133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 6
期待に胸を膨らませるフェアリーたちは3人を見渡し、ローズマリーがヘラさんに聞く。
「ヘラたちはこれがなんの花か分かるの?」
「ええ、特徴的な花と葉っぱ。樹木の大きさ。たっぷりの花の蜜が採取できる。となれば、これはきっと」
「「「「「きっと!?」」」」」
含み笑いをしたヘラさんがたっぷりと時間をかけて間を置き、人差し指を立ててどや顔を炸裂させた。
「バナナの木だわ!」
「「「「「バナナの木ッ!」」」」」
なんだか分からないが、分からない中で驚き、どんなものなのかを知りたくてわくわくしてどきどきした表情を見せた。白雲は固唾を飲み、決意したように表情を固めてヘラさんに問う。
「バナナの木……とは、どういった木なのですか?」
「バナナの木っていうのはね、あったかい地域に成る樹木なの。大きく育ち、大きな葉っぱをつけ、たくさんの花からたっぷりの蜜を作り、たっくさんの甘くておいしい果実をつける素敵な樹木なの」
「なんて素敵な樹木なんだ。はっ! そういえば、アーディにもらったドライフルーツがバナナだったはず。おいしかったから、もう全部食べちゃった……」
「そう! それがバナナの実よ。長細くて黄色い皮に包まれた真っ白い実なの。花をつけてしばらくしたら実が成って熟すから、半年くらいで採取できるかもね」
「おぉーっ! 半年。半年先の楽しみが増えてしまった♪」
だいぶ気の長い楽しみな気もするが、半年先の楽しみにわくわくして頬を染められる彼女たちの純心さが眩しい。半年経ったらメリアローザに再来してフェアリーたちと一緒にバナナ採取がしたい。
「ルクス、半年先の予定、空いてるよね?」
「空いてるもなにも、まだ何も考えてないよ。フェアリーと一緒にバナナ採取ね。はいはい」
生返事したルクスに全員が振り返った。
『私も、俺も、自分も、フェアリーと一緒に果実採取に行きたい』
無言の喝采がルクスに襲い掛かる。
「全員、参加……ね。もぉーう! やればいいんでしょ、やればっ!」
「「「「「ありがとうっ!」」」」」
「ワープの魔法が使える人間はみんなから頼りにされていいね」
「こんなはずじゃなかったのにぃ~っ!」
泣きわめく末妹には悪いが、フェアリーと一緒にいられるきっかけを失うわけにはいかない。
私の嫌味にレーレィさんが反応した。彼女も同じ台詞を言う。
「そうよねえ。ワープの魔法が使える人間は頼りにされていいよねえ?」
「あたしにワープの魔法を使え、と。フェアリーたちと一緒にバナナ採取させろ、と。はいはい」
「ふっふふふ~♪ さっすが我が娘よ~♪」
楽しむ母親に対して、娘はやれやれと肩を落とす。ワープの魔法って超難易度の高い極大魔法のはずなんだけど。そんなに簡単に使用者が見つかるとは思えないんだけど……まぁいいか。




