第1話覚悟
あらすじで書いていたとこに行くにはあと数話必要な様子
涙を流しながら帰路に着く少女がいた。少女はどうやら急いでいるようで早足に家に向かっていた。
少女の名前は鳥羽月華と言い名門安倍家の分家に当たる家柄である。しかし月華は落ちこぼれと呼ばれており親戚からは我が血筋の汚点などとも呼ばれている。また家族からは見放され学校でもそれらが理由でいじめを受けていた。もちろん月華は努力をした。それでも霊力が上がることも特別な術を扱えることもなかった。
そんな月華は今日で16歳になる高校生なのだがある事情により家に急いでいた。しかし月華の足取りは何処か重く、急いでいるのにゆっくりと帰りたいと言う衝動にかられていた。何故なら月華が家に帰ったとしても祝われることは一切ない。6歳の頃から誕生日を両親が祝ってくれた記憶は月華は持ち合わせていない。おそらく忘れられているのだろう。
理由は簡単だ。安倍家の血族は決まりによりその年に16歳になる者はある試練が行われる。
それは安倍家が所有する危険領域と呼ばれる人間の世界ではなく魔が蔓延る場所での3日間でのサバイバルだ。そこには鬼などの魔の上位種などが現れることもあり、当然人死も出る試練であり、棄権も許されている。だが月華はそれが許されなかった。というか両親が取り合わなかった。役立たずならせめて立派に死ねということらしい。
そんなことで月華は自分の誕生日と重なった試練のために急いで帰っているのだ。
それからして月華はすぐに家に着いた。月華の家は武家屋敷と呼ばれるような家で門ですら少し大きく思える家だった。
門を括り抜け少し長い玄関アプローチを歩きながら玄関へと向かう。そこで近づいてくる自身の死ぬかもしれない運命を考えながら進んで行った。
自分の人生を考えようとしたとこで月華は玄関にたどり着いた。決して長くない筈なのに永く感じてしまうのはもうすぐ自身が死ぬかもしれないからだろうか、そう考えながら月華は手を引き手に手をかけた。
「あら、思ったよりも早いじゃない。出来損ないにしては良いほうね。…早く準備なさい遅れて私達に恥を書かせるんじゃありませんよ」
玄関の戸を開けて出くわしたのは月華の実の母だった。月華を見る冷たい眼差しは自身の子供へ向けるような目では無かった。
月華の母は必要以上に関わる気がないようで自身の話が終わるとすぐに遠ざかって行った。
俯きながら話を聞いていた月華は母親が遠ざかって行ったのを確認すると念を押されておいて遅れたら酷い目に会うのは目に見えていたためにすぐに自身の部屋へ向かった。
月華は自身の部屋へ着くと彼女は部屋に用意されている巫女服に着替え始めた。一応言うとこれはコスプレでは無くしっかりとした正装である。
これで3日間のサバイバルをするのだと言われたらふざけていると思うかもしれないがこの巫女服は防御面にや機能性に優れているのである。例えば熊の一撃なら無傷に住んだり体温調節も行ってくれる。これだけ聞けばどれだけ凄いのかわかるだろう。
そういうわけで月華はこの服に着替えるのを戸惑うことはない。それにこれ以外で出向けば巫山戯ているのかと怒られることだろう。
月華は着替え終わるとすぐに他のものの準備を始めた。それは色々で札なりと少しは使える術を最大限に活かすためのものだ。
月華は準備を終えると荷物を持ち自分の部屋の外へ向かった。
「お姉ちゃん…」
部屋を出ると妹がいた。妹の名前は鳥羽陽香と言い、味方の居ない月華をただ1人気にしていた。あの毒親の元で育っても月華を見てくれていたのを嬉しく思う。
妹は何処か悲しそうな顔をして月華を見ていた。その目はうるうると涙を浮かべていた。
「大丈夫だよ。だから泣かないで」
「…行っちゃダメだよ!行ったらお姉ちゃんが…!」
妹も月華が試練に参加する意味を理解していた。昔から自分の変わりに辛い修行を受けて来たのに妹はそれでも月華を恨むことなく逆に優しくしてくれた子だった。そんな陽香だからこそ月華はただ1人心配してくれていると信じられた。
「心配してくれてありがとう。でもね私は行かないといけないの」
「嫌だよ!お姉ちゃんが死んだら私は本当に「だからね」…」
陽香のその先は決して言わせる気がない月華は少し強い口調で自身の言葉を割り込ませた。
「だから約束しよ?」
「約束?」
「うん、私は絶対に生きて陽香の元へ帰る」
「本当に?」
「えぇ、お姉ちゃんが約束守らなかったことないでしょ?だから陽香も泣かないで」
「…分かった。絶対に守ってね!」
月華の言葉に涙を拭き取って陽香は笑顔を見せた。しかしその笑顔は無理やり作ったと分かるように強ばっていた。
月華はそれを見てただ抱き締めた。
「ありがとう陽香」
陽香も姉に答えて抱きしめてくれた。それから数秒、数分がたっただろうか。2人は月華達はやっとお互いを離した。
「それじゃあ行くね」
月華はそう言って陽香から離れて行った。別れを惜しむよううに手を伸ばす陽香に対して月華は決して振り向かず父の元へ向かって行った。
(ごめんね陽香。私は一つだけ嘘をついてるんだよ。私はあなたとことを愛してるけど本当は…)
月華は自分自身の思いを心にしまった。