133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 4
眼福したところで朝食を再開しよう。キノコのマリネは秋に採れるキノコがたっぷり。クアトロパニーニはサーモン、チーズ、ひき肉のパテ、カリカリベーコンの四種類。特徴的な波型の焼き目と噛み応えのあるバンズのパニーニを四種の味で楽しめる。
ひとつひとつが小さく見えるも、量が多くて満腹感があった。意外とお腹いっぱいになる。
キキちゃんもお腹いっぱいになったらしく、お腹をさすって深呼吸をした。
「はふーっ。お腹いっぱいになっちゃった。ふわぁ~、やっぱりすみれさんのふわとろオムレツはおいしいなあ~♪」
「本当においしかったね。一流ホテルの朝食みたいだった。キキちゃんはいっつもこんな朝食を食べるの?」
「うん! すみれさんの料理は全部おいしいから大好き。キキもすみれさんが作るオムレツみたいにふわとろオムレツが作れるように頑張ってるの」
「そうなんだ。キキちゃんは努力家なんだね。キキちゃんの今日の予定は?」
「キキはねー、明日にはグレンツェンに戻るから、今日はソフィアさんと一緒にいたいなー。メリアローザのことも案内したい」
「ひゃ~♪ ぜひともよろしくお願いします」
喜んで頭を下げるも、シェリーさんからまさかまさかの宣告がなされる。
「ソフィアとフィーアはダンジョンで戦闘だ」
「え? フィーアはともかく、なぜ私が?」
「侍女じゃなくて姫様の護衛として雇ってほしいんだろ? 全力の実力を見ておきたい」
「あっ…………」
いかん。そうだった。侍女をやりたくなくて護衛でって言ったんだった。でもあとで侍女として再雇用ってことで話しがついたはず。私の戦闘力を見ておく必要はないのでは?
「侍女での再雇用ということなので、私の戦闘力を見ておく必要はないのではないでしょうか」
「一般事務ならな。でも姫様の侍女となればそうもいかん。しかもそれが戦える人間となればなおさら。私と一対一で勝てる人間ならなおのこと」
「ん、んんーー……わかりましたあ……」
どうやらシェリーさんと戦った時、彼女は八百長でなく途中から本気で戦ってたらしい。
私が侍女を辞めると言うと、姫様が駄々をこねて『シェリー騎士団長に勝てたら侍女を辞めることを許します』というものだから、戦わざるをえなかった。
そしてその時既に退職願が受理されてたから、シェリー騎士団長は負けるしかなかった。
ベルン騎士団がいくら対魔獣戦を想定した部隊であり育成方針であるとはいえ、記憶に間違いなければシェリーさんは、一対一の剣闘士戦で全戦無敗の戦乙女。ライラさんとだけは引き分けた世界屈指の防御力の持ち主。私程度では本気のシェリーさんに敵うはずがない。
うん、やっぱりシェリーさんは八百長をした。
そのことに関して憤りもなにもない。状況的に私が勝つしかなかったからだ。
それはさておき、墓穴を掘った私はフェアリーとの触れ合いを後回しにされてしまった。残念。




