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異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 53

 ラムさんは米から作り、米の力を存分に発揮した吟醸の栓を抜いてグリムさんのコップに注ぐ。


「飲もう!」

「飲みましょうっ!」

「ほどほどに飲んでくださいっ!」


 ルクスさんの飲みっぷりを見て、ついつい老婆心が出てしまう。

 でも大丈夫。ラムさんとグリムさんは食と酒を楽しめる人。グリムさんは苦笑いをしてみせた。


「安心してください。料理はおいしく、お酒は楽しく、ですから。どこぞの末妹とは違います」


 ラムさんはぐい飲みを突き出して微笑む。


「そうそう。いくらお酒好きでも、彼女みたいな飲み方はしないって。っていうか、できないって……」

「それならいいんですが。あ、お注ぎします」

「ありがとう!」


 ラムさん、グリムさん、ペーシェさん、レーレィさんに注ぎ、最後にラムさんにお酌をしてもらって乾杯。すいっと飲んでぷはっと溜息が出る。お酒は強くないのでそこそこに。お米に故郷を思い出す私としては、米から作られるお酒は特別な味がする。

 サンマの塩焼きをほおばって、噛みしめるたびに幸せを感じた。嗚呼、なんて美しい秋なのだろう。

 ほんわかしてるとペーシェさんが楽しそうに笑って言った。


「すみれもグリムさんも、本当にいい顔をして食べるよね。見てるこっちまで幸せになっちゃうよ」

「そんな顔をしてた? でもそんな顔をしてたかも。お酒も料理もおいしくって、みんなと一緒で幸せで、本当に嬉しいな♪」

「私もすみれさんと同じです。メリアローザには初めて来ましたが、少なくとも、私はフレナグランのファンになりました。もっといろんな料理を食べたいです。しばらく滞在するのもいいかもしれませんね」

「ちょっ、グリムさん。必ずグレンツェンに帰ってきてくださいね。あたしの義姉になってください」

「そうですね。それもいいかもしれませんね」


 ついにグリムさんがその気になった!?

 ペーシェさんは喜ぶかと思いきや、彼女の誠実な部分が顔をのぞかせる。


「あっ! お酒を飲んでるのにこんなこと言ってすみません! 酔ってる間にこんなお願いするなんてモラル無いですよね」


 困惑するペーシェさんに、グリムさんはアルカイックスマイルで返す。


「いいえ、元々レーレィさんに相談されてました。それにもしも彼の伴侶になれなかったら、もう私には寄る辺もないので養子に入るのもいいかなって思ってたんです。一人で食べるご飯は、寂しいですから」

「グリムさん……」

「その気持ち、すっごくよく分かります! あ、でもグリムさんはソフィアさんとフィーアさんがベルンにいますよ――――あ、なんでもないです」


 いかん!

 こんなことを言って、もしもグリムさんがベルンに移住するなんて言い出したらペーシェさんとレーレィさんが悲しむ。なにより私もグリムさんと料理したいしご飯を一緒に食べたい。

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