本当に?
「いや~、マジで本能のまま動いてしまったわ~、でも仕方ないわよ。目の前にプルンプルンの美ボティがキャッキャッしてたら、ムフフって思うでしょ?ねぇ、デリック」
さっきまでグルグル巻きの簀巻きの状態でナルジャの上に載せられていたうちパーティーの最強アタッカーである自称天才美女魔法格闘家様こと変態乱痴気痴女は俺の部屋につくと起用に簀巻きから抜け出し、人のベッドの上に寝転んだ。「このベッドはあたしのものだ」という態度にあきれて、部屋に備え付けられた椅子に座る。
「俺に同意を求めるな、はぁ~、反省していないようだから、ナルジャ、舐めてやれ」
「シャルルルウ」
「うわっ、ちょ、、ごめっめええんんって」
人のベッドの上で片足を上げてしびれている残念な赤髪の美女は、自分が起こした騒動に対して何も悪びれていない様子だった。俺が本館に着いたときにはアッザは捕縛されており、キブリーに「速攻でそいつを連れて、デリックの部屋に閉じ込めといてくれ!頼んだ!こっちは収拾させておく!」何が実際に起きたかは全くわかっていないが事情を察し、頷くしかなかった。
「あのな~、アッザ、俺も男だ、確かに認める、目の前に裸に近い女性がうろうろしてたら鼻の下が伸びるだろうし、ムラっともくるさ。でもな、ドギマギはすれど、襲うようなことはしないぞ。」
「てへっ、それは本能の性って、や・つ・よ。というか、そこで男を見せないなんて、デリックは意気地がないわね~。あと襲ったみたいに言っているのも語弊があるわ、同意の上よ」
「意気地なしで構わん。はぁ~、お前なぁ~、あの部屋に取り残される姫の気持ちになれよ。」
「・・・・でも~、だって~、リゼッタは相手してくれないし~、目の前に無防備なたわわなおっぱいや桃尻があれば、鷲摑みしたいじゃん?顔をうずめたくなるじゃん。男のあんたならわかるでしょ?」
「だから、同意を求めるな。あと、お前なぁ、ちょこちょこ変態オヤジを出すな。ったく、みんながみんなお前のように欲望の赴くまま動いてないわ!」
俺の指示もなく、大声を出した瞬間にナルジャがアッザをなめて、しびれさせる。またもアッザは感電したような動きを見せている。最近アッザに対するナルジャの対応は手厳しいものになっているが、そろそろアッザにも麻痺耐性が付きそうで恐ろしい。
「ねぇ、ところでご飯はどうなるの?」
いや、もう耐性がついてるかもしれん。
「わからん、俺も夕食を期待していたのにな。」
「まぁまぁ、その代わり、こんな美女を目の前にできるんだからありがたいものでしょ。」
「はぁ~、自分で言うな、外側が美人でもその中身が変態オヤジなのを忘れるな」
「は~い。」
返事をしたかと思うと、鼻の下が伸びきった赤髪の美女は俺のベッドの上に横たわりながら、ちょっと前に得た感触を思い出すかのように空中をもみもみしている。はぁ~、本当に残念でしかたない。
コンコン
「どうぞ」
扉をたたいた人物に声をかけ、部屋に入ってくるのを促すとゆっくりと扉が開き、大きな男が申し訳なさそうな小さな声で
「夕食を持ってきたんで、よかったらどうぞ。ナルジャちゃんにもご飯持ってきたよ。」
「ありがとう、トッド君、迷惑かけてしまって。ところで本館の様子はどうだい。」
「う~ん、お仲間さんとうちの姉ちゃんたちが上手く話をまとめてます。あと、その、お相手の方々もそんなに大事にはしたくないようで、ただ一人の方が、かなりご立腹で。」
「というと?」
「ああジェシーちゃんが言ってたやつ、意気地なしの癖にあたしにとられそうだから難癖付けてくるの?どうやらあたしがガツンと・・・」
「ナルジャ、ガツンと」
「びゅん」
「ぎゃふん」
「頼む、事態をややこしくしないためにおとなしくしてくれ」
ナルジャのしっぽでたたきつけられ身動きが取れなくなったアッザにあきれて首を振りながら、トッド君に申し訳ないとジェスチャーする」
「いえいえい、もとはと言えばアン姉ちゃんが皆さんの助言を聞かなかったことが原因でもありますし。それにしてもアッザさんは物凄く、そのモテるというか・・・」
「まぁね、私に落とせない乙女はいないわ。それにジェシーちゃんを含め、あんなエデンに放り込まれたら、気が狂ってしまうのは仕方ないじゃない。彼女たちの心を癒そうとマッサージをしてあげただけだし~、みんなよがっ・・、気持ちよさ・・・・違うなあ、とにかくすっきりしていたはずよ」
「・・・・・・・・・お前がな!」
「ジュルルルルルウア」
小さい声で「ぎゃ」っとうめき声をあげたかと思ったら完全に落ちたらしい。
「はははははは、デリックさんたち、面白いですね」
夕飯を持ってきてくれたトッド君から簡単な経緯を聞き、危惧していた通りの顛末だったことを理解した。
本館の施設が男女別のエリアに分かれていたが、エリアに入るのれんの先に実は扉があって各エリアのプライバシーが守られている構造だった。リゼッタとアッザが扉をくぐり、エリアに女性エリアに入った時は人の気配はなく、彼女たちは充てられた巣穴に荷物を置き、リゼッタはお風呂に、アッザはそのまま巣穴で仮眠をとると残ったらしい。リゼッタはアッザにくれぐれも変な真似をしないようにくぎを刺してお風呂場に向かった。アッザがリゼッタのお風呂についていかなかった時点で怪しいさ満点である。
各エリアのプライベート空間が守られているのは、本来素晴らしい構造なのだが、プライバシーが守られた同性同士しかいない空間では、気持ちがルーズになってしまうらしい。まぁ、男同士ならパンツ一丁になるのと一緒だろうな。
こいつはそれを分かっていて、残っていたんだろう。
次々と戻ってきた冒険者パーティーの女性たちは、野獣が潜んでいるとも知らずに、装備や服を脱ぎ、くつろいでいたところ、解き放たれた野獣にロックオンされた。何人かいた中の二人にアッザは声をかけたようだ。(そのうちの一人がジェシーちゃんなのだろう)
いきなり長身の赤髪の美女が優しく話しかけてきたら、同性でも驚くだろうに、どういう手口なのか、徐々に打ち解け、そこにいた二人を喰ったらしい。いや、正確には貪り続けたのだろう、リゼッタがお風呂場から戻ってきたときには乱痴気騒ぎの状態だったようだ。
さらにこいつはそのままの勢いでリゼッタも巻き込もうとしたところ、他の客も戻ってきて、その一人が大声を出し、騒ぎになったようだ。最悪なことに喰われた女性の一人に恋心を頂いていた男性冒険者がいたらしく、アッザとの口論となったり、他の女性冒険者も自分たちが寝泊まりしている場所でいかがわしいことをしていたことに苦情を申し立てたりしていた。俺とナルジャが本館に到着した時がちょうど騒ぎがMAXの状態だったらしい。
トッド君は話し終わると本館に戻ると言って、部屋を後にした。出ていく際にお礼を言うと、トッド君は気にしないでと笑顔で答えてくれた。
さて、今問題児は反省の色もなく俺のベッドに横たわっている。さっきナルジャは強めに舐めたおかげでまだ痺れているようだ。
「なぁ、いつものアッザならこんなに騒ぎにならなかっただろうに、どうしてこんなことになったんだよ。」
言葉の通り、アッザなら上手に対処できただろうによっぽど欲求不満だったのだろうか。
「いや、最初は二人の話を聞いて、そしたらジェシーちゃんがいろいろ苦労しているのが分かってさ。それなら気持ちをリフレッシュできるようにマッサージをしてあげるって、ジェシーちゃんと二人で巣穴に入って、狭い中うまくやったんだけどさ、ちゃんとね声が大きくならないようにしてたのよ。でも残ってたもう一人が感づいたらしくて、しかもちょっと興味があったみたいでお願いされちゃって、私的にはまだまだ体力あったから喜んでお相手したの。そしたら復活したジェシーちゃんからおねだりされちゃって、二人から催促されて、断るなんて男が廃るってもんでしょ。だから二人まとめてっと思った時に巣穴じゃ狭いからどうしようって、そしたら二人がまだみんな戻ってこないっていうから、ちょっとね広いところに移ってたら、リゼッタが戻ってきちゃって、さらにほかの人も来ちゃって、騒ぎが大きくなっちゃったの」
うううううらや・・・、じゃなくて、こんな話聞くのはヘビーすぎる。
「まずお前は男じゃないだろ。それといつもでも遊んでいるとリゼッタがお前から離れていくぞ。」
「だって、リゼッタに何度誘っても、相手してくれないんだもん」
「お前がいつも遊び歩いているからだろ、俺はもう仲を取り持たんからな。というか、お前はほかの女に手を出しまくっているけど、リゼッタのこと本当はどう思ってんだ。俺やヤーがリゼッタを可愛がっているのとは違うことぐらいは分かっているが、アッザの本気度がいまいちわからないよ。そういうところがリゼッタも態度を示しづらいんじゃないのか。」
「・・・・それはね、私にだってわからないわよ。リゼッタはストレートだから、あたしに本気になってくれるかわからないのよ。」
「お前な~、これまでもいろんな女の子を自分のテリトリーに引き込んでたろ。」
「彼女たちはそういった気というか、そういった素養があったのよ。ただリゼッタにはそういったものを感じられないのよね。だから、最近リゼッタのことあきらめようと思って、そうね、若干自暴自棄になってしまってたのかもしれないわ。」
「・・・・・、すまん、真剣に悩んでたんだな。」
「いいのよ、あたしはこんな性格だし、それにモテるからね!」
アッザの強がりのような態度に何とも言えない。アッザはリゼッタに大好きアピールをすることはあっても、無理強いはしなかった。当たり前のことではあるが、それだけリゼッタのことを大切に思っていたのかもしれない。(女遊びはしていたとしても)
部屋の中に気まずい雰囲気が漂う中、また扉がノックされた。
「空いてるよ。どうぞ」
入室を促すとそこにはどこかしゅんとしたリゼッタが立っていた。扉の前に突っ立っているリゼッタの雰囲気がいつもと違う様子にアッザも何か不安そうだ。
「どうした、てっきりキブリーがどうなったか連絡に来るかと思ったけど・・・」
「もういやです。」
「「リゼッタ?」」
「今まで、アッザさんは私を見ていても、他の人に手を出していました。だから気にしていませんでした。でも今日初めて他の人に手を出しているの目のあたりにして、本当に嫌でした。」
涙を貯めながら話し始めたリゼッタの言葉にアッザはショックを受けている様子だ。
「・・・リゼッタ、ごめんなさい。あなたをそんなに不快にさせたのは謝るは、これからはあなたに言い寄ることは・・・」
「違います。アッザさんが他の人とイチャイチャしているのがいやなんです。アッザさんが他の人に向いているのが嫌なんです。アッザさんは私のなんです。アッザさんが他の人に絡みついているのを見てわかっちゃったんです。他の人にとられたくないんです。どうしてこんな風に思っているかわからないんです。どうしてくれるんですか!」
大きな声で叫びながら、泣き崩れたリゼッタに動揺を隠せない俺とアッザはお互い顔を見合わせた。「絡みつく」って言葉はなかなかのパワーワードだが、
―俺とアッザの目線だけのやり取り―
「えっと、これって、どういうこと?」
「だから、そういうことだろ?」
「だって、この子今まで・・」
「だから本人が気づいちゃったって言ってんじゃん」
「えっ、ほんと?確認してよ」
「無理だよ、っていうかそれこそ本人の役目だろ」
「え、ちょ、いきなり、急展開すぎて」
「人に度胸ないとか言ってだろうが」
「でも」
「当たって砕けろだろ」
・
・
・
「リゼッタ、ごめんなさい。あなたの本当の心に気が付けなくて」
むせび泣くリゼッタの肩に優しく手を乗せて、気丈にふるまっているどうやら通常運転のアッザに戻ったようだ。
「ぐすんっ」
「これからはリゼッタだけを見るわ、リゼッタが泣くことが無いように。それよりリゼッタは本当に私を見ていてくれるの?」
「・・・・ぅん」
そういうとリゼッタは跪いているアッザに抱きついた。
一瞬アッザの顔がほころぶとパッと凛々しい麗人の顔に戻り、俺に対して強い視線をよこした。
―は・や・く・で・て・い・け―
・・・・・・・
ここ俺の部屋なのに。
雨降って地固まるという言葉を今日は満天の星空の下でかみしめながら寝ることにした。




