異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 59
なんで本当のことを教えてくれなかったんだ、という不満げな顔をするシェリーさんとは正反対に、サンジェルマンさんは陽気な口調で、感動すら覚えるといった様子を見せる。
「いやー、まさか僕たちが作ったシステムをいとも簡単にすり抜けちゃうなんて凄いなあ。全く気付かなかったよ。それはさておき、どうして隠すようなことをしたんだい? ベルン騎士団は個人に適した武具の選定や、仲間とのチームワークを鑑みた性格診断、大人数でのチームか、少数精鋭か、はたまた個人で動いたほうがその人の性格に合うかどうか、そういった諸々を分析して部隊編成を行うことで、効率よく成果を最大化することを目指している。フィーアくんの評価からしてこれらに反するものではないことは理解しているが、できれば本当の君を教えてほしいな」
「うっ……それは…………」
フィーアさんの表情と髪から光が失われてしまった。フォローされたとはいえ罪悪感が胸を締め付ける。逡巡して、フィーアさんは本当のことを話しはじめる。
「実は、ガントレットをつけて戦うと感情が抑えられなくなってしまって、それを見られたくなかったんです。最近は感情のコントロールを意識して成長したので、本気で戦う時も感情のコントロールができるようになりましたが……」
シェリーさんとサンジェルマンさんは納得してうなずく。
騎士団長はフィーアさんの言葉を聞いて右手でサムズアップを作った。
「フィーアの事情は理解した。感情のコントロールができるようになったなら問題ないな。一応、全力で戦うフィーアを見てみたい。ダンジョンに登ってモンスターをひと狩り行こうか」
「シェリーさん、もしかしてけっこう酔ってます?」
好戦的なシェリーさんを見たフィーアさんの頬に冷や汗が流れる。
保守的で温厚。防御専心を貫く護国の要がモンスターを狩りに行こうと誘った。普段の騎士団長からは絶対に出てこない発言にフィーアさんはたじたじである。
しかし真面目な騎士団長が冗談を言うはずがないことを知るフィーアさんは、シェリーさんの言葉を聞いて硬直する。
「無論、本気だ。フィーアも知ってると思うが、ソフィアが姫様の侍女を辞めるとなった時に姫様の無茶振りでソフィアと戦わされてな。ソフィアが負けたら侍女を辞めることを止めるってやつだ。そもそもソフィアの雇用主は国王様で、国王様は辞表を受け入れてるからどうしようもなかったんだが……。で、いい感じの流れでソフィアに負けようと思ったんだが、サシの勝負でガチで負けたんだ。一般人と思ったソフィアがアレなら、普段から鍛えてるフィーアの実力がどれほどのものなのか、見ておきたくてな。ベルンに帰ってみんなに見てもらうより、ここで私たちにだけ公開するほうがフィーアの性格に合ってるんじゃないか?」
「さ、さすが騎士団長。あたしのプロフィールまでご存じとは恐れいります」
「ライラさんに熱弁されてな。八つ当たり的に」
「あ、はい……」
なんだか分からないが、フィーアさんが騎士団を辞めることになってライラさんがぷんぷん丸になったみたい。




