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王都に到着

「さぁ~て、王都が見えてきたぞ~」

デスカンソ近くの野営地から4日目の昼過ぎにやっと王都の城壁が見えてきた。かなり飛ばした日程だったが思いのほか時間がかかってしまったのは、道の具合によるものだろう。いかに王都への道とはいえ完全に整備されているわけではない。今回王都での仕入れのため馬車は道の状況に影響を大きく受けるため、日程も狂うものだ。


まだまだ未開の土地が多いデルウムンドでは、人の手がついていない地域も多い中、確実に「人類の中心地」と呼ばれる場所が城塞都市「王都 ハポン」である。ハポンでは王が住む城を中心に城下町が3つのエリア、居住地区、商業地区、娯楽地区に分かれている。その周りを城壁で囲まれており、上から見ると〇の周りに△があり、それを囲うように五角形の城壁があるような作りらしい。


サイクルとして居住地区から商業地区に出て働き、もし特別な日に外食楽しみたいなら娯楽地区に行くような形で人の流動がある。何とも面倒くさいような城下町のようだが理にかなっている部分も多いらしい。どう理にかなっているのかヤーに説明を求めたが、うやむやにされた。これは本人も良くわかっていないな。


王都の城壁に着くと3か所、門があるとのことで召喚状に指示のあった娯楽地区と居住地区を隔てる大通りの門、通称「旅人の門」に向かう。ちなみに居住地区と商業地区を隔てる大通りの門は「市民の門」、商業地区と娯楽地区を隔てる大通りの門は「商隊の門」というらしい。


「おい、そこの冒険者たち、立ち止まれ」

旅人の門のだいぶ離れた位置から門番は俺たちを制止した。三人の門番は二人が槍を構え、一人が近づいてきた。

「そこのモンスターは?」

ナルジャに槍を向けながら質問をしてきた。それにムカついたのか、ナルジャが威嚇の声を上げる。


「落ち着いてくれ、俺たちパーティーの中にいるビーストテイマーの使役獣だ。冒険者ギルドにも登録している。それに俺たちはこれに呼ばれてきたんだ。」

キブリーは王都から届いた召喚状を見せながら門番に応えた。


「!君たちがそうだったのか、これは失礼した。君たちの話は聞いているよ。ただ、ただね、ビーストテイマーがいるとは聞いていたが、、、、こちらの予想に反して大きいし、見たことのないのだし、なんとも、こっちも警戒してしまったよ。」

その様子を周りにいる冒険者たちパーティーも安堵の様子を見せている。若干、彼らが俺たちから距離をあけていたのはその為か。


他の門番に無事のサインを送り、門へ向かって歩きながら召喚状を確認した門番は

「うん、問題ない、こちらはお返しいたします。それでは門を通って、城へ向かってください。大丈夫迷うことはありませんよ。」何とも社交的な門番だな。


明るい門番にお礼を言って、門をくぐると目の前には馬車数台が横並びで通っても問題ないくらい広い大通りが城に向かってはしっており、大通りの右側は宿泊施設や飲食店が立ち並び、門をくぐってきた旅人たち相手に客引きを行っていた。この通りを歩いている人間はおおむね冒険者なのだろうか。


そういえば事前にヤーが教えてくれていたが、大通りに面しているのは中級クラスの宿とからしく、大通りから伸びる5本の中通りの一歩入った先にある落ち着いた場所が上級クラスの宿エリアとなっているとのこと。さらにお城の近くも高級クラスらしく、下級クラスの宿はそういったところから外れた奥の方になるらしく、城壁に近いらしい。


「いらっしゃい、いらっしゃい、もう宿はお決まりかい?うちはコスパが最高だよ!」

「お兄さんたち、冒険者、うちは料理が自慢の宿だよ。ぜひうちに!」

「冒険者さんたちうちは馬車止めるところ込みでこの値段だよ!」

「おや、そいつは使役獣かい?ビーストテイマーがいるなら、うちの宿、相棒と一緒に止まれるスペースがあるよ」


俺たちに対してもうアピールしてくる人たちに軽く会釈し、しつこい場合はもうすでに決まっている的な態度をし、スルーしながら城へ向かって歩みを進める。


歩きながら反対側をみると通りの左端は深そうな堀があり、きれいな水が流れている。堀の向こう側は芝生が広がりその先には木々が立ち並んでいる。話によれば木々の向こう側が居住区らしい。居住区の中にも貴族が住むエリアや上級、中級、そして貧困層が住むエリアに分かられているとヤーは言っていた。


木の向こう側大通りの上をまたぐように右側の娯楽エリアに橋が架かっている。等間隔に6本架かっており、すでに3本は過ぎた位置まで来ていた。橋を人が行き来しているのが見受けられ、何人かの子供たちは下を見下ろして騒いでいたりもする。特にナルジャが珍しいんだろうな、見たことのない獣に大きい声を上げている。


「なるほどな居住区から直接娯楽地区に行けるのか」

「そ、大体橋の下りた先は一等地で有名店が多いよ」

「娯楽地区と居住区は行き来自由なのか?」

「基本的にはね。ただ居住区側の降り口には扉があって、夜の22時で一応閉まるようになっているよ。」

「ふ~ん、それで、あんたたちが行きたがるエッチな店は?」

「それはさらに奥の方に・・・って、こら、アッザ、何を言ってるんだ!!」

(ジーーーーーー)

「リゼッタ姫~、俺たちをそんな目で見ないで!!」

「おい、ヤー、俺たちを巻きこむな!」

「そんなこと言って、デリックだって興味あるでしょ、そういうお店、ね、キブリー」

「ああ、えっ、俺?いや、ヤー!何をふって」

「あら、キブリー、い・が・い~、そしたらラピスちゃんはあたしが慰めとくわね♡」

「アッザ、何を言ってるんだ、リゼッタ、誤解だから、ヤー、考え中に話を振るな!」

「慌ててるのがさらに怪しいです(ジ―――――)」

「これはラピスちゃんに報告ですな。」

「ヤー、冗談が過ぎるぞ!」

「何を言いますか、キブリーもやっぱり男なんだから、それくらい!」

「ヤー、やめとけ」

「?どうした、デリック?」

「よく考えろ、アッザも。もしラピスにキブリーがいかがわしい店に行った的な話をしたとして、「なぜその場にいて、止めなかった」「お兄ちゃんを唆したのか」的なことを言われて、いつの間にか胸に包丁が突き刺さっている。そんな絵が浮かばないか?」

「「「「・・・・・・」」」」

「みんなこの話はやめとこ。」

「「「「うん」」」」

やはりラピスは最凶な気がする。


ヤーが近づいてきて、俺だけにしか聞こえない声で

「まぁ、ここだけの話、キブリーは無理でも、俺たち、な」

その言葉に軽く、うなずこうと思った時

「シャーーーーーーーー!」

ナルジャの突っ込みが入った。


そうこうしているうちに最後の橋の下をくぐったあたりから、いつの間にか呼び込みがいなくなっていた。

「突然静かになりました。」

リゼッタの素朴な質問にヤーが答えた。


「それはお城が近くなったからさ。ここからは高級店だから呼び込みなんてことはしないのさ。それにお城に用事がある相手にはお城の近くで待機しているってことさぁ。ほら、お城に着いたよ」


「えっと、」

「まぁ、」

「なんというか」

「丸いわね」

「はははっはは、初見の印象はそうだね」


普通お城というと何だろう塔があって、塔をつなぐ胸壁があって、宮殿があって、こう積み木を重ねていくような上に高く上るイメージ、そう形としては三角形なのだが。

「う~ん」

堀にかかった跳ね橋の向こう側にはぐるっと壁があって、上は丸い球根のような屋根がある。なんだろう、見た目はカップの上にボールをのっけたような感じだ。


「まぁ、最初はびっくりするけど、中はまた違うから。それもまた今度だね。」

ヤーの言う通り、今日はあくまでも到着した旨、お城へ伝えに来たのだ。実際の謁見という名の品定めは到着してから2日後という風に召喚状に書かれていた。


「すまないが召喚状を頂いた冒険者のもので、王都についた旨報告に上がりました。」

吊り橋のところにいる威圧感たっぷりの兵士に声かける

「召喚状は?」今度はつっけんどんな。城壁の門番を見習え。

キブリーは召喚状を渡すと不愛想な兵士は

「理解した。ようこそ王都ハポンへ、謁見日はこちらで追って連絡する。ついてはこちらで指定する宿に泊まるように、場所は・・」


「宿についてはこちらで決めるので、結構です。」

「いや、こちらの指示に従ってもらう。謁見日の伝達等不都合があっても困るのでな」

「お心遣い有難い。こちらで後ほど謁見日などを伺いに来るので、伝達は必要ない」

「そちらが来た時の担当が貴殿らを認識していない可能性がある。」

「召喚状を持っているので、それを見せれば取り次いでくれるのでは、今のあんたのように」

「王様は忙しい。急に予定が変更になる場合がある。こちらが把握した場所にいてもらわないと困る。」

「それなら我々の仲間が常にこちらにいるようにしておけばいいだろう。」

「ここは王が住む城の周辺であり、素性のわからない冒険者がフラフラしていると別の兵士が誤って捕まえるかもしれない。」

「さっきも言ったように待機する者に召喚状を持たせておくよ」

「召喚状を狙ってくる輩がいるかもしれないぞ」

「そんなに治安が悪いのか?それに召喚状を奪われる程度の冒険者なら謁見する価値がないだろ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


向こうの兵士はかたくなに譲らないな。それにしても聞いていた通りの反応だ。本来なら向こうからの提案を素直に受けるべきなんだろうな。何も知らなければ、良い宿を教えてくれる不愛想だが親切といった印象も受けるかもしれない。ただラビーダと交流があったキブリーはこの城の前の兵士たちについて、事前に情報を得ていたため、それが嘘だということを知っていた。


ここにいる兵士たちは特定のホテルと結託しており、城を訪れる冒険者等に対して城の決まり的なことで騙し、そのホテルへと斡旋する。すると手数料的なものをもらえるらしい。しかもヤーの話では彼らは貴族ともつながっており、新たな冒険者候補がどういった人物で、どこに泊まっているかなどの情報を売りさばいているそうだ。


そうすると興味がある貴族が謁見の前にその冒険者たちに取り入ろうとその宿を訪れ、交渉という名の洗脳をしに来るらしい。まぁ、それを真に受ける冒険者はそうはいないと思うが。


つまりこの兵士たちは給料以外の副収入で私腹を肥やしているわけだ。ここに立っているだけの兵士は給料が安いのに職を離れないので王族は彼らを評価しているらしいが、実際は大きな危険もなく、魅力ある別収入が入るおいしいポジションらしい。


貴族との友好関係を結ぶため、言われたとおりにするのもいいと思うがお金にシビアなキブリーは良しとはしなかった。向こうが付けてくる難癖をのらりくらりとかわしている。さぁ~て、どうしたものかな。


「そこはなにをしているのかな。」

全員が一斉に振り向くと居住地区から来たのだろうかかなり身なりの良い服装の男とその従者らしき2名がこちらに近づいてきていた。兵士はその姿を見るなり、ピシッとし敬礼をし、「現在召喚状を持った冒険者が現れたため、対処しておりました。」と手短に報告を行っていた。


「なるほど、その割にはどうも、手間取っているように見受けられたが。」

「いえ、そんなことはありません。」

「そうか、それならすぐさま謁見日を伝えてあげなさい。そのために彼らは待っているのだろう」

「「「「?」」」」

「いや、それは、その」

「うん?まだ城内に伝達にしていないのか?おかしいな、私の記憶では赤の召喚状を持った冒険者が現れた際はすぐさま城内に伝達し、謁見日を持ってきた冒険者に伝える流れのはずではなかったかな。」

「いや、はい、そうですが、それ以前に彼らに説明を・・・」

「ほう、どんな?王様含め我々が赤の召喚状を送るときは、かなり重大な事項であり、それを持った冒険者が現れたらすぐに対応できるよう手筈を整え、今か今かと待ちわびているのですが。そんな我々の気持ちよりも優先されるべき説明とやら、興味がありますね。私も聞いてみたいですね。」

「いえ、大したことでは・・・」

「大したことのない説明ですか、それで我々の気持ちをないがしろにされ、報告がないがしろにされてしまうとは悲しいものだな。」

「いえ、そんなことでは」

「そうかい、そしたら向こう側に連絡をして、吊り橋を下ろして早く城内に伝達すべきではないのかね」

「かしこまりました。」


返事をするや否や一人だけが入られる円柱の駐屯所に入り、何か作業をしているとすぐに反対側から吊り橋が降ろされてきた。反対側から別の兵士がこちらに速足で向かってくる。」


「どうした冒険者が来たのか?召喚状は?」

「俺が持っていますよ。」

「なるほど、確認した。少々待っていてくれ。んっ、ああ、これは、これはプラム様、気づかず大変失礼いたしました。いかがいたしましたか、こちらの裏口、正面は向こう・・・」

「ああ、わかっているよ。たまたま散歩がてら歩いていたら彼らのやり取りを見つけてね。」

「さようでございましたか、さすれば私が正面にご案内いたしましょう。」

「いやいや、大丈夫だよ。それよりも早く伝達に行ったらどうかな?それとそこの部下君にも指導しておいてくれたら助かるのだが」

「・・・・・かしこまりました。それでは我々は失礼いたします。冒険者の方々はしばしお待ちください。私が日付等を記載した青の招待状を持って来るので、それを受け取ってから滞在する宿で待っていて下され。待っていろと言っても。謁見の日まではこの王都を自由に観光できるので、ご安心ください。それでは」


そういうとつり橋を駆け足で渡ってきた中年の兵士は先ほどまでキブリーと言い合っていた不愛想な兵士を連れて城の方へと戻っていった。不愛想な兵士は獲物を逃したことのショックなのか、これからある指導というものにうんざりしているのか、かなり意気消沈していた。


「コホン、大変失礼したね、冒険者の諸君。王都の兵士が彼のようなものばかりではないので、誤解しないでほしい。」

「いえ、こちらこそ困っていたので助かりました。」

「お役に立てて良かった。まぁ、本来なら謁見の場で自己紹介するのだが、これも何かの縁です。先に自己紹介させていただこう。私は王都ハポン マックウィーン家の現当主プラムと言います。以後お見知りおきを」

「初めまして、今回召喚状を頂いた冒険者パーティーのリーダーを務めているキブリーと言います。」

「ああ、聞いているよ。今回の謁見でクラウンになると。最近はクラウンになりたがらないパーティーもいるからね、我々としても危惧していたところで、君たちが快諾してくれたのは大変にうれしい限りだ。クラウンとして運営していくのは大変だから、王都に住む貴族として大いに支援させていただくよ。もちろん、もし我がマックウィーン家を選んでくれたら、最大限の援助をお約束するよ。」

「あの、何を言っているのか、まだ謁見日すら・・・」

「ああ、そうだったね、ちょっと先走ってしまったか、まぁそれだけ、他の貴族含め我々は君たちのような新たなクラウンを目指す冒険者が現れるのを待ち望んでいたのだよ。何、他の貴族からも話を聞いたうえで、考えてくれればよいさ。ちなみに、宿は決まっているのかい。もしよければこれも何かの縁だ、紹介をするよ、って、これでは先ほどの兵士と同じかな。」

「いえ、お心遣いありがとうございます。貴族の方から紹介いただくような宿に泊まるような・・」

「ははっは、金銭は気にしなくても良いよ。それこそ何かの縁だ。私が個人的に支払おう。そのことで我々に贔屓もしなくてよい。」

「お気持ちだけ頂きます。自分たちは自分たちに合った宿に検討を付けておりますので」

「そうか、残念だ。まぁ、よく考えてみたら私の提案を受け入れたら、他の貴族から嫌がらせを受けかねないから、結果的には良かったかもしれないな。これは私が浅はかだった。」

「いえ、親切心から出た提案だと受け取っています。」

「そうか、そう思ってくれたなら・・・」


「おーい、謁見日が決まったぞ」さきほど城に戻った兵士長が戻ってきた。

「謁見日は2日後の午後2時に、なのでこちらの門に午後1時には来てほしい。色々説明することがあるからな。それではまた2日後に。プラム様、皆様がもうお待ちですよ」

「そうか、それは申し訳ないな。すまないがこれで失礼させていただくよ。2日後会うのを楽しみにしているよ」

俺たちは全員頭を下げ、プラム・マックウィーンは手を振って、城の方へと消えていった。


「君たちも難儀だったな。ところで宿はもう決まったのか?もし決まっていないなら・・・」

「「「「結構です」」」」


「つかれた」城門から離れ、旅人の門へ向かう道へ進みながら、左肩を回しながらキブリーが第一声を上げた。居住地区と娯楽地区を結ぶ陸橋の一本目がもう少しというところで

「はぁ~、確かにつかれたなぁ~」キブリーの右側にいたヤーが両手を頭に乗せながら同調する。

「すまない、交渉は全部キブリーたちに任せきりで、俺はただ馬車で座ってたけで、何もできなかった。」そういうと俺は馬車の手綱をしっかりと握った。

「いや気にすることはないよ」とキブリーが答えると

「どうする、あたしがつかれを取ってあげようか?」アッザと提案してきた。

「私はその様子を見ておきます。」とリゼッタが言うと、俺は一度馬車を止め、キブリーたちが馬車の荷台に乗り込んできた。

「ナルジャ、アッザのフォローできるか?」

「シャ~?シャー、シャー!」分かったような、わからないような返事のナルジャに苦笑しつ、俺は握った手綱を一気に振り上げ、馬に駆け出すように命令するため手を一気に降り下げた。


突然の指示にウマは驚いたものの、急発進すべく足に力を入れ、馬車を引っ張ると一気に加速し道を走り始めた。ナルジャも並走する。陸橋手前の大通りに出る直前で左側に曲がるとさらに加速した。幸いなことに娯楽地区を囲うようにめぐっているこの道に人はまばらで、馬車を急がせても問題なかった。


「このあと3本目の脇道に入れ!」ヤーが声を上げる。

「了解!」そう答えると3本目のわき道に馬車を旋回させた。ここもまだ人通りがすくない、ただわき道と言いながらもそれなりの道幅があり、馬車が難なく通れる。

「もう少し走ったら、噴水が見えるから道に沿って左の広い道に入ってくれ、アッザ、その先ならちょうどいいぞ」

「ええ、まかしといて。」

「ナルジャ、アッザのサポートよろしく」

「シャー!!」馬車の急発進にもついてきたナルジャが答える。


馬車はヤーの指示通りに進むとアッザは馬車の荷台から飛び降りる、そこをナルジャがすかさずキャッチして、うまく着地した後、すぐに姿を消した。

「少しずつ緩めてください。」馬車から後ろを見ていたリゼッタが声をかけてきた。

俺たちはそのまま馬車を走らせ、徐々に速度を緩めていくと、

「もういいわよ~」とアッザの声が聞こえた。馬車を止めようと思ったが、街の人たちが通りを駆け抜ける馬車に興味を持ったのか視線がこちらに向いている。少し離れた人があまりいないところまで、とキブリーが指示し、馬車を歩かせた。


「こら、もういいだろ、止めろ、離せ」

人の目線が感じない場所まで行くとアッザのわきに抱えられた年輩の男が声を上げた。

「ちょっと、あんた、美人に抱えられているのになって言い草なの、って、ちょっと、いい加減暴れるのやめなさい。往生際が悪いわよ」

「なんだ、この怪力女は、くそ、離せ」

「アッザ、もういい、離せ。」

「はぁ~い、でも、何こいつ、あたしたちをつけまわすなんて。」

「なんでバレたんだ。というか、どうやって意思疎通を・・・」

「そこは機密事項だ。あんたは何者だ。」

「私は、君たち冒険者の確認を仰せつかっているものだ。別に害をなすものではない。」

「なら隠れずに堂々としていればいい」

「なに、素行調査も含めているので、隠密で動いていた。不愉快にさせたのなら謝ろう。」

「素行調査というが、そういった審査を通ったから今回の呼び出しがあったと認識しているのだが、ひそひそと隠れて尾行するのが分からない。」

「特命だからな。」

「なるほど、では城に戻って、正式に抗議しよう。」

「ちょっと待て、これは王族が知っている話ではなくてだな、影で支えている・・」

「なるほど王族が知らないところで勢力があるとはまた危険な話だ。早く戻って知らせねば。」

「わかった、すまなかった、おまえ、「霞隠れ」を持っているな。」

「気づくのが遅いですよ。プラム様の後ろで隠れているのは知っていましたからね。」

「ははは、そこからもうバレていたのか。若いのにだいぶ優秀だな。」

「お褒めの言葉有難く頂きますが、今回の件はいかがなんでしょうか。」

「すまない、これは私個人の独断で、プラム様をはじめとしたマックウィーン家の預かるところではない。これはせめてものお詫びだ」

そういうと男は革袋を渡してきた。キブリーの代わりに俺が中を確認すると金貨が数枚はいっていた。

「買収か?」

「違うさ、先ほども言ったが個人的にお詫びとしてだ。主人によいところを見せようと思っておぬしたちに探りを入れた。赦してほしい。」


パーティーのみんなで集まり簡単に会議する。この男の話をうのみにするのも危険だが、これ以上の詮索は危険であり、お金儲け取ると面倒なので、そのまま開放することにした。


「ゴホン、改めてすまなかった。お詫びはせめて受け取ってもらいたかったが、まぁ良いだろう。一つ忠告するが誰かしらからの親切は受け取っておくべきだぞ。」

そういうと男は人通りの多い方へ向かい姿を消していった


「よし、もう気配はないな。」

「ふぅ~、さすがね、うちのリーダーは、っていうか、何あいつ、最初からいたの?」

「ああ、普通なら視認するのは難しいだろな。」

「でも、キブリーさんには通用しません!」なぜかリゼッタが誇らしげに言う。


「さて、そしたら、やっと落ち着いて宿を探せるな。」ウマをなだめながら、俺は今いる娯楽地区を見渡す。周りには数店舗お店があり、どうやらお土産などを売っている。

「ああ、そうだな。それにしても貴族はなかなかに手ごわいな・・・・」キブリーは今日のやり取りを思い返し、考え事を始めた。こうなったら、宿探しにキブリーの力は借りられないな。ただ値段のところだけはこっちに意識が戻ってくるかな。


「夕飯はどこら辺に行きましょうか。」そう言いながらリゼッタも辺りを見渡すと少しがっかりとしていた。どうやら今いる場所は娯楽地区の飲食店エリアではないらしく、食べ物屋が一切ないことにがっかり来ていたようだ。


「リゼッタ、あとでご飯ご馳走してあげるからデートに行こ♡」アッザがご飯を餌にリゼッタを誘う。リゼッタは「ご飯」だけを切り抜き、返事をしている様子だ。


「それよりまずは宿でしょ。この先もう少し外壁方面に行くと安宿エリアだから、そっちに行こう。」ヤーはさすが王都出身であって地理に詳しいな。


「そうだな、当初の予定通り、そっちのエリアに行こう。ただ宿決めは慎重にしないと、ぼったくりに合うかもしれないからな。」

思考の海に潜っていたキブリーが戻ってきて皆に声をかけてきた。


「「「「は~~~~い」」」」みんな、リーダーの意見に従順だ。


「ねぇ、ちょっと、そしたらうちに来ない?」

その声に全員が振り向くとそこには髪をアップにまとめエプロンを付けた恰幅の良い若女将風の女性が立っていた。


「シャ~~~~~~~」

ナルジャは眠たそうに声上げていた。


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