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王都への道のり~焚火を囲んで

ボっ!聖なる灯が生まれた。


「おおお、久々に遠征でデリックのキャンプファイヤーをみるといいね~。」

「本当です。なんか、とても心温まります。」

「リゼッタ~、そしたらあたしが残りの体を温めようか~、グフフフフフ、ゴフッ」

アッザのセクハラに強烈な肘鉄を見せるリゼッタ、たくましくなったな。というか、BBQをしたときとか何度も焚火は見ていただろうに。


「パーティーの最初の頃を思い出すな。」

「なぁ~デリック氏~、これは~、今回の焚火は今まで見たことないんだけどさ。」

「ああ、これかスウェディッシュトーチというんだ」

「スウェディッシュトーチ?なんだいそれ」

「名前の由来は知らないが、昔読んだ本にあったんだ。今回の旅は馬車だったから、荷物を多めに持てると思って、特別にな。」

今晩は色々話すネタも多いと思い、真ん中に大きな丸太で薪を作った。


「荷物がなんか関係あるの?そういえばデリック、なんか量が多かったわね。それにしても、いきなり途中の道端であんな大きい丸太を拾おうとするのはびっくりしたわよ」

「悪かったな、これにちょうど良い太さだったからさ、思わずな」

「あの~デリックさん、荷物が多いのはご飯は期待していいのでしょうか!」

「ああ、リゼッタ、もちろん!そのためにこのスウェディッシュトーチを用意したんだからな!」

「!!!胸が高鳴ります!!!」

「シャーーーーー」リゼッタの言葉にナルジャが反応する。

ナルジャは前に見せたものを覚えているのか、ご飯を待ちきれない様子だ。この人数だと大きなのが必要になるな。


「あら、大変、リゼッタ動悸が激しいならあたしが見てあげる。ほらテントに行って裸に・・・ごふっ」

「ほら遊んでないで、そこの小川に水を汲みに行ってきてくれ。」

そういうとアッザに大きな鍋と水袋を渡す。5人+1匹の量を作らなければならない。

「なによ、これにどれだけ水を入れるの」

「そうだな7分目ぐらいまで」

「え~、ヤダ、あたしそんな重いの持てない~」

「何を言ってるんだか、このメンバーで一番の怪力はアッザでしょ。あっ、て、いてててて、ごめん、ごめん」

ヤーの突っ込みに反応し、アッザがアイアンクローお見舞いする

「ナルジャ、申し訳ないんだが、二人がちゃんと水を汲んでくるか一緒に行ってくれ。」

「シャ~~」

やれやれといった感じでヤーとアッザの二人にナルジャがついていく。


「今日分かったことはやっぱり、俺たちは偏っているな。」キブリーがぼやく。

「そうですね。今私たちのパーティーには「斬撃」がいないです。」

リゼッタの一言に俺とキブリーは考えこむ。今の俺の武器はバトルピッケル、ハンマー部分は打撃だし、反対側は刺突になる、ヤーの盾槌による打撃、アッザは火属性と格闘つまりは打撃だ。キブリーは紆余曲折あったようで、弓を使っていた。当初は矢が消耗品のため、支出を渋っていたが、俺が抜けてから決定打を打つためには弓が一番良かったようだ。リゼッタもスリングショットを復活させていた。


攻撃の火力は問題ない。ただバリエーションが一つないのは危険だ。

「今日のジェルゼラチンは厳しかったです」

「ああ、中心の核を潰すにしても打撃ははじくし、矢だと届かない。」

「アッザのフレイムタンで焼き切るにしても熱を吸収するからフレイムタンが消え、燃やすにしても蒸発前に分裂して反撃してくるから危なかった。」

「あんな時、あのぶよぶよを切り崩して、核を晒してくれたり、核ごと斬ったりできるアタッカーがいると助かるんだけどな。」

モンスターの体質や形態によって有効攻撃が違う。今後活動範囲が広がっていくと、様々なモンスターに出会うだろうから、「斬撃」という攻撃方法がないのはかなり悩ましいところで。


「まぁ、ないものねだりをしても仕方がない。」

「デリックさんはこのままそのバトルピッケル何ですか?」

「いや、そういうわけではないんだけど、まだダジットとの調整がね。」

「それは斬撃系にはならないんですか?」

「う~ん」

実はそれも考えてはいた。もしパーティーに戻った時を考え、斬撃武器を持つのはどうかなと思ってもみたが、自分が剣を握る姿がどうしても想像できなくて、ダジットにすら、相談してはいなかった。


「デリック、悩まなくていいぞ、こっちの都合で変えて、お前自身のパフォーマンスが悪くなっても仕方がない。」

「でも、パーティーに合わせて、変化するのも仲間じゃないか?」

「それは確かにありがたい。だがな、お前は一度周りの、いや違うな、俺たちの変化に合わせて・・・」

「キブリー、それはもう良いよ。過ぎたことだ。それでも変化に合わせられないのも良くないことだ。というか、今までどうしていたんだ?」

「それは・・」


「ねぇ~ちょっと~、か弱い美女に重労働させておいて、3人は何はなしてるの~」

沢から水を汲んできた赤髪の美女が遠くから声を上げた。この世界の美女は5リットルぐらい入る水袋二つを平然と片手で持ち上げ、手を振りながら優雅に歩いて来るらしい。

「ちょっと、アッザ、少しはこっちも手伝えって」

「何言ってのよ、ヤー。あたしは水袋4つ持ってるのよ。あんたは水の入った鍋と水袋2つだけでしょ。しかも途中からナルジャに水袋はお願いしてるし、あ~、情けない。」

「あのね、お宅と違って、こっちは筋力ムキムキじゃないの、分かる?」

「はいはい、負け犬ね」

「何を~~」

「シャ~~~」

「ナルジャさんまで、ひどくない。」


たわいのないやり取り、それぞれ思い思いの言葉を口にする。街の外でこうしてみんなと焚火を囲むのは本当に久しぶりだ。昔は当たり前のような出来事がこの数年間なかったことで新鮮に感じる。パーティーを抜けていたときもキブリーの孤児院の庭で火を囲んでいたのに、街の外壁の外でやるとこうも印象が変わるのは不思議だ。そうか、さっきヤーはこれを言っていたのか。


今日の野営地は俺たちが住むボッサムからハポンに向かう中継地点としてよく冒険者だけが利用する場所。本来ならもっとボッサムに近い手前でしっかりと設備の整った休憩地点がある。ただそこは外商人や一般の旅人といった戦闘が不得意な人たちとその護衛である冒険者が利用する場所となっている。


王都までの道のりは長いため、非戦闘系の職に従事している人は旅の途中でモンスターに襲われることがある。彼らはその対策として冒険者などを雇って移動することが多い。都市を行き来する乗合馬車の業者はギルドと提携し、ギルドは定期的に冒険者を派遣したり、商人が護衛の依頼をギルドのボードに張り出したりする。彼らの目的は安全に街の行き来をすることであり、朝早くから夜遅くまでの移動はしない(たまにそういった依頼もあるけど)


大所帯で荷物も多い集団は、モンスターに発見されやすく、逃げることを優先すると追いかけまわされて、危険な状況になるかもしれないため、護衛の冒険者たちはよっぽどのことが無い限り撃退することがメインとなる。その為護衛の仕事はある程度の実績がないと受注することができない。


これが冒険者だけでの移動だと、制約をかけずに行動するため、移動距離に差が出るほか、モンスターは撃退せずとも逃げ切ってしまえばよいと割り切ることができる。それにわざわざ整備されたところに休まずとも蓄能型結界杭等でどこでもキャンプして野営することは可能だ。


だから冒険者だけのグループと商人等のグループでは進む距離や目的に違いがでて、結果、乗合馬車の業者等は快適に過ごせる休息地点を設置し、小さい村みたいな休息地を王都までに3つ用意していた。


それに対し冒険者はどこでも野営できるとはいえ、王都までの途中にテントが設営できるだけの平べったいところみたいな場所を見つけると、大概ほかの冒険者も似たような箇所に止まるようになり、いつの間にか王都までの間に、冒険者だけの利用する野営地ポイントが複数存在するようになった。その中の一つに今いるのだが、今晩は周りに他のパーティーもいないからこの野営地を俺たちが貸し切っている。


「う~ん」

「どうしたんだ?」

「いや、俺たちもそこまで急いでいるわけではないから、さっきの休息拠点【デスカンソ】で依頼をこなしても良かったなと思ってな。」

「キブリー、あんた、またお金が欲しかったの?」

「まぁな、クラウンを立ち上げるのに金はいくらあってもかまわない。」

キブリーの意見は最もだ。今回王都に行くことが決まり、馬車を借りて出発したのは王都での買い付けが目的で、かなり物を買いこむ予定だ。これからもクラウン立ち上げのため出費が嵩む。お金はいくらあったも足りないくらいだ。


「あの商人がデスカンソに留まってほしいっていった件?ごめんよ~、俺が身の上話するとか言っちゃったから気を遣わせた?」

「違う、違う、ヤー、その件じゃない。今日は静かにみんなで話そうと決めていたし、別件だよ。」

「ほかにありましたっけ?」

「いやちょっとな。盗み聞きした感じだし、あえて首を突っ込まなかったんだ。どうやら近くに賞金首モンスターが出たらしくてな。」

「なるほど、だからあの商人は俺たちを引き留めたかったのか。」

「ああ、それで護衛たち曰く、モンスターを仕留めれば、その商人が賞金以外にも報酬を出すっていう話だったんだ。」

「なるほど、つまり、キブリーは賞金首退治に立候補して、旅の途中で狩っても良かったかなと思ったのね。」

「ああ、そういうことだ。ただその場合、あの商人のところに引き渡しに行くことになるから、諦めたんだ。」

「まぁ、うまく賞金首に出くわせるかわからないし、余計なことはしないのに限るよ。」


みんな会話をしながら寝床を設営している間に、俺は夕餉の支度を進める。今晩の聖なる灯は丸太に切り込みをいれ真ん中に着火しやすいように着火剤を仕込み、火をつける。この豪快な焚き木の利点は丸太の上に物が置けるということ。今晩スウェディッストーチにしたのだ、豪快鍋料理を用意しよう。


轟々と燃える丸太を囲むように足を組み、水を張った鍋を設置すると乾燥させ塩気を利かせた魚の白身を入れ、沸騰したら自家製の魚の骨粉を入れて出汁を作る。これに持ってきたキノコや途中で買っった野菜を入れても十分おいしいのだが、さらに“大きい乾燥腸詰”を厚めにスライスし、投入してうまみを追加する。これにはスパイスも聞かせているので良い香が広がる。さらにここに大量のドライトマトを入れて、やわらかくなったトマトを潰せば、ベースが完成。あとはキノコやデスカンソで買った野菜を入れ、うまみたっぷりトマト鍋の出来上がり。締めは小さなパスタ麺を入れる予定だ。


「ああ~、いい香りです~~~」

「シャシャ~~~~」

リゼッタとナルジャの息が合う

「さてさて、デリック、今日は気合入れていたけど、何が特別なの?」

「ふっ、アッザ、これが見えないのか。」

「「「「!!!!」」」」

俺がおたまで鍋から掬ったブツを見て、全員の目が輝いた。実はこれは以前、キブリーのBBQでもあまりの人気に争奪戦が起きた代物だった。俺が長年の間研究し続けたこの腸詰は、生の時は焼いてもおいしい、乾燥させたら煮込みの出汁になるし、具として食べてもおいしい。とても便利な代物だ。


「マジか!デリック氏特製腸詰入りか!で、どのくらい入れたの?」

「ヤーよ、聞いて驚くな。今回は3本分だ。しかもダラを干した身も出汁に入れている」

「ゴクリっ、本当に豪勢だな。」

「待ちきれません。食べましょう」

「おう、締めもあるからスープは飲みすぎるなよ!」

「「「「は~い、いっただっきまーす」」」」

「シャシャッシャシャ~~」


聖なる灯の効果で暖かくなったとはいえ、夜は冷え込む感じがするのは、冬に差し掛かった季節だからだろうか。こういう時は鍋に限る。俺は全員各々の器に鍋をよそい、みんなホフホフしながら食べているのを焚火越しに見つめる。右に座り込み、ご飯を食べているナルジャの器に自分の器に入っていた腸詰のスライスを分けてあげると、いつもの鋭い目が柔らかい印象に変わり、嬉しそうに銀毛を揺らしがつがつ食べている。


「アッザさん、ナルジャさん、うらやましいです。」

「えっ、なに。」

「腸詰分けてもらってます」

「・・・・デリックにもらったら。」

腸詰スライスの数は限りがある。均等に分けたから、自分の取り分を渡すしかない。

「アッザさん、こういう時は好意のある相手にアピールするチャンスですよ」

「・・・・・リゼッタ」

「・・・・・アッザさん(にこっ)」うそだ、リゼッタが笑った

「(ドキンっ)・・・・・リゼッタ、大丈夫。あたしはあたしの魅力であなたを虜にして見せるわ。食べ物で釣るような真似しないわ」

「(ちっ)・・・アッザさん、私は別に食べ物で釣られないですよ。ただ好意は行動で伝わるという話で」

「リゼッタ、あたしはいつもあなたへ向けて行動しているわ、それが届いてないなんて・・・」

「「・・・・・」」

「よこす気はないのですね。」

「リゼッタ、これとそれと話は違うわ」

「・・・・・ヤーさん、ヤーさんは私に!っておかわりしているです」

「二人がいい感じになっているから、邪魔しちゃ悪いと思って。デリック、もうちょっと入れてくんない?」

「「はぁ~、何言ってんの!!」」

「アッザもリゼッタも落ち着け、まだあるじゃないか。」

「キブリーは黙ってて」

「落ち着け、ちゃんと残ってるから、う、うん。ああ、ナルジャもおかわりか。すぐよそうよ」

「ちょ、っちょと、急いで食べなくちゃ。」

「私も急いで食べるです。」

街だったら足りなくなったら、作り足せばよいが、旅の間は一回の食事量は管理されている。パーティーの時はいつも争奪戦だったな。


「だから落ち着けって、途中のデスカンソでも食材を買い足しているから量はまだあるよ」


みんな締めのパスタまで食べ終わり、満足した様子だった。


「いや~、おいしかった。それにこれでバフが付くっていうんだから、これはやばいでしょう。」

「そうね、確かに異常な力よね。あれ、今日はチェックしないの?」

「ああ、さすがに冒険者プレートを今回の旅の間持ち続けるのは危険極まりないし、紛失した際の出費が痛すぎるからな。」

本当なら毎回バフ効果はチェックしていきたいが、これからクラウンの経営に乗り出す俺たちがギルドからの信頼や金欠を起こしては元も子もない。その為、当分の間は街の中以外での検証は止めておくし、俺たちの小街区ができるまでは難しいだろうな。


「デリックの食事バフを調べていくことはこれからかなり重要だな。能力値の上昇次第でこなせる依頼や成功率も変わってくるだろうし」

「そうね、ただあたしは精神力や理力といった力が増えるのが有難いけど、ヤーは筋力や持久力、あとは耐久力とかが上がった方がいんじゃない?キブリーも同じか、自分の力を伸ばす感じでしょ~。伸ばしたい力はそれぞれだから、食事のバリエーションは増やせないの?」

「さすがに無理だな。旅で様々な食材持って歩くのは維持管理に限度がある。それに荷物量が増えるのはどうもな。」

「じゃぁ、自分の適正に合った料理は街から出発するときに食べる感じかな~」

「それもできるけど、効果は一定時間だけだな。後はまだ検証していない、俺以外が聖なる灯を使って、作った料理でもバフを得られるかだな。」

「ああ、さすがにデリックだけとなると、デリックは街でずっと料理をし続けることになってしまうしな。」

やっとみんなとまた冒険ができると思ったら、街から動けないクラウン専属料理人となってしまったら、俺のこれまでの頑張りの意味がなくなってしまう。


「デリックさん、いつでも実験協力します。ウェルカムです!」

「はははは、ありがとうリゼッタ。ただ材料費のこともあるからね、俺の金欠もあるからね。」

「キブリーさん、クラウンの重要案件です。資金援助は・・」

「あるわけない。必要以上の食事を支給できるほど余裕なんてない」

「アッザさん、行為を行動で・・・」

「リゼッタ、さっきそのやり取りはしたわよ。」

「ヤーさん、ヤーさんはお金余ってますよね。」

「いやいやいや、リゼッタ姫、俺お金ないよ~、貧乏、貧乏、というか姫は自分のお金を出資しないの?」

「私のお金はもちろん出します。ただ私とデリックさんのお金だけではたかが知れています。」

「おい、リゼッタ、俺は確定なのか。」

「はい、ご自身の力を解明するためですよ」

「いや、ただ、俺にだって、別に使いたいお金が」

「デリックさん、自分の真価を証明するためです!」

「いや、でも、ナルジャにかけるお金だって、」

「シャっ?、シャシャー」

自分のことを呼ばれて驚いたナルジャは俺に賛同してくれた

「ナルジャさん、いっぱいデリックさんのご飯が食べられますよ!」

「シャ!!!シャシャ~♪」

「ほら!」

速攻裏切られた。

「なぁ、ヤーなんか反論しないと全財産持ってかれるぞ。」

「・・・・・」

「ヤー、どうした?」

「ほら、ヤーさんだって、納得している」

「!いやいや、違うよ、姫。お金は出しませんよ。違う、違うよ。いや、ただね。お金に関しては、ちょっと思うところもあってね。」

「「「「????」」」」

「いや、今日はほら、俺の身の上を語るって言ってたからさ。ご飯も食べたし、そろそろ話そうかなって。お金も若干絡んでくるからさ。」

「そうなのか」

「ヤー、面白い話を期待してるわ」

「アッザさん、茶化しちゃだめです」

「ヤー、あんまり話したくなければ、無理に・・・」

キブリーに手をつきだし、それ以上の発言を制止した。

「大丈夫、そんなに、重い話じゃないんだ。」

「そうか?」

「ふぅ~」

ヤーが一呼吸置くと口を開いた。

「実は俺、貴族だったんだよ」

「「「「へっ??」」」」「シャぁ~~~~~」

ヤーの発言にパーティーメンバーは全員間抜けな声を上げ、ナルジャは盛大なあくびを上げた。今夜の話は長くなりそうだ。


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