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買い出し

「そしたら、このリストの物とあとこれを1ダース分、ボッサムで今建設中の小街区にいるタジットという鍛冶職人まで届けてもらえるか?」

「はい、喜んで!で、旦那、納期はいつぐらいがよろしいでしょうか?」

「いつでも、できるだけ早い方が助かるかな、これが前金、残額はタジットから直接受け取ってほしい」

「かしこまりました。毎度あり~。」


「ふぅ~、これで、半分くらいまわれた感じですか~」

ナルジャが引いている馬車に積んでいる荷物を整理しながら、番をしていたリゼッタが荷台から顔出して、聞いてきた。

「まぁ、そんな感じだな。この後この書状を届けて、あと回れてももう2~3件ってところだな。」

「さすが王都って感じです~、もう少しお店を見て回りたかったです。」

ナルジャの背中をたたき、出発する旨を伝えながら、御者席に飛び乗り、次の目的地である職人ギルドの建物を目指す。


今朝早くにキブリー、ヤー、アッザの三人は貴族の馬車に連行されてしまい、俺とリゼッタは二人で宿に取り残されてしまった。といっても、俺たちにも資材の買い付けという重大な使命があり、休んでいる暇はない。朝早くから忙しく働いていた穴兎亭のスタッフを捕まえて、事前に調べていたお店の場所やおすすめの店など聞き込みをし、場所を確認して、商業地区に着いたときにはもうお昼を若干過ぎていた。


本来なら宿に泊まっている冒険者パーティーから安い店とか聞き込みをして、親睦を深めたいところだが、今回は建築資材といった、基本的には冒険者に無縁のものばかりで、聞いても仕方がない。それに昨晩の一件もあるから、なおさら聞きづらい。まぁ、もともとボッサムを出立する前にタジットや小街区を建築している人たちに必要なものを王都のどこで手に入れたら良いか相談していたので、大体の目星はつけていたから問題はないが。


ボッサムで俺たちの小街区へタジットを招致した際に、工房の移設についてタジット側から拡張したいと提案が有った。話の中でボッサムの店では入手困難なものが話題にあがった際に、

「王都行くでしょ~、じゃぁ~、これ~。よろで~。」

事前に用意していたのだろうか、店の名前と必要なもののリストを渡してきたタジット、まぁ、遠慮なくいろいろ書いてくれていた。ただこれからクラウンメンバーの生存率を上げるにも装備の充実は必要不可欠で、それを支えてくれる工房のためなら仕方がない。


「そしたら、こっちはこんなところかな?」

そう言いながらタジットと俺たちの会話を横で聞いていた手足が長い長身の男がタジットと同様にいろいろ書きこんだ紙をこちらに差し出してきた。

「まぁ、無理して全部とは言わないよ。ただしるしがついているのは必ずだね。ないとお宅らの要望には応えられないかな。これで輸送費が浮くから、その分は少し差っ引いてあげるよ」

「うっ、もう少し抑えられないか。タクト兄さん」

「いや~、無理だね。キブ坊たちの要望をかなえるっていうなら、これらは絶対だね~」

タクトと呼ばれた大工はもともとキブリーたちの孤児院の前身となった施設の出身で、15才になったと同時に職人ギルドの門をたたいたらしい。もちろんキブリーやラピスのことを幼少期から知っている。

「それにしても、まさかキブ坊が大きくなってクラウンを立ち上げるような冒険者になるとはな~」

「ありがとうございます。そんなこと言ったら、タクト兄さんこそ、今やボッサムの職人ギルドの主要メンバーの一人じゃないですか。ちなみにもうキブ坊はやめませんか」

「親方が腰やっちまったから、俺は実力よりも仕方なくって感じさ。いや、キブ坊はキブ坊だ」

キブリーを子ども扱いするタクトと呼ばれた大工は、俺たちの夢いっぱいの街づくりを実際の形にできる凄腕の職人であるのは間違いない。というのもボッサムのつぎはぎの街をうまく形成できているのはこのタクトがいたからだともっぱらの噂で、実際キブリーもクラウン立ち上げで小街区を建設するのに真っ先に話に行ったくらいだ。


そんな人に依頼するのに高額な出費を予測していたが、キブリーたちとのつながりもあり、建築に関する人件費はだいぶ安くしてもらっている。ただ建築資材の確保に関しては話が別で、今ボッサムに残っている二つのパーティーが木材と石材の確保のため職人ギルドからのクエストを受注し、報酬の代わりに小街区建設のための資材を融通してくれる話になっている。ただそれ以外にも必要な材料があるらしく、王都で買付を頼まれてしまった。


「今日の買い付けでタジットからの要望はだいたい叶えられたかな」

「で、ついでにこの書状を届けてほしいというわけですね」

「ああ、そうだな。タジットは職人ギルド本部に俺たちのクラウン専属鍛冶職人になるっていう連絡みたいだ。あとタクトさんからも書状を預かっていて、どうも内容的にはもっと人を派遣してほしい的なことが書かれているらしい。」

「そうなんですか、ボッサムの職人ギルドの大工さんは人手不足なのでしょうか」

「どうなんだろう、ただボッサムはいまだ拡張している都市だからな、人手はいくらあっても足りないんじゃないかな。」

馬車に揺られながらだいぶ軽くなったクラウンの財布を大事にしまう。


「あ~あ、皆さん、今頃豪華なご飯を食べているんでしょうか。あ、ナルジャちゃんストップですぅ!」

「おっと、そうかもな~、でも、高貴な方々との食事だと堅苦しくて、味も分らないんじゃないか?」

馬車が走る大通りのわき道から香しい香りがする。一目散にリゼッタは出店へ走りだす。いくつもある出店の中から目移りせずに選ぶ当たり、食事に全神経を集中しているようだ。

「そういったお話はキブリーさんにお任せするです。私は食事に集中します。」

そういいながら、わき道から戻ってきたリゼッタは出店で焼き串を3本買っていた。

「ははは、でもリゼッタ姫には貴族の面倒くさい口説きがあるかもしれないぞ、それよりは手に持っているものの方がおいしかったりするんじゃないかな。」

俺は戻ってきたリゼッタとナルジャに荷物の番をお願いしつつ、反対側にあった出店の蒸しパンを買いに向かった。

「確かにそれはそうかもしれないです。」そう言いながら、1本をナルジャにあげ、リゼッタは串に付いた肉団子をさっそくほお張っている。


穴兎亭を出発してからというもの美味しそうな出店があれば、止まって、買って、食べてを繰り返しており、その結果遅くなっているような気もするが、俺たちは昼食も取らずに働いているのだから、まぁ許されるだろう。

「キブリーさんたちは今、どの貴族の方と会っているんでしょうか。」

蒸しパンを買って戻ってきた俺にリゼッタは自分の財布に視線を落としながら聞いてきた。

「確か今日は3つの貴族と会うって話で、確か最初はトラップ家だったか。それもお昼手前までで、お昼から夕方の長時間はこの間仕切っていたリヒター家、そして終わりにマックウィーン家だったと思ったな。ただマックウィーン家は持ち時間が1時間程度しかないような話だった気がするけどな」

そういいながら俺はリゼッタの両手を凝視する。さっきまであった串が無くなっている。確か3本持っていたはず、一本を食べていて、もう一本をナルジャにあげていた。残り一本は・・・

「姫・・・あの美味しそうな肉串は?」

「はい、とってもおいしかったです。」

「シャ~~~♪」

「俺の分って、、、」

「何も言わずに別の物を買いに行かれたので、いらないかと思って、私とナルジャちゃんで仲良く分けました。」

「シャ~~~~♬」


「なるほど、OK、そういう解釈か、あ~了解。」

それにしても本当によく食べるな、よくあれだけ食べても太らないものだ。そう、リゼッタ姫はスレンダーな体型の方だと思う。それにアッザがあまりにも目を引く見た目をしているから忘れがちになるが、男性陣が姫と担ぐだけの容姿をしている。ほかの冒険者パーティーの男連中からも告白されたりもしていた。それに一度よく見ると出会った当初に比べて若干肉付きが良く・・・

「ジーーーーー」

じとーとした目線を俺に向けてくる。

「あの~、なにか?」

「いえ、何も。声が上ずってますけど、何を考えてましたか」

「いや、えっ、ただ俺も食べたかったなぁ~って」

「本当にそれだけですか?」

疑惑の目を向けてくるリゼッタを横目に、ナルジャが蒸しパンを催促してきた。

「ああ、わかっているよ。ほら、目的地まで頑張って引いてくれ。」

ナルジャの顔の目の前に来るように蒸しパン2個を投げると、器用に口でキャッチし、むしゃむしゃと租借しながら馬車を引き始めた

俺も蒸しパンを口にほお張る。もっちりとした生地の中に甘辛い肉の餡が入っていて、餡の中に軟骨だろうかコリっと触感があって、かなりおいしい。


「じとーーーーー」

「あの~、姫、いかがいたしましたか。」

「いえ、何も、ただ見ているだけです。」

「そんなに凝視されると食べづらいんだが・・・」

「そうですか?ただ私の分はないのかな~と思っているだけです。」

「残念ながら、俺とナルジャだけの分でして・・・」

「そうですか」「アッザさんにデリックさんに体を嘗め回されるように視姦されたって言おう(ぼそっ)」

「なっ、えん罪だ!」

「本当ですか?まぁ、でもアッザさんはどちらの言葉を信じるかです。」

そう言って胸をぐっと押し上げるように寄せるのをまじまじと見てしまい、しまったと思って瞬間リゼッタと目が合った。

「・・・・はぁ~、一つ食べるか?」

「袋の中にはあといくつあるんですか?」

「・・・・4つ」

「ナルジャちゃん~、二人で仲良く2こづつです!」

「シャ~~~~」

マジか。本当によく食べるわ

「デリックさん、女性は異性の視線に敏感なものですよ。」

「勉強になりました」

「素直でよろしいです♪」


王都の商業地区はエリアがまとまっているとは言え、それ自体が広く、訪れる店や買うもの、また購入する際の金額の目安等が決まっているとはいえ、かなりの時間がかかってしまっていた。職人ギルドへ書状を渡したら、資材関係の店に急がないと。タクトさんのリストにある店は職人ギルド周辺にあるようで、できれば今日中にリストにある商品の発注を済ませておきたい。


「何とも・・・」

「取っても変わった色の建物です」

奇抜の一言に尽きる建物はモザイク柄になるようカラフルなタイルがはめ込まれ、直線的なフォルムというよりは丸みを帯びたラインが目立つ。王城も丸かったし、王都の人たちは丸いフォルムが好きなのか。


「すみません、ボッサムから来たものですが、こちらの書状を届けに来ました。」

馬車にナルジャとリゼッタを残し、建物の中に入った俺は受付にいた人に声をかけた。外観とは違って、中はいたってシンプルで必要最低限のものが揃っている、言ってしまえばありきたりな事務所のような場所だった。


「は~い、中身確認しますね~。お~~、なるほど~。こっちの書状はもらっておくね~。」

「こっちの?」

「そう、でこっちは職人ギルドの鍛冶屋部門宛だから、ここじゃぁ受け取らないんだ。建物が別だから、そっちに持っていってほしいんだ~」

「えっ、だってここは職人ギルドの本館では?そちらで渡してもらうことはできないんですか。」

「そう、本館だよ~、でもねこの本館は建築部門と陶工部門とかがあるんだけど、鍛冶屋部門は別なんだよ。で、そこの人たちとうちらはライバル的な争いしているからさ、書状とか持っていっても受け取ってもらえないんだ。」

「そんな、だって、同じ職人ギルドなのに?」

「そう、同じ職人ギルドだけどさ、3年ごとに開かれる技能作品祭で毎回バチバチしているから。昔は仲良かったみたいなんだけどね~、ほら職人同士、俺たちの方がすごい!って言いたくて、競いあってたら、若干いがみ合っちゃって、いくつかの部門が出て行っちゃった感じなんだよね~。」

「はぁ~、良くわかないけど、面倒くさいことになっていますね。仕方ない、それで鍛冶屋部門はどこにあるんですか」

「話を理解してくれて、助かるよ~、王都の地図はっと、ほい、この本館はここで、鍛冶屋部門はここだよ」

「えっ、嘘だろ、さっきまでいたところの近くか」

「あらら、それは残念、逆戻りだね~。そういうことでよろしく!」

そういうと受付の人は別の人の対応に向かってしまった。面倒くさいことになったと思いつつ建物を後にして馬車のある方へ向かうと

「デリックさ・・?どうしたんですか、しょんぼりしているみたいですけど」

「いや、実は・・・」


受付での話を聞いたリゼッタは馬車の荷台の方で未だにプンすかしている。

「なんですか、王都の人たちは不親切です。」

「まぁ~、仕方がないと思うしかないさ。さっきの店の人たちも言っていたけど、技能作品祭は重要みたいだし、その関係のおかげで恩恵を受けている部分もあるって話なんだから。」

「そっちもそうですけど、さっきのお店の方もです。」

「ははは、まぁ商売だからな」


職人ギルドの本館を出た後、簡単にリゼッタに経緯を説明し、時間がないから急いでタクトさんの依頼の物を買いに指定されたお店に向かった。買い付けのリストを見ながら商品を物色している俺たちに店主が声をかけてきて、探している商品のリストを見せると、記載してある字を見て、俺たちの依頼者がボッサムのタクトさんではないかと聞いてきた。


店主に簡単に事情を説明したら、タクトさんをよく知っているようで、一つ一つ見て回ると時間がかかるからと親切にも他の2店舗に使いを出してくれた。店主曰くどの店もタクトさんを知っているとのことで、タクトさんからの依頼であれば、ぼったくることはしないし、記載の金額か、それ以下になるとのことだった。


渡りに船とはこのことで、ここで使いがリストにある商品を記載のある金額で最短で納品してくれるよう取り付けて、戻ってきてくれるのを待っていればよいことになり、時間の短縮ができて大助かりだった。待っている間店主と俺は、さっきの職人ギルドの本部受け付けでの出来事を話し、リゼッタは店主から教えてもらった近くにある食べ物屋を観に行ってくると言って去ってしまった。ナルジャはちょっと一休みしており、馬車の荷物はお店の人が見張り役を担ってくれている。


「いや~、本当に助かりました。この後残りの2店舗に行ってたら、今日中には書状を届けに行くことが出来ないところでした。」

「ははは、いいよ、気にしないで、こっちもお客のニーズに応えるのは商売の基本だからね。」

「職人ギルドの受付の人も見習ってほしいですよ。」

「いや~、まぁ~、それは無理だと思うよ。特に建築部門と鍛冶屋部門は仲が悪いからね。」

「そんなに技能作品祭って、重要なんですか?」

「そりゃ、もちろん。技能作品祭で賞に選ばれれば名誉と褒賞があるからね、いろんなギルドは躍起になっているもんだよ。まぁ、でもそれよりも別件の方が尾を引いているんじゃないかな。」


「別件っていうと?」

「本部のあのすごい建物見ただろ?」

「(すごい?)ああとても先鋭的な建物って感じで・・・」

「そう!あの建物のデザインと構造、また建物内のシンプルで機能美を追求した感じのアンバランスさ、過去の作品展で賞を取った立派な建物さ、実はあそこに使われているタイルもうちの商品なんだけどね・・・」

「そうなんですか、でもそれが何の問題に?」

「いやね、鍛冶屋の連中は頭が頑固でさ、あんな建物は職人らしくないやら、俺たちは知らされていないままリフォームしたとか難癖付けてきて、さらにそれでその年の最優秀賞も取ったもんだから嫉妬に狂って出て行っちゃったのが真実ってとこさ」

「うわ~、そうなんですか、でもほかの部門は?」

「いやね、鍛冶屋たちが出るって言った際にそれなら俺たちももっと広い場所が欲しいからっていって機巧部門とかが出て行ってしまったという流れさ。ほんとあの頑固おやじたちのせいで、若干の内部分裂が起きた感じで迷惑なもんだよ。」

「へぇ~」

「ただね、逆に良かった点があってさ、それまでなぁなぁ的な作品を出し合ってたのが、切磋琢磨するようになったからいろんなものの質の向上にはつながっているよ。」


「なるほど、それで・・」

「御屋形様~」

「おっ、戻ってきたな。」

そういうと使いに出ていた2組の青年たちが戻ってきた。何枚かの紙を店主に渡している。どうやら俺たちの依頼の分とは別のものもあったようだ。

「はい、これがお客様の分だね、うちで前金を一括で預かって、他の店に分配しておくよ。なに、心配しなさんな、それをがめるようなことはしないさ、商売は信頼が重要だからね。で、ほれ、これ受領証明書ね。」

そういうと確かにこの店の店主が受け取って、適切に各店舗に支払う旨、約定を破ったら全部保証する旨記載があった。


「ん?これって、」

「ああ、なぁあにちょっとばかり手数料を頂ければってことでね。なに大丈夫、ほら多店舗のレシートを見てごらん、リストにあった額よりも安くなっているだろ、今の相場でそんなしなかったはずだったから、使いに安くした額で、買付させたのさ。お客様らが直接言ってたら高くかわされてただろう。ただ値引き分をちょっともらっているだけだよ」

「ああ、なるほど」

「大丈夫、win-winだよ。」

やはり商売人はうまいな。色々な情報を熟知しているから、タクトさん最初にこの店に行くように言っていた理由が分かった気がする。


「はい」

使いに行っていた4人の青年たちが両手を差し出しきた。

「?これは・・・もしや・・・」

4人はキラキラした目で見つめてきている。

店主の方を見るとにこやかに訴えてきている。「お駄賃を出してあげて」と

「いや~、親切な主人だと思っていたが、やはり商売人、ただの親切だけではなかったよ」

使いの人は安月給だろうからそういったお駄賃でやりくりしているんだろうな。それに乗じて自分の仕事も持っていかせるあたり、なかなかのくわせものだった。


「本当です。私のお菓子を取られました。」

リゼッタの方も馬車に直接戻った時に馬車の見張り番をしていた子にお駄賃を求められていた。でも手持ちもつきかけていたリゼッタは代わりに渡せるものと言えば買ってきた美味しそうなお菓子の袋だけで

「かなり並んで待ってたのに~グスン」

3つ買ったうち一つを泣く泣く渡すことになった。見張り番の子も知っているぐらい有名なお菓子なんだろう、すごく喜んでいた。お駄賃よりもよかったのかもしれない。

「まぁ、良いじゃないか、代わりに俺の分半分あげるから」

リゼッタにはあらかじめ俺とナルジャの分も買ってきてもらうように言っていたので、残りの一つは俺のなのだが、まぁ仕方ない、リゼッタのためだ。


「?何を言っているのですか?渡したのはデリックさんの分ですよ。」

「そしたら、使いの4人に渡したお駄賃も折半しようか。」

「そんなこと言うなんて、男としての株を下げますよ。」

「大丈夫、リゼッタの株が上がったら、アッザの恐ろしい嫉妬が待っているだけだ。」

「ぐすん、世の中世知辛いです。」

「あぁまったくだ、いい勉強になったよ。」

さすがにお使いの子たちに払う駄賃をクラウンの財布から出すのは忍びなく思い、自分の財布から出していた。うまい話に乗った完全に俺の落ち度だしな、仕方ない。ただもうこれ以上の出費はさすがに俺の財布もきつい。


そうこうしているうちにタジットから買い物を済ませた店を通り過ぎ、目的の鍛冶屋ギルドについたころにはもう夕暮れ時になっていた。今日はこれを渡して、宿に帰るしかないな。とぼや~と思いながら受付の人に書状を渡すと

「へぇ~防具専のタジットがクラウンの所属にねぇ~、本当にいいの?武器専の職人を紹介するよ?」

「大丈夫です、お気持ちだけ受け取ります。」

「ああ、そう、ふぅ~ん、まぁ、いっか、これから貴族の査定とかだもんね。それじゃ、これはうちの方で情報まわしとくよ。」

「ははは、ありがとうございます。」

「なんか疲れているね?大丈夫?」

「いえ、ただ・・・」


余計なところは省き、事の顛末を受付の人に伝えると隣の席に座っていた職人らしき人が

「なんだ~それ、相変わらず建築部門のやつらはお役所仕事みたいに、頭かったいな~。」

「本当です。うちに持ってきてくれたら、建築部門に持っていくことぐらいしてあげたのに」

「えっ、どういうことですか?」

「何か?不思議か?」

「いや、なんか建物も別なんで、仲が悪いのかと・・・」

「ああ?何で、俺たちが別の建物に追いやられていると思う?」

「えっと、それはあの改装された建物が嫌でとか?」

「いやいや、ちがうちがう、それはあいつらが流しているデマ。本当はさ、技能作品祭に出す建物を最初に一から建てるっていうんでさ、頑張れって思ってたわけよ。そしたら、再生技術を見せたいっていうから古くなった本部を真新しくするって。そいつはいいやって他の部門の連中も含めて思ってたわけ、そんでがんばれって、改修工事の間は本部から出て、好きにやってくれってよ、それぞれ核施設機能含め一時移転したのよ。」


「はい」


「たった建物は、まぁ、センスはよくわからんが、すごい立派でよ。中はかなりシンプルで良かったよ。そんで恙なく祭りも終わり、さらに王様から直々に賞をもらって万々歳となると思いきやさ、あいつら俺たちが戻る場所をさらっと無くしてやがったのさ。」


「要するに自分のところの意見を聞いてくれる、今一緒にいる部門のやつらと結託して、話を聞かない俺たちを排除しやがったのよ。これが真実ってやつさ」

「・・・・」

「でもよ、俺たちだって、いつまでもそんなことでネチネチしてなんかなくてよ、もう終わったことだしな。こっちに移動してから工房も何かと便利だしよ。ただ向こうさんはこっちのその態度が気に入らないのかわからないけど、未だに根に持っているって言い張っていやがって」

「本当にいい迷惑です。だから、こっちはやましいことはないので堂々と向こうに行きますよ。向こうが来られないのはこっちにやましい気持ちがあるからです。」

「うんうん」

うわ~、すっごいもつれてんな~

「まっ、とにかく災難だったな。それとタジットにも精進するように伝えてくれ!」

「あ、はい、ありがとうございます。」


宿への帰り道、リゼッタと鍛冶屋部門側の話をしたら、「なんなんですか、それは」と無表情のプンプンだった。なんか今日は本当に疲れたな、明日の買い出しも頑張らないと・・・

宿の夕飯の時間になってもまだ戻ってこない3人を待たずに、俺とリゼッタは食事等を済ませておいた。いやー、今晩のご飯もかなりうまかったな~と思い返しながらホールのテーブル席でリゼッタと待っているとなぜかぞくっとする風と共に生きる屍のような状態の3人がゆっくりとテーブルの席に着席するのだった。

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