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ナルジャとは

「さぁーて、俺の話はここで終わり!さてさて、それでは次はデリック君にお願いします。」

「「「「・・・・・」」」」

「どったの?」

「いや~、ヤーの後に話すのはちょっとないよ。また今度にしない」

「あっれ~、そんなに重かった?」

「う~ん、重くはないのかもしれないけど、軽く取り扱っていいの?ってかんじぃ~。」

「ああ、俺たちはヤーの事情を知らず、ギルドを通していたとはいえ、ラビーダクラウンの結界杭とか使っていたし、メンバーとも少なからず交流があったからな」

「そうそう、ラビーダのアゼットちゃんやカルナちゃんとか」

「へぇ~、アッザさん、そんなお友達がいたんですか。」

「や~ね~、リゼッタ、ただの友達よ、お・と・も・だ・ち」

「そうですか」

「えっ、リゼッタ、もしかして妬いてくれているの、うれしい!!」

「知りません、(プイ)」

「はいはいはい、脱線しすぎじゃない。デリック氏の話に戻ろうよ」

「さらにこの後には話しづらいわ」

イチャイチャし始める女子たちを見ながらぼやくと、後ろから小突かれた。ただの小突きが鱗の堅さのせいか、なかなか痛い。


「シャ~~~」

今まで自分が蚊帳の外だったためか、若干ふてくされていたが、自分の番が来たと思い期待していたのに、なかなか始まらず、ちょっと拗ねている。


「ほらほら、ナルジャも待っていたみたいだし、デリック氏、出番ですよ」

「そうだな、俺もナルジャが何なのか、よく知らないからな」

「そうね、私たちの知らない間にいつの間にかデリックといたわよね」

「しかもナルジャさん最初はあんなに小さかったのにすくすく大きくなって、あのまま大きくなったらとハラハラしていました。」

リゼッタは抵抗するのに疲れたのか、アッザに抱き付かれ、好きなようにされながら発言していた。キッスが乱舞しているわ。


「はぁ~、そしたら、ちょっと長くなるけどいいか?」

「おっ、待ってました。」

「大丈夫さ、まだまだ夜は長い。」

「デリック、ちょっとおもしろく話しなさいよ。眠くならないように」

「デリックさん、お話のおともになにか軽食も作りながらにしませんか」

「シャー、シャー」

ったく、なんか好き勝手、ナルジャも。よくリゼッタは食べても太らないな。はぁ、材料有るか?なんか軽く作れるかな、荷物をがしゃがしゃしながら、ナルジャとの出会いを思い出していた。おっ、アヒージョならいけそうか。



~~~~~~~~~~キブリーパーティーから分かれて数年~~~~~~~~~~~~~~

「くそっ!」

薄暗い洞穴の底で悪態をつく。今回は完全に自分の落ち度だ。いくつかのパーティーをけん引していたからある程度自分の力を過信しすぎていた。ましてやここ最近は足手纏い感が出る前に抜けていたせいで、勘違いしていた。


「はぁ、はぁ、ここまでか」

深追いしすぎたな、今回のギルドからの討伐目標であったバグ・ニュートを群れで見つけ、最低ラインの5匹を討伐し、街に戻ればよかった。群れで行動し、群れが危険となれば散開し、また別の個体と集まり、群れとして形成する。虫のような質感のトカゲたちは無数に生息し、雑食のため家畜や畑何でも荒らすため、よくよく討伐対象になっていた。


「ずる賢い奴らだから、何かあるとは思ってたけど。こんな追い込まれ方してくるとは」

最初にあった群れは十匹もなく、5匹減らせば半分以下になり、逃げると思っていた残りが果敢にも攻めてきた、奴らの攻撃は大したこともないし、俺でも一撃で仕留めるほど固くもない。


注意すべきは倒したときにまき散らす体液、これは個体ごと何かしらの毒をもつ。致死毒ではないものの、体液が付いた箇所がかゆくなったり、やけどのようになったりと戦闘を妨げるような効果、要はデバフを与えてくる。これを積み重ねて群れの生き残りを確実に逃がすのだが、奴らは意図的に一匹ずつ突っ込んできた。この時に危険な罠だと気が付くべきだった。


残り2匹と思い追いかけたとき、1匹が俺にとびかかり、残りが逃走した。ここまでは通常通りの動きだった、その残りを仕留めようと追いかけた先に待ち受けていたのは別の群れだった。これは確実に罠だ。待ち構えていたバグ・ニュートは先ほどの群れの数倍の数がいた。


振りほどくように、逃げた。抵抗せずに逃げた。抵抗して個体を仕留めれば、一体仕留めるごとにデバフが蓄積していく。ましてや数の暴力という言葉があるように、どんなに弱くてもこれだけの数が集まれば、俺なんかは捕食されてしまう。


今思えばこの逃げる先も誘導されていたのだと思う。街の方へ行こうにもバグ・ニュートたちが回り込み、沼地の方へは比較的少なかった。今冷静になればわかるようなことが、たぶん最初に倒した個体の毒が思考力阻害とかの類いだったのではないか。


ただ奴らの誤算は俺の「聖なる灯」だったろう。湿地帯の窪地に洞穴のようなものがあり、そこに飛び込んだ。その時追ってきたバグ・ニュートが洞穴の周りに留まり、遅れている仲間を待っているのか、入りこんでは来なかった。


時間的な余裕ができ、すぐさまとった行動は「聖なる灯」を灯すことだった。そうすれば時間を稼げる。効果範囲の中ではあいつらが攻めてこないし、攻めてきても弱体化するから、何とかなると思った。今考えるとデバフ効果も徐々に消えていたんだと思う。


洞穴の中には運よく黒い枯れ枝とかが多かった、若干湿っていたので、少しくすぶった黒い煙がたったが、無事に火が付き、居心地の良い安心した空間が広がる。バグ・ニュートたちはすぐに異変に気付いた。急に追い詰めたと思った獲物がいる洞穴から自分たちを拒絶する空間が広がり、集い始めた仲間たちと洞穴から距離を取り始めた。


「これでなんとかなるかな」


数十分後それはというのは甘い考えだろう。時間が経ち冷静になってきて状況がよくわかってきた。バグ・ニュートたちは近づいては来られないものの、交代で俺を見張り続けられる。目に見えない範囲で待ち構えている、そんな気がする。一方見張ってない仲間はその間に食事や休憩が取れる。向こうは消耗することが無い。


じゃぁ、俺はどうか。もって数日か。この聖なる灯の中から出ることができず、食料も残りはあと2日分あるか無いか。俺がクエストから戻らないからと言って、騒ぎ立てるやつはいないだろうな。ボッサムに家族がいるわけでもない、いや家族がいたとしても、家族たちは俺が死んだと思っているから意味ないか。唯一気付いてくれそうなのはキブリーたちだけど、ちょうど出発するときに門で鉢合わせして、向こうは長期クエストに出ていくと言ってっけ、


一か八か外に出たところでさっきのバグ・ニュートの数を考えると弱体化されて、終わるだろうな。ああ、バグ・ニュートは獲物の体に卵を産み付けると聞いたことがある。もしかしたら、今は産卵時期で産卵床として俺を見つけたのかも。狩ろうとしたものに狩られるのか、冒険者の終わりとして定番なのかもしれない。


「くそっ」自嘲気味な思考に嫌気がさす。


聖なる灯を数珠つなぎで町まで行けるか?いや、沼地で周りには木々はなく、たまたまこの洞穴に枯れ枝があった程度だ。街まで行くにはかなりの量が必要だ。そんなにあるわけがない。・・・・少し歩いて探してみるか。聖なる灯の効果で少し前向きになった。


洞穴から顔を出す、やはりバグ・ニュートはいないな。周りを見回すと聖なる灯の効果範囲が広いようで・・・・枯れ枝で作った割には。以前同じぐらいの枯れ枝で作った聖なる灯では20mぐらいの範囲しか広がらなかった空間が、これは50mくらいあるんじゃないか。

まぁ、いいか、とにかく他に焚き木になるような枝がないか探そう。


・・・・・・・・・


やはり、ないか、周りは高い葦みたいな植物が倒れるように広がり、遠くに木々があるがそこまでは聖なる灯は届いてない。しかもバグ・ニュートの数体が木々のところからこっちをのぞき込んでいる。多分うっそうと生える葦の中にも潜んでいるんだろう。


「さぁーて、手詰まりか、どうするかな。」


沼地に生えた葦は水分をよく含みも燃え広がらないというか、木以外を燃したとしても聖なる灯になるのか不明だしな。ただ沼地が燃え広がれば他の冒険者たちが気付くかもしれないし、葦むらの中に隠れているバグ・ニュートも一網打尽にできるんじゃないか。


「とにかく落ち着いて冷静に考えよう」


自分に言い聞かせるように独り言を吐き出しながら、洞穴の入り口付近に灯した聖なる灯の元に戻る。腰を下ろし、前向きに生き残るための知恵を絞りだす。おなかが減る。


「腹が減っては、戦はできぬか、でもどうするかな。」

あと2日分の食料をどうするか、延命のため少しずつ食べるか、一気に食べて荷物を減らし、明日駆け抜けて街を目指す一大勝負に出るか。洞穴に沈黙が訪れる


「おい、人よ」

ドキッ!!!!


「だ、誰だ!!」

この洞穴に先客がいたとは驚いた。それにしても問いかけとして、「人よ」って

「すまないが、奥の方まで光が届かないんだ、こっちに来てくれないか。」


「その光があるから、そっちにはいけない」

どういう意味だ。


「洞窟の奥がどうなっているかわからないから、早くこちらにいらしたが良いですよ。モンスターがうじゃうじゃいてもこの焚火の周辺には近づいてこられないので、安全ですよ。」

声の質から年上の女性だろうか、さっきはいきなりで驚いたけど。


「その通り、だから困っている。それとこの奥には私以外はいない。」


「・・・・・」

「・・・・・」


「確認ですが「人」ですか?」

「いや」


ズサッ、瞬時に武器を持ち身構える。モンスターによっては人語を習得していると聞いていたが、本当にいたとは。俺で太刀打ちできるだろうか。


「戦う気はない。話をしよう・・・・お願い」

「・・・・信用できない。信用できないが、話は聞く」

「ありがとう、人よ」

なぜだろう、高位のモンスターであれば聖なる灯によって弱体化されるだろうが、押し切って俺を襲うことは可能のはずなのに、それをしない相手。もしかしたら俺をだまして、近づいたところを襲うつもりかもしれないが、切羽詰まったような口調の相手に対話を受け入れてしまった。


「まずはお互いの状況の説明をしよう、こちらはバグ・ニュートというモンスターを討伐していたところ逆に誘い込まれ、この洞穴に退避した。ここがあんたの寝床だとは思ってなかった、偶然であり、襲いに来たわけではない。ただこの巣穴から出ることができない、何故ならバグ・ニュートたちがまだ周りで見張っているからだ。」


「わかっている。奴らに知恵を与え、ここに誘い込ませていたのは私だからね」


「お前はバグ・ニュートの女王みたいな存在か?」


「いや、違う。私は奴らを捕食するもの。今は奴らを捕食する代わりにこの巣穴に入ってきた餌を食べていた。」

なるほど、俺を追ってきたバグ・ニュートのグループが飛び込んでこなかった理由はそれか。この奥にいるモンスターを恐れてしり込みしたのか。それにしてもいやな毒を持っているあのバグ・ニュートを食べるとはどんなモンスターだ。


「奴らは私の血と肉になることを誉と思っているが、自ら進んでではなく、狩猟の中で、食うか食われるかを望んでいる。少し前までは奴らを貪り食っていたけど、今はそれができない。奴らは食事をしなくなった私を危惧したのか、でも奴らは自らを犠牲にすることは誉とはならないらしい。」


「モンスターもいろいろの死生観を持っているんだな。」


「そう、そこで奴らがとった行動はお前たち人を私の巣穴に誘い込み、奥にやり、私の栄養とさせることだった。その方法には私が与えた知恵も大いに役立っていた」


「なんで、奴らはそこまでするんだ」


「わからない、奴らにとって、私はなんなのだろう。ただあと数日もしないで私の目的が達せられると思ったとき、今度来た餌はなかなか奥に入り込んでこない。奴らも奥まで追い立てることをしない、仕方ないからこちらが出向いて食べに行こうかと思ったら、入り口付近に結界のようなものを張り、私が近づくことも外にはい出ることもできなくなった。」


「今の話を聞いて余計に焚火を消す気持ちがなくなったよ。」


「だろうな、それでも私の状況を話したの。少しは信用してくれた」


「ああ、何とも、なんで、自分に不利になる話をした。」


「人よ、お前の信頼を勝ち得るため、そして私の目的を果たすためさ」


「俺はお前に食べられる気はないぞ。」


「わかっている。ただこのまま餌を食べられない状態が続くのは私の目的を達成するためにはよくない。またこの結界を強引に突き破って体に負担をかけることもできない。」


「なぜ?」


「人よ、私は身ごもっているの。」


「えっ?」


「身ごもっているの。もうすぐで出産。その前に体を危険にさらすことはできない。」


「マジ?」


「大マジ」


「いや、だからと言って、焚火を消して、がぶっといかれるだけじゃぁ」


「ああ、そうしたいのはやまやまよ、けど、それはしない。だから取引をしよう。私はこれから卵を産む、その後失った体力を回復させるため、奴らを食べに行く。ただ奴らは私の産んだ卵を欲しがる。奴らは卵を食べて強くなることだから。」


「それって、それがバグ・ニュートの目的じゃぁ」


「ああ、そうだろうね。奴らが私にとっての餌なのか、私が奴らにとっての餌なのか。よくわからない。本来は体力を回復するため、数日分の餌を貯めておこうと思ってた。人よ、お前のせいで無理になった。だから私が奴らを食べに行くしかない。」


「入り口は一つだろ?どうやって」


「なに、掘って地表にはい出ることぐらいはできるさ、ただ私が食事をしている間、その空いた穴から産んだ卵を奪われる可能性がある。いや、奴らはそれくらいならするだろう、何せ知恵を与えたからね。」


モンスターに知恵を与える存在って、かなりヤバイ相手だよな。俺の聖なる灯の結界がそんなに強いとは思えないんだが、実際に襲ってこないところをみるとよほど強力な効果があるみたいだ。何の枝を燃やしたんだろうか。


改めて枯れ枝をみるとそれはどす黒い墨のような色をした枝だった。


「・・・墨泥樹」どうやら通貨の材料を燃やしたみたいだ。


「どうした?」


「いや、何でもない。こちらの話だ。それで・・・


「・・?ああ、私が食事に行っている間、卵を守ってほしい。」


「う~ん、卵?その、あなたは卵を産むのか?」


「ええ」


「・・・断るとどうなるんでしょう」


「人よ、人の世界で怒り狂う親はどんな?」


「・・・・必ず死守します。」


「頼む」


これで俺の終わりは大きなモンスターに喰われて終わりか。もし卵を守らなければ、体力が戻った瞬間、聖なる灯の効果を無視して飛び込んでくるんだろうな。もし卵を守ったとしても、守るために聖なる灯の範囲外に出ているだろうから、一瞬でバクッとされるのか。相手はモンスターだ、約束を守るかどうかなんてわからない。


どうせ死ぬなら、冒険者らしく守るものを守って、死ぬのも悪くない。


その晩、最後の晩餐になるならと2日分の食料を使い、クエスト中では思えない豪勢な食事を用意した。たださすがに食べきれないなと思い、さっきまで話していた相手に声をかけてみた。


乾燥野菜をふんだんに入れたパスタ入りのスープ、燻製下干し肉ふんだんに入れ、スパイスを利かせた溶かしチーズを乾パンに乗せ、それと昨日捕まえて下ろしておいたウサギを1羽丸ごと焼いた。


「なぁ!!」

返答がない。


「人間の食事が口に合うかわからないが、作りすぎたから淵においておくよ。もしよかったら食べてくれ。あと俺が討伐したバグ・ニュートのしっぽも置いておくよ。」

クエスト達成確認用にバグ・ニュートからはぎとっておいたしっぽも差し出す。もう俺には必要はないだろうしな。これで少しでも温情を・・・むりか、でも一人で食べるよりはいいか。


自分の取り分をもって聖なる灯の範囲の淵より手前に座る。明るい部屋から窓の外を眺めても真っ暗闇なように、灯の範囲外が暗いと何も見えない。ただ何かが近づくのは分かる。見えないが大きな何かが動いているのを感じる。


「いいの。」

「ああ、よかったら食べてくれ。一人じゃ食べきれん」


「・・・・・・・・」

「大丈夫毒とかは入っていない。」

「私に毒は効かない」

そりゃそっかバグ・ニュートを食うんだもんな。


「!おいしい。それになんか、力がみなぎるというか」

「へぇ~、そういってもらえると嬉しいな。量が少なくて申し訳ないが」

「大丈夫、産む前に少し栄養が欲しかった。ありがとう」

「どういたしまして」

別にモンスターと友情が芽生えるとは思えないが、悪くない交流だな。


明け方

シャ~~、ジャぁ~~~~~~~


どうやら無事産卵されたみたいだな


ドゴゴゴゴオゴッゴゴゴオ

地表を目掛け土の中を掘り進む音で目が覚める。さぁ、最後の使命を果たさなければ。


母親となったモンスターが掘り進めた穴から光が差し込み、今さっき産んだのであろう銀色に輝く卵が数個、枯れ枝で組まれた巣に放置されていた卵を温めなくてよいのだろうか。念のため、テントのカバーに使う布をかぶせる何もないよりましだろう。それにしても卵が思ったより小さいな。


穴から差し込む光が一瞬陰る。どうやら来たな。振り向くと空から続々とバグ・ニュートが落ちてきた。かなりの数だ。


「よし、とことんやってやるぜ!!」

バグ・ニュートの体液でべとべとになった武器をもう掴む握力さえ残っていない。奴らの体液を浴びすぎた。

ズサ、ズサ、ズサ何かが歩み寄ってくる音が聞こえる。


「人よ、約束を果たしてくれたな。」


「ああ、何とかね。」


枯れ枝で作られた巣を背に倒れこむ俺に銀色の獣だと思う者は話しかけてきた。ただ視界がぼやけている、バグ・ニュートのデバフで視界が不良になっていた。


「・・・・・・」


「どうした、さっさと食べろよ。」


「そのつもり。だった。外のトカゲどもだけでは足りないから、君も食べるつもりだった。・・・けど、昨晩私に与えてくれた食事のおかげで、無事に出産ができた。それにここまで身を挺して卵を守ってくれるとは思っていなかった。卵を人質に取る気は起きなかったの。」


「あんたが想像させただろうが、怒り狂う親の恐ろしさを」


「そうね」

「心配するな、卵には傷一つついてないよ。さぁ、終わらせてくれ」


「・・・・・」


そういうと近づいてきた大きな銀色の獣はまず卵を自分の腹のところにある袋にしまい込み、俺を飲み込もうと口を広げた。


「なかなかの人生だった」そう思いたかったが、悔しさが沸き上がった。と同時に俺が起き上がった。


「な、えっ」

銀色の獣は俺を口にくわえると聖なる灯の焚火の近くまで運び、俺を投げ入れた。無様に着地をした俺に


「私の気まぐれよ」


「ありがとう」


「今回は卵を多く産めたわ。お礼を言う。」


「どういたしまして。」


「一つ頼まれごとをしてくれない。」


「・・・」


「私の袋の大きさを考えると少し卵が多いの。一つ私の子をもらい受けてくれない。」


「・・・いや、あんたが育てるべきだ。それに俺の今の状況だと数時間はこの空間にいないといけないし、この空間に入ったら卵が無事かどうかわからないぞ」


「それなら、それまでよ。」


「・・・・なぁ、あんたほどのモンスターがなぜわざわざこんなところで卵を産んだんだ。あんたの住んでいたところはそんなに危ないのか」


「いや、そこまでは。ただどうしても出産すると体力などが著しく低下する。強者が弱くなったところを他の強者が仕留めにかかるのは自然の摂理よ。だから生活していた場所だと産む際に食い殺される可能性があると思って、安全なところまで逃げてきたの。まさか人が近くまで来ているとは思っていなかったけど。」


「じゃぁ、住んでるところに戻るのか」


「・・ええ。そこで君に私の子供を育ててもらいたいの。私たちに何かあっても君の所にいる子が残るわ」


「うまく育てられるか、というか生まれるかわからないぞ。」


「さっきも言った、それなら、それまでよ。」


「わかった・・・」

そういうとまだ満足に動かない体を動かし、卵を受け取りに聖なる灯の範囲の淵に立ち、卵を直接受け取った。


「人よ、君の名前はなんていうの」


「デリック。あんたにも名前はあるのか?」


「もちろん、私は・・・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「こうして受け取った卵から生まれたのがナルジャだよ。」


「俺らが遠征クエストに励んでいる間にそんなことがあったのか」


「でもナルジャさんはどこで生まれたんですか?」


「その沼地で、周りのモンスターはナルジャの母親が食べていったからいなかったし、俺も回復しないといけなかったから、巣に使っていた木を聖なる灯にくべて、数日間経ったら、孵化した。」


「っていうか、早くない?それに成長も」


「多分、聖なる灯の効果だと思う。それにナルジャの母親から比べると大きさはまだまだだけどな。」


「つうか、ナルジャはそしたら、その内人語を話すわけ?」


「ああ、多分、でもどれだけかかるか」


「うわ~、ナルジャちゃんとお話しするの楽しみです。」


「ナルジャちゃん?」


「はい。だっていつの間にかデリックさんが連れていたからわからなかったけど、今の話で私がお姉さんだとわかったので。」


「そうね、これからはお姉さんたちの言うこと聞くのよ」


「シャ、シャ~?」


ナルジャはとぼけたような声を上げた。それにむすっとしたアッザが小石を投げると、ナルジャがそれをしっぽでは跳ね返し、それがヤーに当たる。

額を真っ赤にしたヤーがナルジャお返しをしようと飛びつくとするりとかわし、勢い余ってリゼッタに抱き着いてしまい。アッザがメラメラと燃え、ヤーにファイヤアローをぶっ放す。何とも絵にかいたようなドタバタ劇が始まった。


「なぁ」

キブリーが近づいてきて、小声で聞いてくる。


「確認だが、ナルジャは竜に属するのか?」


「・・・・・ああ、そのようだ」

ドラゴン、竜、めったに会うことのないモンスター、あまりにも貴重なモンスターであると。だから噂だと空を飛ぶための翼があったり、蛇のような長い体を持っていたりするとされている。また口から火や雷を出し、風を操るなどの能力を合わせ持ち、あったら最後パーティーは全滅だろう。


「ナルジャの母親が言ったんだ「私は鼬毒竜のナタージャ」って、でもどうして竜だと」

さすがキブリー、ずっと何かピンとくるものがあったんだろうな。ギルドとかの登録には銀鼬としているし、銀鼬と思っていなくても、何かの亜種ぐらいにしか思ってないかなと思っていたが。


「いや以前、竜種の鱗を見たことがあってな。色や形状は違うんだが、なんかているものを感じたんだ。ナルジャの成長は楽しみだな。」


「ああ、楽しみだよ」

そうもう一つ、楽しみのため、みんなを驚かせるために伝えていないことがある、実はナタージャが穴から降りてきたとき、視界が悪かったけど、その姿は確実に人型だった。


「ちょ、デリック、ナルジャを止めてくれ~~」


「はいはい、ナルジャ、もうじゃれ合うのは終わりだぞ」

ヤーはナルジャに嘗め回され軽く麻痺っている、横を見るとアッザもだ。そんな二人を見て、リゼッタが笑い声をあげている。けど顔は相変わらず無表情に近いな。


「デリックさん、アッザさんはそのままでいいです。それの方が私はぐっすり眠れます。」

「リゼッター、そんなこと言わないで」

「はーい、そしたらみんな明日も早いからもう寝ようか」

「「「はーい」」」

回復させたヤーを含め、それぞれ寝床に戻る。アッザは一人たき火の近くで星を眺める続けていた。

「リゼッター、ゆるしてー、浮気はしてないわー」


当分の間、アッザの懺悔は続いた。


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