背が足りない私は山田くんを使った
「ねえ! 先生から貼る様に言われたんだけど、このポスター大きいから私の背じゃ上が届かなくて……」
実は前々から「いいなあ」って思ってたクラスメイトの山田くんに声を掛けたくて……私は少しだけあざとい事をしたのだ。
「先生も酷いよね~“ちんちくりん”の私に命令するなんてさー!相手見てやれってぇの!」
と自虐でおどけて見せたら山田くんは
「きっと先生は……『高橋さんは可愛いからオレみたいなのが手伝う筈だ』って読んでたんだよ」
って予想以上の返しをくれて、私はすっかりはにかんでしまい……
「この人の恋人になりたい」って願う様になった。
幸い、クラスメイトである内にカレとは恋人同士になる事ができて……高2になってからは、カレは文系、私は理系とクラスは別になったけど、お付き合いはずっと続いた。
私が大学院修士課程2年の時に、既に報道局員として働いていたカレと婚約して2年後に結婚した。
お互い忙しかったけど毎日が充実した新婚生活を過ごし……
私が健士を身籠った時にはカレは支局付きで単身赴任だった。
そしてあの日が来てしまった!!
災害特派員として被災地で報道中にカレは二次災害に巻き込まれて亡くなった。
その“瞬間”を私はテレビで見てしまった。
そしてその映像は何度も何度も流された。
もし、私が高1のあの時に声を掛けなかったら……
カレは私のもう一つの夢だった報道記者になろうとは思わなかったかもしれない。
こんな事になってしまって……お義父さんお義母さんにも申し訳が立たないし、何より「カレは私の身代わりで亡くなってしまったのでは」と思えてしまって……身の内に健士が居るのに何ヶ月も泣き暮らしたから……出産に至るまで周りの人達には随分と心配を掛けてしまった。
でも、この腕に健士を抱きしめてからは……私はただ一心に前を見続けた。
今の会社へ就職して7年。
私は実家を“卒業”して健士と二人、アパート暮らしを始めた。
背はずっと“ちんちくりん”のままだけど、すっかり逞しくなった私はわんぱく盛りの健士を軽々と持ち上げ肩車した。
「棚の上を雑巾でキレイに拭いてね! そしたらそこに人生ゲームの箱を置くから」
斯様に……母と子の二人暮らしもすっかり板に付いてきた。
おしまい
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