マッチグアプリをインストールしたぜ
夜のとある住宅街の部屋の中ーーある男がスマホ片手に一人で盛り上がっていました。 表情はにやけていて、もう片方の手はガッツポーズをしています。 一体何が彼をそうさせているのでしょうか。
「ククク⋯⋯やはり俺の考えは正しかったのだ、これはうまくいくぞ!」
俺は笑みを隠しきれない、これはうまくいく⋯⋯モテ本なんて必要なかったんだ。
そう、それよりも大事なことがあるじゃないか。 俺はまるで自分に言い聞かせるようにつぶやく。
「同じ趣味を持った人との出会い、そこから始まる恋愛⋯⋯これが大事じゃないか」
「なに言ってるの兄貴? 頭大丈夫?」
またコイツ⋯⋯妹は部屋の中に入ってきて、俺に話かけてくる。 ふぅ、どうやら分からせる必要があるみたいだな。 俺は妹に向かい真面目な顔を作り感情を込めた言葉を伝えた。
「いいか、人生において大切なことは、モテようとすることじゃない。 無理をしてつくった偽りの自分なんてものは、すぐに崩れるんだ。 そしてそれは後々自分を苦しめるんだ。 それよりも、共通の趣味や考えを持っている仲間を探すことが大切なんだ!」
「妙に説得力あるわね、わかった私も頑張る」
「おお、一緒に頑張ろう⋯⋯さてと、ククク」
新しい出会いが俺を待ってるぜ。 さて、インストール完了、さっそくやってみよう。 俺は期待の眼差しをスマホに表示された画面に向ける⋯⋯この『趣味から始まるマッチングアプリ』と書かれた文字に。
『あなたの趣味を入力してください』
「ニャンニャンアドベンチャーズーー通称ニャンアドっと」
『入力確認しました⋯⋯検索完了。 該当アカウントを表示します』
俺は表示されたアカウントの中から相手を探す。 なるほど⋯⋯つまり、このアカウントたちは同志ということだな。 ふむふむ⋯⋯なに!このアイコンは、俺の推しニャンじゃないか。
「よし!君に決めた。 えっと『初めましてよろしくお願いします』⋯⋯これでいいな」
『こちら、こそ初めましてよろしくお願いします』
見つけたアカウントに、さっそく挨拶してみたら、返信が来た、ということはこれからリアルタイムでお話が出来るということだな、これはついてるぞ、というか⋯⋯もう運命に違いない。
「ククク『推しの猫をアイコンに入れていたので、是非挨拶をと思いまして』俺ながら完璧だな」
『そうだったのですね、私もこの猫を見た時から、好きになりましてこのゲームを始めたんですよ』
「何と言うことだ⋯⋯『その気持ちわかります、自分もこの猫の振る舞いや仕草に好感を持ったんです』と」
『私たち同じ考えを、持っている見たいですね。 失礼ですがどちらにお住まいですか』
「これは⋯⋯好感触だな『俺は⋯⋯に住んでいます。 貴方はどちらにお住まいですか』よしこれでどうだ」
『え!本当ですか、私も同じ所に住んでます、偶然ってあるものなんですね』
「おいおい、偶然?いや違うこれは運命だ⋯⋯ククククク」
俺は運命に感謝したこれが出会い、マッチングアプリの実力か、よしデートの連絡を⋯⋯しようとしたときスマホからアイツが話かけて来た。
「ご主人様、そんなにものごと、上手くいきませんニャ、それより、わたしと仲良くデートしましょうニャ」
「お前はAIアプリだからダメ、俺は生身の人間と仲良くなりたいの」
「そんニャ⋯⋯ご主人様は薄情者ニャ。 あんなに、いろんなことした仲ニャのに」
情に訴えてくるだと、コイツはなんなんだ、語尾がニャンなのは何故だ?⋯⋯可愛いじゃあないか。
「は! ゴホン、変な誤解はしないでくれ、あくまでお前との関係はビジネスだ、そして今はプライベートタイムだわかるな?」
「ご主人様はビジネスの意味わかってるのかニャ? ビジネスというのは⋯⋯」
「うるさい、気持ちで伝わるだろう、そう大切なのは心、それに従うは必然だ」
俺は彼女にデートの誘いをするべくメッセージをいれる事にした。
「ご主人様、普通マッチングアプリは何回か会話を繰り返して互い仲をふかめてから、そう言う段階になるのであっていきなりデートするのは違うじゃあニャいかな」
「ふ、そんなもん俺達には必要ねぇ⋯⋯『今度の休日デートに行きませんか』よし送信と」
『はいわかりました、場所はどうしましょう』
「ははは⋯⋯ほら見てみろ、常識なんて俺たちには関係ねぇ」
「びっくりする展開ニャ、本当に常識ないニャンて」
ーーデート当日俺は待ち合わせ場所で待っていた。 服装はもちろんスーツ手に花束⋯⋯これでバッチリだ。
「ご主人様、何やってるニャ⋯⋯普通にドン引きするニャ」
「ふん、これが男ってもんよ。 さてそろそろ約束の時間だな」
俺は空を見上げる、天からの恵みが、まるで俺を激励するように降り注ぐ
「天気も馬鹿なご主人様を笑っているニャー⋯⋯完全にびしょ濡れニャ」
「水も滴るいい男と言う言葉を知らないのか、⋯⋯ほら来た。こんにちは、今日はいい天気ですね」
「ずぶ濡れじゃないですか! 早く雨のかからない所に移動しましょう」
現れたのはどこか親しみのある声をした女性、顔はよく見えないが⋯⋯とても好感を持てる
「突然の通り雨でしたね、⋯天気予報で降るって言ってたっけ? はい、これで拭いてください。ハンカチです」
「すみません、ありがとうございます。 助かります、使わせていただきますね」
親しみがあるのは声だけではなく、ハンカチの匂いもか。 運命の力強すぎだろ、最高かよ。
「ところで、すごい格好ですね。 正直ひ⋯⋯驚いてます」
「ああ君にプロポーズする為にね、好きです付き合ってくだ⋯⋯はああ! な、なんでお前がここに」
「いきなり、どうされたんですか⋯⋯あれ、もしかして兄貴?」
いきなりの妹の登場に俺はいきなり現実に引き戻された、ふと目の前の妹を見る。
「おいおいどうゆうことだよ、デートだぞ!なんで部屋着なんだよ、舐めんじゃねぞ」
「妹だって気付いて言うことがそれ? まあ、言いたい気持ちもわかるけどさ、ほら兄貴言ってたじゃん『無理してつくった偽りの自分なんかすぐに壊れるぞ』ってだからそのままの自分で向き合おうかなって」
「そうか⋯⋯じゃあいくぞ。 丁度雨も止んだしさ計画してたプランがあるんだ」
「え? いいの私とデートって」
「関係ないさ⋯⋯それとも俺とじゃ嫌か? 俺たち、かなり気が合うみたいだからさ」
「そんなことないわよ、推し猫について語りたいし、行きましょ」
雨上がりの空を日差しがさしている⋯⋯今日は楽しい一日になりそうだ。
「やはりご主人様は相変わらずですね、次はあのにやけ顔で何をするのかニャ?」