・・・俺がある日、二人居たら?
・・・俺がある日、二人居たら?
俺はたまにこんな事を考えていた!
なにしろ、仕事が忙しく毎日数時間残業が当たり前!
俺が働いている会社はブラック企業なのだろう。
寝る時間もないぐらい休みもなく、毎日仕事ばかりでしかも?
給料は気持ち程度。
こんな会社、俺は直ぐにでも辞めるつもりだったのだが、俺の前に
先に辞めた奴のせいで! 俺は会社を辞めるタイミングを逃し、毎日
忙しく働かされているんだ!
ここの社長は裏で、”ヤクザと繋がっているらしく”
簡単には辞められない!
もし? 辞めたいと俺が社長に言いに行けば、”ボコボコにされて小指を
詰めるみたいだぞと俺は同じ会社の同僚に聞いた事がある!”
そんなの聞いたら? 辞めたいっなんて言えないよ。
・・・それに1年前に、”俺の前にこの会社で働いていた若い男性社員が
過労死で亡くなったらしい。”
俺はそこまで仲が良かった訳じゃなかったから、実際はどうだったのか
分からないけど。
確かに、”亡くなる数日前は、顔色が悪く随分と瘦せていたように思う。”
誰にも相談する事もなく、彼は亡くなったのかと思うと俺も怖いなって思う
し、出来るだけ早くこの会社を辞めなくてはとも思うんだ!
『おい、タダオ! お前さ、何? ちんたらちんたらしてんだよー!
もっとハキハキ動けよ!』
『・・・あぁ、はい、』
『“テメーオレを本気で怒らしたいのか?”』
『えぇ!?』
『お前の顔だよ! 死人みたいな顔してんぞ!』
『・・・す、すみません、』
『もういい! 席に戻れ!』
『あぁ、はい、』
・・・ココで働いている奴らは、”俺も含めて!”
生きてる気がしないし感覚もない!
毎日毎日、ほとんど強制的に働かされて失敗も許されないし......。
もう俺の前にも後にも、この会社で働いていた奴らの殆どが、
過労死か? 自殺をする者が何人か居るんだよ。
俺も、もう長くないかもしれない!
生きる気力もなく、ただ必死に終わりに見えない仕事を淡々と
片付けるだけなんて......。
俺の生きがいって、なんなんだろうな?
生きてる価値ってあるのか?
ふとそんな事まで考えてしまうんだ!
*
でもある時、”俺が朝、鏡を見ていると? 俺の後にもう一人の俺が居た!”
最初は鏡に俺が映ってるだけだと思っていたのだが、
でも? 俺と同じ動きをしないもう一人の俺!
『・・・お、お前、一体? だ、誰なんだよ!』
『”おまえだよ!”』
『・・・しゃ、喋った!?』
『”おまえも、もう一人自分自身が居たら楽なんじゃないのか?』
『・・・まあ、そうだが、』
『”おれがおまえの協力をしてやるよ!”』
『お前が?』
『あぁ! 二人のおれが居れば、何でもできるぞ!』
『あぁ、そうだな! 頼む、俺に協力してくれ!』
『勿論だ!』
・・・この日から、”もう一人の俺があのブラック企業の会社に行って
くれるようになった!”
俺は自由に好きな時間に起きて、ゴロゴロしてから夜は飲みに出かける。
そんな中、俺が気に入った飲み屋で知り合った女の子と仲良くなって、
俺はその女の子の家に転がり込んで何もせず、好きな事をしていた。
『”あのさ! 仕事とかしてないの?”』
『えぇ!? 仕事、あぁ、まあ、一応! してるよ。』
『でも? いつもゴロゴロしてんじゃん!』
『・・・まあ、俺であって俺じゃない俺が働いてるというか、』
『はぁ!? 何、言っての?』
『まあ、分かんなくていいよ、』
『意味わかんないんだけど?』
『・・・だよな、』
『・・・・・・』
そんな時、テレビで俺の写真がパッと出た!
”俺が殺人犯? あの会社の社長を俺が殺したとニュースに流れたんだ!”
彼女はたまたまお風呂に入っていたから、このニュースは見ていなかった
のだけど? 時間の問題だと思い、俺は彼女の部屋を大事なモノだけ持って
置手紙を残し家を出た。
・・・な、なんで? 俺が社長を殺してんだよ!
しかも? ”もう一人の俺は社長を殺した後、逃げてるみたいだ!”
このままだと俺が捕まってしまう!
”アイツ、何やってんだよ! 人殺しなんて、”
俺はネットカフェや公園のベンチで一日を過ごし、フラフラ警察に
捕まらないように逃げていた!
そんな時、”もう一人の俺が俺の前に現れる!”
『お、お前! 何やってんだよ、なんで社長を殺したんだ!』
『“アイツが悪いんだよ! 俺を扱き使いやがって、”』
『そんなの分かってる話だろう、なんで我慢しないんだよ!』
『もしおれがあの社長を殺してなくても、あの会社で働いてる奴の誰かが
あの社長を殺していたよ。』
『じゃあ、なんで待てなかったんだよ、お前が殺す必要はなかったはずだ!』
『何言ってんだよ、おまえが一番! あの社長を殺したいと思ってたじゃ
ないか!』
『・・・そ、それは、』
『“だから、おれがおまえの変わるに殺してやったんだよ!”』
『・・・・・・』
『“おれはもうこれで消える。”』
『ま、待て! お前が今消えたら? 俺が殺人犯になるじゃないか!』
『そうだよ、おまえが殺したんだ!』
『な、何言ってんだ! 俺は殺してない!』
『“誰が信じんだよ。”』
『か、彼女だ! 彼女なら俺が殺してないって証明してくれるはずだ!』
『無駄だよ! お前の彼女もまたおれと同じもう一人の、』
『えぇ!?』
『“この世は、殆どおれのようなもう一人の人間が居るという事だ!“』
『・・・そ、そんな、う、嘘だよな? 嘘と言ってくれ!』
『“本当の話だよ、じゃあな!”』
『待て! 行くな、俺は人殺しじゃない!』
でも結局! もう一人の俺は消えて、俺が殺人犯となった。
警察に捕まり俺は直ぐに刑務所に入る事になる。
・・・その後、”彼女が俺に会いに来てくれたのだが。”
彼女もまたもう一人の彼女、本物の彼女は既に死にかかっているらしい。
彼女も本物の彼女が死ねば、俺の前に居る彼女も死ぬと言った。
ああ、俺は終身刑で死ぬまで刑務所から出る事はないのだろう。
でも、なんでかな?
”今の方が、俺は生きがいを感じているだ。”
最後まで読んでいただいてありがとうございます。