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異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 54

 しまったと思って口を閉ざすと、ペーシェさんとレーレィさんが渋い顔を作る。だけどグリムさんはくすりと笑って私たちを安堵させてくれた。


「大丈夫です。残念ではありますが、私の姉妹は私と一緒に同棲する気がありませんから。ね、フィーア?」

「え? なになになんの話し?」


 隣に座って騎士団長に囲まれるフィーアさんに話しを振った。

 聞いてなかったみたいだからグリムさんが要点を伝える。


「私の姉妹は私と同棲してくれないから寂しいって話しをしてたんです」

「うっ…………グリムが悪いやつじゃないってのは分かってる。分かってるんだけど、その、なんていうか、ごめん無理」

「でしょうね。と、いうわけなんです。無駄な心配をしてるんです」

「無駄な心配、とはいったい?」

「ふふふ。女の子に秘密はつきもの、ということです」

「素敵!」


 ペーシェさんの感激を見たフィーアさんは青ざめて背中を向けてしまった。グリムさんの秘密とはいったい?

 でも秘密にしてることを暴こうとするだなんて失礼極まるので、どうせならロマンチックなミステリーにスポットライトを当てたいと思います。


「と、言うことで、実は前々から気になってたラプラス・ミステリーについて聞いてもいいですか?」

「突然私のほうに話しを振ってくるのか!」


 私の質問にペーシェさんも同意する。


「それ、実はあたしも気になります。ラムさんからしたら何百回と聞かれた質問かもですが」

「まあね。でもまぁ、ラプラスの家に生まれた宿命ってやつだから、もう諦めてるよ。結論から言おう、私にはわからん!」

「がーん!」

「ラプラス・ミステリーってなんですか?」


 改めて聞いたのは赤毛が素敵なフィーアさん。隣の席からやってきた。

 ラムさんは何百回としてきた話しを繰り返してくれる。


「ラプラス・ワイナリーは知ってるよね。うちの実家のワイン醸造所なんだけど、ワイン造りを始めたとされる起源が今から一万年前なの。でも少しおかしくて、ラプラス以外で最も古くワインを作り始めたとされるカフィって場所では約六千年前からこれまでの軌跡が辿れるんだけど、一万年前からと六千年前からの間の四千年間の軌跡が見つからないの。記録も残ってないし、手がかりは発掘されたワイン壺だけ。公式見解ではラプラスの土地だけで発展して、よそはよそで個別で発展したっていう説。でも地政学的には、ラプラスからカフィへの人の流動は証明されてる。だけどワイン造りをラプラスが独占したっていう記録もない。どうして他へ口伝されたり、技術供与されたりしなかったんだろう、って」

「ほへー。それはまた奇妙な話しですね。ワインは古くから最高の嗜好品。それを見逃すなんて古代の人類はできないと思いますが」

「そうなのよ。記録によると、どうもラプラス家を含む村の人たちはワイン造りをひた隠しにしてたみたい。村の中だけで楽しむっていうスタイル。余計な争いごとを嫌ったっていう説もあるけどね。それにおいしいワインと不味いワインと、わざわざ両方作ってたみたい。おいしいほうが村の中で、不味いワインは旅人に飲ませてよそ者を寄せ付けないようにしてたんだって」

「ますます謎ですね。旅人によくしたほうが村の利益になりそうなもんですけど」

「でも料理はちゃんとおいしかったらしいよ。ワインだけ、なぜか不味いものを出したんだって」

「ワインになにかしら特別な感情があったんですかね。そういえば、ラプラスがおいしいワインを作るってもてはやされたのってここ百年くらいじゃありませんでしたっけ。むしろよくそこまで隠し通せたもんですね。なにかしらの執念を感じます」


 違う。私がしたい話しはそこじゃない。隠し通した謎を考えるだなんてナンセンス。私はラプラスのワインが世に出た理由を語りたいのだ。


「ラプラスワインを隠そうとした謎も気になりますが、個人的にはラプラスワインが世に出たお話をしていただきたくっ!」

「言っとくけど、あれは創作だよ?」

「ががーんっ!」

「そんなにショックを受けられてもなあ……」

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