隠し事
初めてゴートヒルズに来てから3日が経った。埋蔵金はまだ見つからないままだ。
魔法の力の特訓中、私はふと思った。
元々私達がいなかったら総帥とヒル姉の2人で埋蔵金を探すことになっていた。
なぜ他の人たちは呼ばなかったのか。
色々と考えたが私には分からなかった。
「ヒル姉。」
「どうしたんだい?」
私はヒル姉に聞いてみることにした。
「なんでもっと人を連れてこなかったの?」
ヒル姉の手が少し止まった。
「ちょっと待っててね。」
そう言ってヒル姉は総帥さんのところへ歩いて行った。
総帥さんが全部決めてたんだ。
でも少し違和感がある。ヒル姉は分からなかったらハッキリ”分からない”と普通は答える。
私は少し考えた。その結果少しだけ分かった気がする。それは、政府の中で何か黒い動きがあるのかもしれないということ。
そのせいで総帥さんには信用できる人がヒル姉しかいなかったということかもしれない。
でもまぁ。情報があるって言っても、本当にあるのか分からない埋蔵金を大勢で探すのはちょっと馬鹿げてるか...
そう考えているうちにヒル姉が戻ってきた。
「すまない。まだその話はできない。」
やっぱり私の考えはあっているかもしれない。
ヒル姉の言葉を聞いて私は確信した。
今日の夜、私は総帥さんに直接聞いてみようと思う。
なぜ、少ない人数で埋蔵金を探しているのか。今、この国の政府はどんな状況なのか。
もし、話してくれなかったら、私は自分のさっき考えついたことを話してみようと思う。
ヒル姉は少し暗い顔をしている。ヒル姉らしくない顔だ。
そんなヒル姉を見ると私は悲しくなる。
総帥さんはすごくいい人で、ヒル姉もすごく優しい。
こんないい人達を嫌っている人がいるのか...
そう思うと、その人たちが悪者に見えてきた。きっと何か理由があるはずだけど...
あ...
私は気づいた。
徴税官だったルカディアさんをダスクヒルに派遣した人が総帥さんな訳がない。
総帥さんの優しい性格で徴税官なんか派遣しないし、そんな制度作らない。
きっと、徴税官を作った人が総帥さんを陥れようとしているんだ。
って考えすぎかも。
私の独り歩きしたただの妄想だ。
でも、一度考えこんでしまったらそれが本当にしか思えなくなってしまう。
「きゃあ!?」
私は光道玉を自分の足元に打ってしまった。
「大丈夫?、オーレリア。」
ヒル姉が優しく手を差し伸べてきた。
私は手を掴み起き上がる。
「毎日修行してるから体が疲れてしまっているのかもね。これ以上するのは危ないから、今日は休もっか。」
夜になり、みんながご飯を食べている中、私は総帥さんに聞いた。
「総帥さん、なんでこんな少ない人数で埋蔵金を探しているんですか?」
ヒル姉が私を叱った。
「オーレリア!その話はできないって言ったでしょ!」
ヒル姉が怒っているところ初めて見た。
ヒル姉に怒られるのは凄い嫌だけど、私は思っていることをすべて総帥さんに聞く。
「この国の政府は今どうなっているんですか?」
総帥さんは驚いた表情をした。
「政府は安定しているよ、埋蔵金探しの人が少ないのは、本当にあるか分からないものにそんなに人は使えないからね。」
総帥さんは何か隠していそうだった。
リュカスは何言ってるんだ?って目で私を見ている。
私は考えていたことを話そうとする。
でも私が口を開いた瞬間ヒル姉が私に怒鳴りつけた。
「オーレリア!!」
私は口を閉じ、近くの湖へと走る。
「一体何の話をしてるの?」
リュカスはブリュンヒルデとレオナール総帥に問いかけるが誰も答えない。
「…俺、オーレリアを追いかけてきます。」
オーレリアを見つけた。
どう話しかけよう?
勢いよく話しかけるか?それとも静かに話しかけるか?
いや...いつも通り話しかけよう。変に気を使うより一番いい。
「なぁ、オーレリア?」
オーレリアは何も言わず湖を眺めている。
「今日のご飯いつもよりすげぇ美味かったよ!!一体何入れたんだ?」
変に気を使ってしまった。いつも通り話しかけようと決めたのに…
オーレリアは依然黙ったままだ。
「あー、えーと…」
掛ける言葉が思いつかなかった。
「何しに来たの?」
オーレリアが静かに言う。
「そりゃあ、オーレリアが1人でどっか行っちまうから…一人じゃ危ないと思って...」
「・・・・」
オーレリアはまた黙り込んでしまった。
「なぁ、少し散歩しないか?」
オーレリアは何も話さない。
「オーレリアが何か悩んでるのか考えてるのか分かんないけど、1人で抱え込むよりほかの人に話した方が気が楽になるよ。」
「・・・・」
「俺に話したくないなら話さなくていいからね…ヒル姉は怒ってたけどオーレリアのことを否定したくて怒ったわけではないと思うんだ。俺に話したくないのならヒル姉に話してみなよ。そうすればきっと」
「どっかいって…」
「…」
「話したい気分になったらいつでも言ってくれよ。俺はいつでもオーレリアの味方だ。」
そう言って俺は焚火の場所に戻った。
「なぁ。ヒル姉、なんであんなに怒ったんだ?何か事情があることは俺でも分かる。けど...あれじゃオーレリアが可哀そうだ。」
俺はヒル姉の目を見ながら言った。けどヒル姉は俺から目をそらした。
月が空の一番上まで昇ったころ。
俺は毛布を一枚持ってオーレリアのところへ行った。
オーレリアは眠っている。
目の周りが赤くなっていて寒そうに体を丸めていた。
俺はそっと毛布を掛け、その場を離れた。