異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 70
どうやら小さな子の前でする話しではないらしいので、お風呂上りに話しの続きをしようということになりました。
温泉プリンもおいしかったし、二人も仲直りできそうだし、素晴らしい入浴になりましたな。
着替え部屋に戻ろうとした時、余った温泉饅頭を持ったペーシェさんがお盆を持ってやってきた。
「お饅頭が余ったから、あとでみんなで食べましょー♪ これめっちゃおいしいですよ! 緑茶の饅頭とかないかなあ」
「お茶っ葉を細かく砕いた茶葉を餡子に練り込むんだったら簡単にできるよ。今度みんなでお饅頭作りする?」
「いいねー。いろんなお饅頭を作りたいねー」
お話ししながら歩いていると、ペーシェさんがすっ転んでしまった。その拍子に前を歩くシャルロッテ姫様が尻もちをつきそうになり、シェリーさんに腕を引っ張られる形で救われる。
ペーシェさんの持っていたお盆の上に積まれた抹茶の饅頭の上に姫様のお尻がきた。危うく押し潰してしまうところだった。間一髪の事態にペーシェさんは安堵の溜息をつく。
シェリーさんのファインプレーに感謝です。
「あっぶねー。危うく抹茶饅頭が●●こになるところだったー」
「ペーシェさん、それは言わないで。お饅頭が食べられなくなるから」
「ごめん。つい。ほんとに。すみません」
ペーシェさんの発言にソフィアさんと姫様のケンカの内容を知るシェリーさんとヤヤちゃんが顔面蒼白。ついでにフラッシュバックを起こしたソフィアさんの息が止まる。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああッ!」
途端、姫様はとても高貴な生まれとは思えない叫び声をあげた。どうやらなにかを思い出してしまったようだ。
顔色を七色に変色させ、今にもぶっ倒れそうな過呼吸で体をふらふらと揺らす。
事態を重く見たヘラさんとローザさんがすぐさまかけつけて応急処置を施した。
「しばらくは安静にさせてあげて。ちょっとのぼせたのかもしれないから」
事情を知らないヘラさんは長湯が原因ではないかと見た。
ローザさんの見解は違う。
「ペーシェが汚いからショックで寝込んでしまったみたいです。とりあえず、ペーシェは黙って饅頭を食べてなさい」
「はい。すみません」
これにはさすがのペーシェさんも反論しない。墓穴を掘るのが目に見えてるから。露天風呂二階の休憩室に移動して、ベランダに続く扉を開ける。涼しい風が心地よく吹き抜け、空には満天の星空が輝く。
姫様の容体はどうだろう。心配するキキちゃんとヤヤちゃん、リィリィちゃんがコーヒー牛乳を持って現れた。
「シャルロッテ姫様、大丈夫ですか? コーヒー牛乳をここに置いておきますね」
「ありがとうございます。でも悪いのはわたくしなんです。いくら緊急事態だったとはいえ、ソフィアにわたくしの●●●をテレポートで処理させただなんて。しかも直接指で触れさせて」
「「「――――――――え?」」」
なるほど。どうやら姫様は酔ってるうえにのぼせてらっしゃるようだ。
子供たち3人は朦朧とする意識の中を泳ぐ姫様から音もなく、消えるように立ち去って行った。
代わりに近づくソフィアさんとシェリーさんの視線が、まるでクズか●ん●を見るかのような目でいる。
ほろ酔いうつらうつらの姫様はコーヒー牛乳を飲んでほっこりした。
ほっこりしてる場合ではありませんよっ!




