には変わりねえけどな」

 ランツァはそう言いながら、ブラックを睨みつけた。

「もう一つ、冥土の土産に俺の必殺技を見せてやる」

 ランツァは呪文のように小さく呟く。

「いでよ、断罪神アルマーダ

 直後、ランツァの背後の空間に亀裂が走った。その空間の亀裂をさらに広げ、異空間から巨大な何かが出てこようとしている。

「何だ……それは……!?」

 ブラックは、異常なくらい強大すぎる力が二つも眼前にある事に恐怖する。

「俺が創りあげた、俺の味方のようなもんだ」

 遂に異空間から出てきたそれは、全長十メートルもあるかもしれない。人の形をしている、白銀の巨大な大天使みたいだ。全体的にロボットにも似ているが、巨大な純白の翼は紛れもなく大天使のものだ。

「こいつの名は、断罪神アルマーダ。俺と共に闘い、そして、俺自身の力量を大幅に上げる事もできる、強力な味方だ。俺の能力、物体召喚イヴォリアは俺が想像したあらゆる物をこの世界に召喚し、操る能力だ。それを使ってこいつを召喚している、ただそれだけの事だ」

「く……ッ!」

「そして、こいつを使う事で、初めて俺の必殺技は完成する」

 ランツァが漆黒の大剣を掲げる。

断罪神アルマーダ、俺の断罪剣ティオルスソードに力を与えよ」

 掲げられた漆黒の大剣に吸い込まれるように、断罪神アルマーダの姿が消えていく。それと同時に、刀身の赤い模様が輝きを増した。

「いくぜ、ブラック」

 身の危険を察知し、ブラックは漆黒の翼で自身を最大限まで強化し、防御体制を取る。

断罪刃スケルス・グラディ!!」

 漆黒の大剣が、ブラックを襲った。

 直後、この場は凄まじい爆風と爆音で埋め尽くされていた。

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