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第2章 衝動

「それじゃ、乾杯〜」

「コーラで乾杯って…」

目の前の席で元気よく飲み物(コーラM)を掲げる先輩に、軽くツッコむ。

「まぁ良いじゃない。気分よ、気分。ほら〜」

「まぁ先輩の奢りですから従いますよ」

容器を合わせ、乾杯、と二人で言い、コーラを飲み始めた。先輩はプラスハンバーガーを5個にポテトLL(本来そんな大きいモノは無いが、先輩は、知り合いの店長に頼んで特注品を作ってもらった)を食べている。

その食べっぷりは見事としか言いようがない。

「優香君も食べたい?」

半ば感心して見ていた僕に聞いてくる。じっと見つめていたから勘違いしたのだろう。

「いえ、遠慮しときます」

「なに〜? ダイエットでもしてるの? いっぱい食べないから大きくなれないのよ?」

「ほっといてください。このままじゃあ先輩は横に成長していきますよ?」

先輩の表情が凍った。

「……」先輩が激しく反論してくるだろうと予想していた僕は、先輩のまさかの反応に困惑していた。

「せん、ぱい?」

呼び掛けても反応がない。ここでようやくこと重大さに気付く。ほんの反撃のつもり、完璧に冗談の一言で、彼女を傷つけてしまったのかも…

「あの、先輩。その…ごめんなさい。気にしてたんですね」

冷たい表情のままの先輩の眼を見ることが出来なくなり、自分の膝小僧を見ながら、謝罪を続ける。「それなのに僕、無神経なこと言って…本当に…」

それを遮るように、目の前から笑い声が響いた。もちろん声の主は先輩なのだが、僕はさっきと違う意味で困惑する。

「先輩? なに笑ってるんですか?」

「いや、ちょっと君をからかいたくなってふざけてただけなんだけど……優香君の謝る姿があまりにも可愛くて……」

笑いキノコを食べたかと疑いたくなるほど、顔を真っ赤にしてお腹を抱えていた。「優香君、プリティー過ぎだよ……」

「そんなこと言われても嬉しくありません」

僕はそっぽを向きながらコーラを啜る。

「ごめんごめん。拗ねないで」

謝っている最中も先輩はポテトを摘んでいる。僕は機嫌が悪いのも忘れ、呆れてしまう。

「先輩、本当に太りますよ?」

「あ〜、女の子に太るとか言ったらダメだよ」

先輩は口を尖らせてお腹を擦りながら、



「何かを食べても食べてもお腹が空いちゃうんだよね……成長期だからかな?」

「関係無いと思いますけどね……どうしたんですか?」

じっと見つめるくるので、恥ずかしくなって視線を外す。

先輩はおもむろに立ち上がると、僕の横に座った。

「で? 優香君の悩みは何だね?」

「いきなり何ですか?悩みなんてありませ……」

「嘘だね」

ちっちっち、と指を振りながら、先輩が僕の肩に手をかけ、「君を見ていれば分かるよ」

「何がですか?」

僕を覗き込む先輩の眼は、真剣そのもの。

−−もしかして、僕の気持ちが……

誰にも打ち明けていない想い。演劇に興味があって部活に入ったワケではなかった。

「優香君は、好きなんでしょう?」

やっぱり、バレていた。一番知られたくない人に。

「それは……」

「良いの! 全部言わなくても! 言わなくても私は分かってるから!」

先輩はさらに顔を強張らせて、「恵ちゃんのことが好きだって、私はちゃんと知ってるから!」

「は?」

ちなみに、恵と言う人物は、僕と同じ演劇部でクラスメートの女の子だ。 呆然としてる僕を無視をするかのように(実質無視されているが)先輩は話を続けた。

「大丈夫! クラスメートの女の子に恋をするのは罪じゃないから!」

−−そんなワケ無いでしょう。

心の中でツッコんだ。それがいけなかったのかもしれない。口ではっきりと否定しなかったせいで……

「やっぱりそうなのね? 恵ちゃんが好きなのね?」

…すっかり高城優香の好きな人=恵ちゃんと公式が立ってしまった。彼女に恋をしている僕には、残酷な公式だ。

「先輩、違いますよ。僕は別に……」

弁解はもうすでに遅い。先輩は妄想にふけっていく。

「よし。私が二人を幸せにしてみせる! まずは一緒に帰らせて……」


時間が経つごとに、さらに妄想はエスカレート。

「そして二人は眠れぬ夜を……夜中に少女の声が木霊するってか〜?」

もはや、酔っ払いに近くなってきた。いや、自覚があるあたり、酔っ払いより質が悪い。

「先輩、違いますって。第一、何で恵何ですか?」

一旦落ち着かせようと言うが、

「お! もう名前で呼ぶまでの仲なのね? ラブラブじゃ〜ん」「幼馴染みだから名前で呼び合うクセが付いちゃっただけです。恵のことは本当に何にも…」

僕は言葉を最後まで言えなかった。先輩は苦悶の表情をして、心臓の辺りを押さえている。とても、冗談とは考えられない。

「先輩! 大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫…ごめんね、優香君。私、もう帰るね」

「送ってきますよ! 大丈夫何ですか!?」

彼女は、大丈夫大丈夫、と言うと、突然走り出した。凄く早い。あんなに元気なら、やはり僕は遊ばれていたんだろう。

「帰るか…」

先輩の奢りのはずだった代金を支払い、僕は家へ足を向けた。

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