覚悟の時
「私ヒル姉のとこ行きたい!!」
「ダメだよ!!リュカスはまだ寝ているじゃないか!!それにヒル姉って言うのやめろよ!!」
私は炬怒羅と喧嘩していた。
「炬怒羅はリュカスだけ守って。私は一人でもヒル姉のところに行く!!」
「ブリュンヒルデ様2に人を守れって言われてんの!!」
ガサガサ
「てかよ!!お前だって見た目弱そうじゃないか!!そんな見た目で1人でブリュンヒルデ様のところに行けるわけな…」
「音…するよね?」
炬怒羅は口を閉じ、周りを見渡す。
・・・・
さっきまであんなに言い争っていたのに今は謎のガサガサという音しか聞こえない。
ガサガサガサ…
!?
「オーレリア、気を付けて。通路から誰か歩いてくる…」
私は通路に目を移す。
「雷速矢」
通路から声が聞こえた瞬間、青白く光る矢が私に向かって放たれた。
「魔石開放」
ヤバいこのままじゃ…間に合わない…
「殺聖炎」
炬怒羅が口から赤黒く、禍々しい炎を噴射する。
赤黒い炎が青白く光る矢をかき消し、魔法を放った人を禍々しく照らす。
「電光石火」
そう唱えると体が青白い光に代わり、炬怒羅の炎の隙間を潜り抜け、私の目の前に現れた。
「初めまして。僕の名前はマナカ。よろしくね。」
そう言って私に手を伸ばす。
マナカと名乗る人は男か女か分からない中性的で綺麗な顔立ちをしていて、まるで仲間と見間違えるくらいの笑顔を私に向ける。
「あなた…何者?」
私はマナカの後ろにいる炬怒羅とアイコンタクトをしながら聞いた。
「う~ん、何者って聞かれてもな~。」
少し経ち、マナカは何かひらめいたような表情を見せ、話す。
「僕、女だよ!君と同じだよ!」
あ、女の子だったんだ…いや今はそんなの関係ない!
「今はそんなの関係ない!」
「え?」
「何しにここに来たの?」
「君が性別聞いてきたんじゃん…」
マナカはムスッとした顔で私に話す。
「僕はレオナール総帥を暗殺しに来たんだ。ついでに革命軍の埋蔵金も取りにね。」
マナカが話した瞬間炬怒羅は攻撃を再開した。
「風切」
炬怒羅が小さいけど力強い翼で風を作り出す。
マナカは建物の上に向かって高く跳ね、攻撃をよけた。
ヤバい!!私に当たっちゃう!?
「魔石開放、水護幕」
私の目の前に青く透きとおった色をした水の壁が現れ、攻撃を防いでくれた。
私は急いでリュカスのほうへ目を向ける。
「リュカス!!」
さっきまで倒れていたリュカスが起き上がり、私にニコッと笑う。
「おはよ!オーレリア。すまねぇな、ちょっと昼寝しちまったぜ。」
よかった。私はてっきり…
「オーレリア!建物の上を見ろ!!」
リュカスが焦った声をしながら叫ぶ。
建物の上にはさっき飛んで行ったマナカと、さっきまではいなかった謎の男が立っている。
「ここに、レオナールがいるのか?」
「はい。正確に言うとこの建物のさらに下にブリュンヒルデとともにいるようです。」
「そうか…それじゃあ急ぐとしよう。レオナールに埋蔵金が取られてしまっては困る。」
「分かりました。ルシアン様。ご一緒いたします。」
「…いや、私だけで行く。お前は引き続き、こいつらの相手でもしていろ。」
「…はい」
炬怒羅の顔は凄く張りつめている。
「あの人…さっき…ルシアンって言ったか?」
「うん。言ったぞ。てかお前誰だよ。」
そっか、リュカスは炬怒羅のこと知らないんだ。
私はリュカスに炬怒羅のことを説明した。
「マナカ、こんな所じゃ戦いにくいだろう?」
ルシアンはそう言うと、まるで舞台の指揮者のような振る舞いで、指を鳴らした。
その瞬間地下にいたはずの私達は、赤い花が沢山咲いている場所に立っていた。
「私はさっきの場所に戻ってレオナールを殺してくるよ。あ、自力で帰ってきてね。」
そう言うとルシアンはまた指を軽やかに鳴らし、どこかへ消えた。
「ここはどこ!?」
私が問いかけると、炬怒羅が答えた。
「分からない…けど少なくともブリュンヒルデ様はこの近くにはいない。」
「じゃあ俺達はどっかにワープさせられたってことか?」
「たぶんね。でも心配しなくていいよ!!この俺、炬怒羅様が守ってあげるからね~」
炬怒羅は自信満々に話した。
「それじゃやるよ!!」
「おう!」
「うん!」
マナカは私達を見て言った。
「ごめんだけど、君達に勝ち目はないよ。」
マナカは真剣な顔をして唱える。
「雷虎」
マナカの隣に雷を纏った青白く光る虎が現れた。
虎は低く唸り、炬怒羅に向かって突進する。
「俺とやるってんのか!!いい度胸してるじゃねえか!」
炬怒羅が見た目に合わないことを言い虎に向かって魔法を放った。
「殺聖炎」
炬怒羅が放った炎は虎に直撃した。けれども虎は怯むことなく襲い掛かる。
ほら、そこの2人、動物じゃなくて僕を見てよ。これから僕達も戦うんだから。」
マナカはすごく可愛い笑顔を見せながら私達にはなす。
「ほら、いくよ~、雷貫槍!!」
空から無数の槍の形のした雷が降ってくる。
その光景は空に浮かぶオーロラを見ているような、そのくらい綺麗で幻想的な光景をしていた。
だが、そんな見た目とは裏腹に、地面に落ちたら地面を抉り、焦がしていった。
ヤバい。こんなの当たったらただじゃ済まない。
いや、ただじゃ済まないところじゃない…確実に”死ぬ”。
私は覚悟した。少しでも選択を誤ったら確実に死ぬ。
でも、何としても、私は生きる。
革命軍の埋蔵金は渡さない!!