希望と絶望
ダメだ…リュカスは死んでる。
炬怒羅はオーレリアの顔を見た。
「やるしかないか…」
炬怒羅は決心した。
自分の命と引き換えにリュカスを蘇らせると。
オーレリアを助けられるのは俺じゃない。リュカスだ。
きっとオーレリアもリュカスが回復したら正気になる。よね?
まぁ、なんなくてもリュカスなら何とかしてくれるでしょ。
炬怒羅は薄々気付いていた。リュカスを回復させてもオーレリアは正気には戻らないと。
炬怒羅は何人も見てきた。大切な人を失った人を。その末路を。
それでも炬怒羅はリュカスを信じる。
きっとうまくやってくれると。いや。絶対オーレリアを救ってくれると。
「点火と鎮火」
炬怒羅の体は風船に穴が開いたかのように小さく萎んでいく。
「リュカス…オーレリアを…」
炬怒羅は飛ぶ力もなくなり地面に落ちる。
だがその顔は希望に満ちた顔をしていた。
日が沈み、辺りが暗くなったころ、リュカスは目を覚ました。
「…ここは。」
リュカスは周りを見渡し、オーレリアの後ろ姿を見つけた。
「オーレリア!!」
リュカスはすぐに立ち上がりオーレリアのもとに走って行く。
「オーレリア、俺、なんで生きてるんだ?」
オーレリアの近くに着くとオーレリアの様子がおかしいことに気付いた。
「大丈夫か?オーレリア。」
リュカスはオーレリアの顔を見ようと前に行くと変わり果てた姿の炬怒羅が目に入った。
オーレリアは炬怒羅の遺体を抱いて泣いていた。
「炬怒羅…」
リュカスは自分を責めた。
何もできなかった自分を。
「オーレリア…一体何があったんだ。」
リュカスの問いにオーレリアは答えることはなく。炬怒羅を抱いて唯々泣いている。
リュカスはマナカとの戦いを思い出していた。
戦いを思い出すと同時にものすごい吐き気がリュカスを襲った。
リュカスはその場を離れ1人森の奥深くに移動した。
「ゴホッゴホッ」
リュカスは今、何をすべきか朦朧とした意識の中考えていた。
オーレリア…
リュカスは思いついた。
また前のようにオーレリアを慰めればいいと。
だがその考えはあまりにも浅はかすぎた。
リュカスはオーレリアの所へ戻り、慰めた。
「オーレリア、炬怒羅のことは残念だったけど…」
リュカスが慰め始めた瞬間オーレリアは叫んだ。
「あなたのせいで…リュカスのせいで炬怒羅が!!」
リュカスはオーレリアの言葉を聞いた瞬間、何も考えられなくなった。
リュカスは知らなかった。炬怒羅がリュカスを蘇らせるために犠牲になったことを。
「俺のせいだってのか!!」
リュカスは怒った。
今はそんなことしてる暇はない。さっきまでならそう考えて怒らなかっただろう。
「全部リュカスのせいだ!!」
オーレリアも何も考えられなくなっていた。
「そこでずっと泣いてろ。」
そう言ってリュカスはその場を離れた。
オーレリアは1人になった。
オーレリアは分かっていた。リュカスのせいではないことは。
だが14歳の少女にはあまりにも酷すぎた。
オーレリアは炬怒羅を強く抱きしめた。
炬怒羅の顔は希望に満ちた顔から暗く沈んだ顔に変わった。
これで第1部?終わりです。