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異世界夫交換所によって新たな夫を迎え入れました  作者: 陽花紫


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4/7

愛を誓う

 ある穏やかな夕暮れ、マユとダグはリビングで並んで座っていた。

 外から淡いオレンジ色の光が差し込み、部屋全体が柔らかな色に包まれていた。


「ねえ、ダグ……」

 マユは、少し躊躇いながら口を開いた。

「少し、昔のことを話してもいい?」

 ダグは静かに頷き、マユの手に自らの手を重ねていく。

「もちろんだ」


 マユは深く息をつき、言葉を選ぶようにしてぽつりぽつりと語り出す。


「前の夫、タケシっていうんだけど……。彼は最初は優しかったの。でも、だんだん家ではぐうたらになって、私を家政婦のように扱うようになっていった。家事も買い出しも、何もかもが私任せで……。正直、毎日が辛かった」


 言葉とともに、胸の奥の痛みが少しずつこぼれる。

 ダグはマユの肩にそっと手を置き、労わるように彼女の瞳を見つめていた。


「……それは、辛かったな」

 低く静かな声が、マユの心にじんわりと染み入る。

「だが、マユがそのまま耐え続けることなく……。マユ自身のために未来を選んだことを、俺は尊敬する」

 その言葉に、マユの胸は強く打たれる。

 涙をこらえながら微笑み、ダグの手を強く握り返していく。


「……ありがとう、ダグ。あなたがそばにいてくれるだけで、私は救われるような気がしているの」


 ダグはそっと、マユの髪を撫でていく。

 そのあたたかな手の温もりが、言葉以上の思いやりを伝えていた。


「……俺も、過去は少し複雑だった」


 ダグはしばらく黙り込んだ後、静かに話しはじめていく。


「前の妻は、俺のことをつまらないとよく言っていた。家にいても邪魔だと言われ、夜の場にしか呼ばれなかった。俺は家の存続のため、世継ぎのために仕方なく結婚をした。だが、俺は……愛を求めたくても求められなかった」


 マユは黙って、ただ目を伏せることしかできずにいた。


「……そうだったのね」


 胸がひどく、締め付けられる。

 しかしダグのその声に、あたたかさと誠実さを感じていた。


「ただ、今は違う」


 ダグの瞳は、真っ直ぐにマユを見つめていた。


「マユが俺を受け入れてくれて、日々を共に過ごしてくれる。……それだけで、俺の世界は満たされているんだ」


 マユは胸に手を当てて、静かに頷いた。


「私も、あなたといると安心できる。あなたがそばにいてくれるだけで、心が軽くなるの……」


 二人の間には、言葉にせずとも通じ合うような空気が流れていく。

 互いの痛みを理解し、受け止め合うことで、以前にはなかった信頼と愛情が確かに芽生えていたのであった。


 その夜、二人は互いの身を抱き締め、永遠の愛を誓っていた。


「これからも、ずっと一緒にいましょう。ダグ」

「もちろんだ。マユとなら、どんな日も幸せにできる。……いや、幸せにしてみせる」


 窓の外には静かに夜の帳が下り、室内の光が柔らかく二人の身を包み込んでいた。


 それは日々の暮らしの中で育まれた信頼と優しさ、そして過去の痛みを分かち合った絆が、今夜、確かな愛へと変わった瞬間でもあったのだ。


 翌日も、二人の生活は静かにはじまる。

 朝の光、料理の香り、手を取り合いながら交わす会話。そのどれもが、ささやかな幸せとして心に刻まれていく。


 過去の痛みは、完全に消えるわけではない。

 しかし互いの存在によって、少しずつ和らぎ、二人だけの温かい世界を築いていく。


「ダグ、いってきます」

「いってらっしゃい、マユ。気をつけるんだぞ」


二人は静かに抱擁を交わし、マユはおもむろにダグの頬に唇を寄せた。

 ほんの一瞬の出来事であるものの、ダグは気恥ずかしそうに笑っていた。


「早く、帰ってくるからね!」


 マユもまた、赤くなる頬を隠しもせずに笑っていた。


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