みんなとの再会
「ぷっ、くっ、いや~デリックは大変だったわね」
「ぅふ、く、ああ、それにしてもいろいろ収穫もあったようでよかったな。もしその話が本当ならみんなで冒険者カードを借りて、確認してみよう。ふ、くふ」
「ぶはは、そうだな、それが本当ならデリックがうちのパーティーに復活ってことで、いいんじゃない!やったじゃん、あははh」
「もう、皆さん、デリックさんはけがをしているんです。これは仕方のないことなんです。笑うならしっかりと笑ってあげてください。」
「そうだ、リゼッタの言う通り、笑うなら笑え、って違う。そこは笑うなと諭すところ!」
「そうですか?だいぶ面白い、変態みたいな格好してますけど?」
その一言が我慢していたほかの旧パーティーメンバーの笑いの防波堤を決壊させた。今や俺の部屋は笑い声で大合唱が起きている。そんな中、心配そうに俺を見つめるナルジャが鼻先を俺の頬にこすりつけてくる。ごめんねというサインだ、いやナルジャが謝ることじゃない。こいつらが意地悪いだけだ。
全員への恨み節を抱くおれの姿はベッドに突っ伏し、うつぶせになり、おしりを上に突き出し、足を広げている。・・・・ああああああああああ、みじめだ!なんだ、くそ、でもこのポーズじゃないと股とケツが痛すぎて、いられないんだよ!
「いやー、でもマジ焦ったんだよ。ナルジャだけが、うちに来て、リゼッタを引っ張っていこうとしたときは」
ひとしきり笑い終えたヤーが話し始めた。奥ではまだアッザがわらっている。
「ああ、本当にな。お前の能力の仮説を聞いて、大丈夫かなと思ったんだ。それに最初の予定を聞いた時も俺たちからしたら今回は無謀じゃないかと話していたんだ。そこにナルジャだけが急いで飛び込んでくるもんだからさ。お前に何かあったと思って、急いでみんなで駆け付けたらさ、ベッドで、お前が、く、くくうううううう」
キブリー最後までこらえきれていないぞ、
「あー、おかしい。それにしてもこんだけの鉱石を持ってこれただけすごいわ。それにしっかり五体満足で帰ってきているしね。」
アッザがそう言いながら、にやにやしている。
「もう、皆さん、素直じゃないんですから、デリックさん。皆さんは本当に心配してたんですよ。もしもの時に備えて、デリックさんを助けに行けるように依頼を早くこなしたんですから。」
リゼッタは笑わずに真面目に答えてくれている。本当にやさしい子だ。
「みんなデリックさんが大けがしていると思って、慌ててきたんです。そしたら、デリックさんが変態みたいに腰を突き出しているから、笑っちゃっただけで、皆さんは本当に」
「リゼッタ、ありがとう、もうやめてくれ。」
これ以上は、フォロー(言葉の暴力)は、きつい。
俺はダンジョンを出た後、街へ急いで帰ることを選択した。今回の旅の功績を自慢したかったし、みんなに会って、俺の能力が解明されて、みんなとまたパーティーを組める可能性が見えてきたことを伝えたかった。
だからナルジャにまたがって、駆け抜けた。ただナルジャの背中には鞍はついてないため、ゴアゴアの銀毛と堅い銀鱗に何度も股やケツが当たるため、途中途中休憩をはさみ街に帰るつもりだった。
たが、途中でモンスターたちの群れを発見してしまった。方角は街のほうへ向かっている様子だった。時たまモンスターが群れを成して街を襲うことがある。小規模なスタンピードみたいなもので、街を破壊するまでもいかないにしても、対処を間違えば街が大きく被害を受けることになる。
しかも俺が発見したモンスターの群れはスカウト・ミジンだった。奴らの戦闘力は大したことはないくせして、くそったれな習性をもつことで知られている。奴らは女または子供を盗み自分たちの住処で奴隷にする。奴らの種族には雌がいないようで、連れ去られた女性に自分たちの子供を産ませる。また生まれるときは女性の腹を突き破って生まれてくるらしく、妊娠した女性は助からないらしい。
そして子供は労働力として働かせ、動かなくなったら食料にするらしい。奴らに連れ去られ、救出作戦で救い出されて生き残った子が証言した話だった。
昔の人々は自ら進んでモンスターを殲滅するようなことはなかったらしいが、当時の民衆は救出された子供の話を聞き、スカウト・ミジンというモンスターに激昂した。その怒りは収まることを知らず、その事実を知った王や貴族は人々の怒りを鎮めるため、大規模なスカウト・ミジン討伐作戦を決行した。
今でこそ墨泥樹に吸収されれば、モンスターは復活されてしまうことを知っているが、当時の人はスカウト・ミジンの大量虐殺をしても、数が減らないことに苦悩していたそうだ。不毛な殲滅作戦ではあったが、効果はあった。人に見つかればスカウト・ミジンは何度も何度も殺される、奴らにも痛みや恐怖があるらしく、何度も殺されることがいやになったのだろうか、徐々に人前に現れることはなくなり、今は人の生活圏には現れることはなくなった。
また墨泥樹を消滅させる技術を持った聖ギーア教によって、地上における墨泥樹の数も減り、すぐに奴らも復活することはなくなった。俺が生まれたころにはすでにスカウト・ミジンの巣は姿をなくし、訓練生時に勉強するモンターの1種になっていた。ただ種の繁殖のためか、たまに街を襲い、人を攫い、逃亡する。これが成功するとスカウト・ミジンがまた巣を作り始めるため、殲滅する必要がある。筋肉変態教師が口を酸っぱくして話していたのを思い出す。
どうやら連中はまだ俺とナルジャに気が付いてないらしい。総勢で30数体、まだ街まで1日以上の距離がある。俺一人では対処しきれないが、街に先に注意喚起ができればすぐに冒険者が派遣され、殲滅できるだろう。
奴らも人の生活圏が近いのを察したのか、奴らの特殊能力である人へ化ける準備を始めているようだ。人に化けるといっても完ぺきではない、だから人の出来損ないのようではあるが、遠目では判別しづらい。「人」「未満」だから「未人」とつけられたらしい。それ以外にも人を攫うために特化した能力もあるらしい。
まだ街から1日以上ある、俺一人では対処しきれない。ここで俺がとるべき行動は・・・・少しでも早く街に行くこと。俺は覚悟を決め、休憩することをあきらめ、ナルジャの背に乗り、走り続けた。
ナルジャに猛スピードで街まで行くよう命令した。ナルジャは俺を乗せていたから、力をセーブしていたのだろう、今は風と一緒に駆け抜ける感じがする。本来なら、気持ちがいいのだろうが、こっちは気持ちよさを感じる余裕がなく、必至だった。すごい振動だ。最短距離を取るため、険しい道を行く。ちょっと前までダンジョンでグロッキーになっていたのが嘘のようだ。
重い荷物を背負い、何とかしがみつき、ナルジャと接している股やケツがこすれたり、たたきつけられたり。本当にもげるのではという痛みに耐えながら、街の外壁が視界に入ったときには少し安堵した。すぐさま門番に情報を伝え、街のギルドに情報が伝わり、緊急クエストが発令されたようだった。
俺は役目を終えたと思い、ナルジャに乗ったまま自分の寝床に戻り、ベッドに乗ろうとした瞬間、声にもならない激痛が走った。そう股やケツの皮が完全にずり剝けていたのだ。そして一番痛みのない体勢をとってベッドに沈み、ナルジャにリゼッタを連れてくるようお願いし、みんなが駆けつけて笑われ者となった。
「子供たちにもしものことがあったらと思うと、、、デリックのおかげで、街の安全を守れたのは確かだ。」キブリーは孤児院の兄弟たちのことを思い想像したのだろう、顔が険しい。
「俺たちも緊急クエストに参加しようかと思ってたんけど、この緊急クエストの発信源がデリックだっていうし、ナルジャだけが来るし、しかもリゼッタだけ引っ張っていこうとするから、もしかして無茶して、街に知らせに戻ってきたかと思って本当に焦ったのよ。」
ヤーの本心はうれしいんだが、如何せんさっきの爆笑は気に入らない。
「本当、女の子たちがさらわれていたかとデリックの功績は大きいわ。面白いものを見せてくれたことも含めて、ありがと!」
アッザ、、、、お前は、、、、、
「はい、もうそんな変態さんの恰好をしなくても良いはずですよ。」
そういうとリゼッタの施術が終わったらしい。彼女の癒しの力で鉄やすりで削られたような股と尻が元通りになっていた。不通に座っても問題ない。
「リゼッタ、ありがとう。さて、お前ら、散々笑ってくれたな!!!」
怒気を高めていうと、笑っていた3人はすぐさま身構えた。が、そんな3人に対して
「まぁ、そんなことはどうでもいいさ。それより、俺の力のことについて改めて説明するぞ」
そう、そんなことはどうでもいいのさ、今後も笑いの種にしてくれて構わない。それよりも俺がまたみんなと一緒に冒険に行けるかも知らない、その可能性を伝えたい方が勝った。
もちろん、新たにわかった力がみんなにとって価値のないものだとしたら、その時はあきらめるしか仕方がない。けど・・・
一通りの仮説を説明し終えると
「なるほどな~、聖なる灯の性質はそんなにあったか、確かに言われてみればですよ、デリックがキャンプファイヤーしなくなった時期とうちらが勢いを無くした時期は重なりますし、辻褄が合う。」
「そうね、確かにそんなに身体強化がされるのであれば、あたしたちがルーキーだったのに快進撃を続けられたことにも納得がいくわね。」
「もしそれが本当ならデリックさんの料理をモリモリ食べればまた敵を倒せるようになるかもしれません!」
3人とも俺の話を信じてくれた、そしてプラスに思ってくれているのがうれしかった。ただ一人キブリーだけは考え込んでいる。リーダーとして冷静に考えているんだろう。当然か、実際にみんな強化されたところを冒険者カードで確認してないし・・・・
「そしたら、ギルドに行って、俺たちの拠点の図面を変更しないといけないな。ヤー、ギルドに図面を提出しに行ったの何時だったっけ?もう話が進んでしまっているかな?今からでもやり直しが間に合うか、確認行ってくれるか」
「はいよ~、了解。」
「アッザとリゼッタは手分けして、ほかのメンバーに事情を説明してくれ。設計図の修正が入るから、立ち上げには時間がかかることと、改めて全体の会議をするからそのことも併せてよろしく伝えてくれ。」
「はい」
「は~い」
「デリックは俺と拠点図面を見直しするぞ、お前の力を生かせるように設計し直すとして、なんかお前は要望があるか?」
「・・・・・・・・」
「デリック、どうした?」
「デリック?」
「どうしたんですか、まだどこか痛みますか?」
「きこえてる~?」
「いや、いろいろ突っ込みたいところがあって。」
「なんだ?あまり時間がないから手短に頼む」
キブリーが神妙な顔で聞いてきた。俺が状況を呑み込めてないことを察してくれているようだ。
「まず、お前たちは冒険者クラウンの申請が受理されたのか?」
「ああ、お前には伝えていなかったけどな。実は少し前に城塞都市の王族とギルド側から打診があってな。お前にはプレッシャーになるかと思って言わなかったんだ。」
「そうなのか、すごいな。みんな頑張ったんだな。でも大変なんじゃ」
「だろ~、俺たちも正直ビビったんだけどさ、やっぱり受けるしかないっしょ。」
ヤーの能天気さがこんな時に発揮されるとは。
「それでまずこの街の北東部で俺たちの冒険者クラウンの小街区を作ることになったんだが、デリックの力をフル活用したものに変えたほうが得策だと、今判断して相談しているんだが、これで分かったか。」
「あれ、ちょっとまって、私たちの拠点の構造を変えるなら私の要望とかはどうなるの?」
「アッザの?ああ、風呂屋とかの話か。そこはいったんリセットしよう。俺の孤児院とかの話もなかったことにして考え直すから」
「えええええ」
「アッザさん、わがままはいけません」
「リゼッタ~~~」
「なぁ、俺の言った話を全部信じてくれているのか?確認もしてないのに?」
「な~んだ、引っかかってたのはそこのところ?」ヤーが苦笑する
「何をいまさら言っているんだ、デリックが俺たちに嘘を言うわけないだろ」
「そこがデリックのいいところじゃない。ということで私のパラダイスはちゃんと考慮してよね。」
「アッザさん。だめですよ。でも、デリックさんが本当に戻ってこられてうれしいです。」
ああ、すごく、、うれしい、、、
「まぁ、もともとデリックに聖なる灯である程度守ってもらうように設計はしてたから、そこまで大きな変更は必要ないと思うが。」キブリーはやっぱりリーダーだ
「それもデリックがいなくなったら、オジャンになるところだったのよ。だからみんな、デリックが今回の旅に出るときは本当に心配してたんだからね。」アッザも根っこではいちばんやさしい。
「本当、この設計図を描いたときはデリックをどう説得するか悩んでもいたんだぜ。デリックのことだから絶対に素直に参加してくれないだろうって。でもさ、最後は丸く収まってよかったよ。」ヤーもいろいろ考え込むところは変わってないな。
「そうだ、皆さんまだデリックさんに言ってないですよ。」リゼッタは何気ないことにすぐ気が付く
全員が気付いたように顔を見合わせ、俺に向かって
「「「「デリック、おかえり」」」」
あああああ
「ただいま」
自然と俺の中から熱いものを感じた。自分の無力さを知り、身を引いて、パーティーから離れ、それでもこのメンバーでもう一度夢が見たくて、いろいろ模索していた。みんなとの関係が切れるのが嫌で、みんなには必要ないであろう協力もしてきた。自分の生まれ育った場所、血のつながった人たちとの縁をあっさり切った俺なのに。
どんどん新人の冒険者に追い抜かれる中、自分の可能性を信じ、隠れたる力のことをいろいろ調べて、自分に足りないものを埋めて。それがやっと実を結んだんだ。俺はやっともう一度このパーティーにもどることができたんだ。
どうやら俺の雰囲気が伝染してしまったのか、みんながしんみりしてしまった。
「さぁ、もういいだろう!これから馬鹿みたいに忙しくなるんだからな」
キブリーが仕切り直していった。
「ああ、そうだな。ありがとう!待たせてしまった分、頑張るよ」
「それじゃ、ひとっ走りしてきますかね。すぐに設計図持ってくるさ。」そういうとヤーがさっそうと飛び出していった。
「リゼッタ、あたしたちも行くよ。緊急クエストに出てしまっているメンバー以外ならたぶん酒場にいるでしょ?」
「デリックさん、落ち着いたらおいしいご飯を期待しています!」リゼッタの目が期待にあふれていた。
「ああ、腕によりをかけるさ。二人ともありがとう!」
アッザは軽く手で挨拶を、リゼッタはこちらを見てお辞儀しながら、出ていった。
「さて俺たちはヤーの設計図が来るまでの間、大体の拠点説明と聖なる灯の能力の詳細を詰めるとするか」
「ああ、そうだな。その前にタジットに話に行っていいか?」
「ああ、それもそうだな。ヤーとは入れ違いにならないよう扉に置手紙だけ残していくか。」
そういうと今まで黙って俺たちのやり取りを聞いていたナルジャが頭を足にこすりつけてきた。
「ん、ああ、そうだな、ナルジャは走りっぱなしだったな。簡単なご飯を用意しておくからそれを食べながら、休んでてくれ。留守番ともしヤーが来たら、テーブルにある手紙を示してくれ。できるか?」
「シャーーーー」ナルジャは理解したのか元気よく返事をした。
「デリック、そしたら、俺たちも行くか」
「ああ」
こうして俺は再びパーティーに戻った。




