にゃんこさんの恩返し
1.昔々あるところに・・・
昔々というほどの昔ではありません、そうあなた方のお父さんお母さんがまだ子供だった頃
あるところに一人の若者がおりました。
若者が歩いていると、「うわーん、どうしよう...」どこからか声が聞こえてきました。
「何だろう?」若者は、辺りを見回します。
すると、一匹のにゃんこさんが何かひものようなものにグルグルと巻かれて困っているのを見つけました。
「どうしたの?大丈夫ですか?何か私に出来ることはありますか?」若者がそう尋ねると
「ネズミを追いかけて遊んでいたらなんかこのひもにグルグル巻になってしまったのにゃ。助けて下さいにゃ。」にゃんこさんは若者に助けを求めました。
にゃんこさんに巻きついているひもをよく見ると、ひもの先にネズミのおもちゃが付いていて反対側の先は棒につながっていました。
棒が木の枝に引っ掛かって動かなくなってしまったために、遊びに夢中になっていたにゃんこさんはいつの間にかひもでグルグル巻きになってしまったのでしょう。
《このひも、めちゃくちゃに絡んでるなあ、気が付かないなんてよっぽど夢中で遊んでたんだな!フフッ可愛いじゃん》
若者は「今、助けてあげるから動かずにおとなしくしていてね」そう言って、にゃんこさんに巻き付いていたひもをほどき始めました。
「まだかにゃ?」「も、もう少し待ってね・・・」
「まだかにゃ?」「も、もう少し・・・」
「まだかにゃ?」「・・・」
若者はそんなに器用ではなかったのです。
「まだかにゃ?」「あ、あの・・・」
「なんだにゃ?」「このひも切っても良い?」
「えっ、これは大事なネズミにゃ。遊べなくなったら困るんだにゃ、責任取ってほしいにゃ!」
「そうだ、私の家によく似たひもがあるから後で修理してあげる。それで許してくれないかな?」
「仕方ないにゃ、じゃあ切ってもいいにゃ」
(ジョキ、ジョキ・・・ジョキ、ジョキ)
若者はちょうどかばんに入っていたハサミでひもを切りなんとかグルグル巻きのにゃんこさんを自由の身にしてあげることが出来ました。
「ありがとうございますにゃ、このご恩は忘れないのにゃ」
「ははっ、そんな気にしなくていいんだよ。それより、ネズミのおもちゃのひもを切ってしまったから、家に帰って修理しようか?」
「そうだにゃ、大事なネズミなのにゃ、修理なのにゃ」
若者は仕事が終わって家に帰る途中だったのです。辺りも暗くなり始めていました。
《もう少し遅かったら、にゃんこさんに気づかなかったかも、まだ明るくて良かった》
若者とにゃんこさんは一緒に若者の家へと帰っていきました。
2.若者とにゃんこさんがいました・・・
「このひもなんてどう?」「なんか太すぎるにゃ」
「これは?」「赤いのは嫌いにゃ」
「じゃあ、こっちはどう?」
若者とにゃんこさんはもうかれこれ1時間ほど、どのひもで修理するか決められずにいました。
正確には、決められずにいたのは、にゃんこさんですが
「う~ん、このひも、元のひもとはあんまり似てないにゃ、でもツルツルしていていい感じかもにゃ。しょうがないにゃ、これで許してやるにゃ」
「あ、ありがとう、長さはこのくらいで良いかな?」
「一緒に遊んでみれば、ちょうどいい長さがわかるのにゃ」
「そうだね、じゃあ、ちょっと長めにしておいて、少しずつ短くしていこう」
・・・・・
「はあ、はあ・・・(仔にゃんこの体力恐るべし)」
「・・・これくらいにしといてやるのにゃ」パタッ(あっ寝た、電池が切れたみたいだ)
若者は疲れてはいましたが、にゃんこさんが目を覚ましたらきっとお腹をすかせているだろうと思ったので、ご飯の用意を始めました。もちろん若者もお腹がすいていましたから・・・
若者はご飯を炊き、にゃんこさんのためにカツオ節とおしょう油で猫まんまを作りました。
《朝、冷凍室から冷蔵庫に移して解凍しておいたお刺身も2・3切れ分けてあげよう》
若者は優しい心の持ち主でしたので、自分の夕飯のおかずも独り占めする気はありませんでした。
明日は若者のお仕事はお休みでした、毎週金曜日はちょっと豪華に贅沢デー、お刺身は贅沢デーにしか食べられないご馳走でした。
「う~ん、(クンクン)なんだかいいにおいがするにゃ」
にゃんこさんがごちそうのにおいで目を覚ましたようです。
「やあ、にゃんこさん起きたのかい?そろそろご飯にしないか?」
「お腹ペコペコだにゃ、あ、今日はお刺身だにゃんね。やったー!お刺身だーい好きにゃ。わさびはつけにゃいでね。おしょう油も無しで頼むんだにゃ、塩分は体に良くないにゃ。」
「そ、そうだね。にゃんこさんには猫まんま・」「大丈夫だにゃ。お刺身だけで十分だにゃ。猫まんまは君が食べていいにゃんよ!君は僕より体も大きいんだしにゃ」
「そ、そうだね。ありがとう。じゃあ猫まんま、じゃなくておかかご飯は私がいただくよ。」
結局、10切れあったスペシャルご褒美デーのお刺身はにゃんこさんが7切れ、若者は3切れ食べました。
「美味しかったにゃ。ごちそうさまでしたにゃ!」「どういたしまして。今日はもう遅いからこのまま家に泊っていきませんか?」
「ありがとうだにゃ、そうさせてもらうにゃ。そうと決まればもうちょっとネズミで遊ぶにゃ」
「よし、(今度は負けないぞ)そーれ!」
3.若者は会社へ仕事しに(行こうかと思ったけど今日はお休みだった)
にゃんこさんが朝5時に目を覚ました時、若者はまだぐっすり眠っていました。
「朝ご飯はまだかにゃ?」にゃんこは若者に声を掛けましたが、夜遅くまでにゃんこさんと遊んでいた若者はとても疲れていたのか起きる気配はありません。
「しょうがないにゃ、ご飯がにゃいならもう少し寝るのにゃ」
にゃんこさんは若者が用意してくれた段ボールの箱に寝ていましたが、とっても上等なフカフカの小さな毛布を若者が段ボール箱に敷いてくれていたのでぐっすり眠ることが出来ました。
「う~ん、やっぱりお腹すいたにゃ、朝ご飯まだかにゃ?起きてほしいにゃ」
にゃんこさんが再び目を覚ましたのは朝6時半でした。
にゃんこさんは若者に声を掛けましたが、やはり起きる気配はありません。
一人暮らしの若者はお休みの土曜日にはいつもお昼まで寝ていましたから、まだ起きるには早い時間なのです。
にゃんこさんは昨日の夕飯を思い出しました。
「お刺身美味しかったにゃ。もうないのかにゃ?そういえばこっちの部屋から持ってきてた気がするにゃ。」
にゃんこさんはキッチンへのドアをチョイチョイとさわってみました。あれっ、なんだか少し動いた?どうやらきちんとしまっていなかったようです。にゃんこさんはもう一度さわってみます。やっぱりガタガタと動いています。
(べしっ!)にゃんこさんはドアに向かって思い切り猫パンチをかましました。(ガタッ!)
やりました。にゃんこさんはドアに見事勝利しました。もう少しでにゃんこさんの頭が通るくらいの空間が出来ていました。あとは押せば良いだけ。勝者であるにゃんこさんは堂々とキッチンへと進むのでした。
「ここからお刺身のにおいがするのにゃ。でも見あたらないにゃ、もうないのかな?」若者が洗って乾かしていたお刺身のトレイをクンクンと嗅いでにゃんこさんは言いました。
「仕方にゃい。他には何かないかにゃ?・・・にゃんだかいいにおいがするのにゃ。」
にゃんこさんはテーブルに飛び乗りました。クンクン・・・
「これだにゃ・・開かにゃい、そうだ!下に落としたら開くかもしれにゃい。」
にゃんこさんはカツオ節の入った袋をテーブルの下に落としました。すると若者が口を止めていた洗濯ばさみが外れ中のカツオ節がこぼれてしまいました。
「やったにゃ!開いたのにゃ。」モグモグ「昨日のお刺身には負けるけどにゃかにゃかいけるのにゃ・・・」モグモグ
ひとしきりカツオ節を食べ、お腹も落ち着いたにゃんこさんは先ほどの部屋に戻り、今度は段ボールではなく若者の枕元に丸くなりました。
「朝ご飯のあとはもうひと眠りなのにゃ」
若者が目を覚ましたのは、午前9時、いつもお休みの日は12時過ぎまで寝ている若者にしては早起きです。
「なんだかいいにおいがするなあ、昨日の猫まんま、じゃないおかかご飯みたいな・・」
クンクン、においのもとはどうやらにゃんこさんのようです。
《寝るときは確かに段ボールで寝てたのに、夜やっぱり淋しくなって近くに来たのかな?フフッ
可愛いじゃん、ぐっすり眠ってるみたいだから今のうちに朝ご飯作ってあげようかな》
「あれっ、ドア開けっ放しだったっけ?おかしいなあ、閉めたつもりだったんだけどな、えーっ、なんだこれは・・・」
キッチンの惨状に若者は思わず声をあげてしまいました。
食い散らかされたカツオ節、乾かして重ねておいたトレイも散乱しています。
「油断してた!カツオ節、テーブルに出しっぱなしだった。」若者はキッチンの惨状を片付けながらこれからはきちんとしまうぞと心に決めました。
4.にゃんこさんは家でお昼寝中
「にゃんこさん、にゃんこさんにお話があります。」
若者は、朝昼兼用の食事の後でにゃんこさんにそう切り出しました。
ちなみに、ご飯は朝10時開店の近所のスーパーに買い出しに行き、新しいカツオ節と鶏むね肉を買って来たので、若者はおかかご飯、にゃんこさんには鶏むね肉を小さく切ってゆでたものを用意しました。にゃんこさんが塩分は良くないと言っていたのを思い出したからです。
ゆでたお肉はちょっと冷ましてほぐし、味は付けずにゆで汁を少しかけて食べやすく器に盛り付けました。
ご飯を食べ終わったにゃんこさんはペロペロと身だしなみを整えているところに、突然若者が真面目な顔でにゃんこさんに話しかけてきたので、何だろうと首を傾げました。
《うっ!小首を傾げたにゃんこさん、可愛すぎる》
「お話ってなんにゃ?ご飯を食べたら眠くなってきたのにゃ。お話はお昼寝の後にするのにゃ。」
「そうですね。じゃあ、私はホームセンターで買うものがあるので、にゃんこさんはお昼寝してください。」
若者はいろいろとそろえるものがあったので買い物に出かけました。
にゃんこさんは若者が用意してくれた段ボールのベッドに入って丸くなり、お昼寝することにしました。
買い物から帰った若者は買ってきた荷物を使いやすいように部屋のあちこちに置きました。
そうしているうちに目を覚ましたにゃんこさんは
「おかえりにゃ、買い物は終わったのかにゃ。」
「はい、いろいろ買ってきました。ほら、これはにゃんこさん用のトイレです。」
「そうだ、トイレに行きたいと思ってたにゃ、気が利くのにゃ。」
「お昼寝も終わったようなので、お話してもいいですか?」「いいにゃよ。」
「お話というか、お願いがあります。」「お願い・・助けてもらったのにゃ。お願いくらい聞くのにゃ!」
「しばらくこの家にいてもらえますか?」「そーだにゃ~、いてあげてもいいにゃけど・・はっ、そういえば助けてもらったお礼をしていなかったにゃ。あっ、でもネズミはあげられないのにゃ。大事なのにゃ。ネズミ以外で何かお礼をするにゃ。」
「お礼なんて良いんですよ、でも、そうだな、何がいいか直ぐには出てこないので思いつくまでこの家にいてください。」「わかったなのにゃ、じゃあお礼が決まるまでこの家に住むことにするのにゃ。」にゃんこさんはしばらくという約束で若者の家に住むことにしました。
5.(今度こそ)若者は会社へ仕事しに
「行ってきます!」月曜日の朝、若者は会社へ仕事をしに出かけました。
「じゃあ、もうひと眠りするかな。朝からネズミで遊んで疲れたのにゃ。」
にゃんこさんは若者が出かけると、土曜日に若者が組み立ててくれたキャットタワーの上でひと眠りすることにしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「にゃんこさん!にゃんこさん!ご飯ができましたよ。」
「はにゃっ、もうそんにゃ時間かにゃ。今日のメニューはにゃにかにゃ~」
「今日はお魚の切り身を茹でてほぐしカツオ節を和えてみました。ゆで汁も冷ましてスープにしましたよ。」
「うまそうにゃ、いただきますなのにゃ。」
にゃんこさんは美味しそうに食べ始めます。若者はその姿をニコニコと眺めながらおかかご飯を食べました。
「ごちそうさまなのにゃ、ちょっと遊んでから寝ようなのにゃ。」「そうですね、洗い物が終わったら一緒に遊びましょう。」
「行ってきます!」火曜日の朝も、若者は会社へ仕事をしに出かけました。
「じゃあ、もうひと眠りするかな。朝からネズミで遊んで疲れたのにゃ。」
にゃんこさんは若者が出かけると、キャットタワーの上でひと眠りします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「にゃんこさん!にゃんこさん!ご飯ができましたよ。」
「はにゃっ、もうそんにゃ時間かにゃ。今日のメニューはにゃにかにゃ~」
「今日は鶏むね肉を茹でました。ゆで汁のスープもありますよ。」
「うまそうにゃ、いただきますなのにゃ。」
にゃんこさんは美味しそうに食べ始めます。若者はその姿をニコニコと眺めながらおかかご飯を食べました。
「ごちそうさまなのにゃ、ちょっと遊んでから寝ようなのにゃ。」「そうですね、洗い物が終わったら一緒に遊びましょう。」
「行ってきます!」水曜日の朝も、若者は会社へ仕事をしに出かけました。
「じゃあ、もうひと眠りするかな。今日も朝からネズミで遊んで疲れたのにゃ。」
にゃんこさんは若者が出かけると、キャットタワーの上でひと眠りします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「にゃんこさん!にゃんこさん!ご飯ができましたよ。」
「はにゃっ、もうそんにゃ時間かにゃ。今日のメニューはにゃにかにゃ~」
「お魚です。いつも茹でるばかりなので今日は焼き魚にしてみました。スープは昨日の鶏肉のゆで汁ですよ。」
「うまそうにゃ、いただきますなのにゃ。」
にゃんこさんは美味しそうに食べ始めます。若者はその姿をニコニコと眺めながらおかかご飯を食べました。
「ごちそうさまなのにゃ、ちょっと遊んでから寝ようなのにゃ。」「そうですね、洗い物が終わったら一緒に遊びましょう。」
毎日同じように若者は仕事に出かけにゃんこさんはキャットタワーの上でお昼寝をします。ご飯は木曜日は鶏むね肉でした。
そして金曜日の朝、いつものように若者は仕事に出かける準備を終えにゃんこさんに言いました。
「行ってきます!今日は金曜日だし給料日なので、ちょっといいご飯にしましょうか?にゃんこさんは食べたいものがありますか?」
「そうだにゃ、やっぱりお刺身だにゃ・・・それと、おかかご飯が好きにゃのはいいけど、毎日おかかご飯だけでは良くにゃいのにゃ、お肉もおさかにゃも食べたほうがいいと思うにゃ。」
「そうですね。にゃんこさんがそう言うのならお肉もお魚も野菜も食べることにしますね。」
《キャットタワーや猫グッズを買ったので金欠だったからおかかご飯しか食べられなかったことは内緒にしとこう、自分のせいだと思って気にしちゃうかもしれないし。》
「それがいいのにゃ。偏食は良くにゃいのにゃ。」
「じゃあ行って来ますね。帰りにお刺身買ってくるので楽しみにして待っててくださいね。」
若者が仕事に出かけたので、にゃんこさんはいつものようにお昼寝をしました。
6.そうして若者とにゃんこは幸せに暮らしました。
「にゃんこさん!にゃんこさん!ご飯ができましたよ。」
「はにゃっ、もうそんにゃ時間かにゃ。今日のメニューはお刺身だにゃ~!」
「ははっ、そうですね今日はお刺身です。たくさん買ってきましたからね。」
「うまそうにゃ、いただきますなのにゃ。」
にゃんこさんは美味しそうに食べ始めます。若者はその姿をニコニコと眺めながら一緒にお刺身をいただきます。そして、野菜サラダとかぼちゃの煮物も食べました。
「ごちそうさまなのにゃ、やっぱりお刺身は美味しいのにゃ。また、ちょっと遊んでから寝ようなのにゃ。」「そうですね、洗い物は明日の朝するので一緒に遊びましょう。でも遊ぶ前に、ちょっとだけお話をしましょう。」
「どうしたのにゃ?」
「にゃんこさんが私にくれるお礼が決まりました。」
「やっと決まったにゃか、ネズミはだめにゃよ。」
「お礼は・・・」「お礼は・・・?」
「にゃんこさん、ずっと一緒にいたいです。」「はにゃ?」
「私の家族になってくれませんか?」
「・・・しょうがないにゃ、約束だから・・・お礼に家族になってあげるにゃ。」
「やったー!嬉しいです。」「・・・嬉しいにゃ。」
「これからもよろしくお願いします。それじゃあ、遊びましょう!」「にゃー!」
そして、若者とにゃんこさんはいつまでも仲良く暮らしましたとさ おしまい