異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 57
姫様の素っ頓狂な顔を見たソフィアさんは小さく吠えてキキちゃんたちのところへ席を移した。それを追う姫様の袖をフィーアさんが掴んで座らせる。
「姫様、落ち着いてください。ソフィアも心の底から姫様のことを嫌ってるわけじゃないんです。あたしもそうですが、帰らないつもりでベルンを出たんです。なので、戻るのはバツが悪いんですよ。姫様に懇願されたとしても。聞いてますよ。ソフィアが侍女を辞めるってなった時に超ゴネたんですよね」
「それはもう死ぬほどゴネましたよ! ソフィアと一緒にいたいのに、ソフィアが侍女を辞めるっていうんですもの!」
「姫様は本当にソフィアのことを好いてくださってるんですね。それにしてもどうしてそんなにソフィアと一緒にいたいんですか?」
「そんなのソフィアと一緒にいるのが楽しいからに決まってます!」
「でしたら、その素直な気持ちをそのまま伝えてあげてください。ソフィアもきっと喜びますよ」
「本当ですか!? それではさっそく」
「あ、でも今は時間を空けましょう。しばらくほとぼりが冷めるのを待つのも大事です」
「そ、そうですか? フィーアさんがそうおっしゃるなら。気を取り直してディナーを楽しむとしましょう♪」
フィーアさんの助言をもらったシャルロッテ姫様はお酒も入り、おいしい料理に目移りする。
しかしこの時、フィーアさんの空気読めない癖が災いして、ソフィアさんの心情と全く逆のことをしていたなんて誰にも分からなかった。
席を立ったソフィアさんは追いかけてきて欲しかったのだ。
彼女は追いかけられたのち、シャルロッテ姫様にもう一度懇願され、やれやれと言って侍女に戻る決意をしようと考えていた。
だけど、追ってくるどころかおいしそうに食事を始める姫様を見たソフィアさんは余計に意固地になる。
あれだけアプローチしてたのに、やっぱり花より団子ですか。
私のことを本気で思ってはいなかった。
ソフィアさんはそう思い込んでぷんすこふてくされる。実はソフィアさんはけっこうめんどくさい性格をしてるのだっ!
そうとも知らず、フィーアさんの言葉が正しいと信じた我々は、彼女の心を置き去りにして飲んで騒いで食べまくってしまった!
さぁ、どうなるんでしょうね!?




