異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 46
私の顔を見たルクスさんが、彼女がハイタッチをしない理由を教えてくれる。
「ごめんね。ティアは人より力が強いから物に触れられないの。握ったり叩いたりするとなんでも壊しちゃうから」
「そ、そうなんですか? それはご苦労されてるんですね。あ、そうだ。みなさん苦手な食べ物などありますか?」
聞くと、ティアさんは笑顔を向けて両手をひらひらさせる。
「気遣ってくれてありがとぅ。ティアは苦手な食べ物はないな。デーシィは?」
「わたくしはございません。グリムもルクスも苦手な食べ物はありませんよね?」
「私は無いよー」
「私もありません。フィーアとソフィアはどうですか?」
「あたしもないよ」
「私も。ところで、メリアローザにはフェアリーがいるって聞いたんだけど、ここにはいないのかな?」
「フェアリーはセチアさんちで寝てると思います。彼女たちは日の入りと共に眠り、日の出とともに起きる体質なので」
「そうなんだ。それじゃあ明日まで楽しみはおあずけだなあ。残念」
フェアリーという単語が聞こえた4人はいきなりそわそわし始めた。今日は会えないと聞いてがっくりとする。気のせいか、ソフィアさんの肩に乗ったシマエナガのゆきぽんも肩を落としたように見えた。
会話の流れを見た暁さんがソフィアさんに声をかける。
「久しぶり、あるいは初めましてと言ったほうがいいかな?」
「あっはは……。便宜上、初めましてでお願いします」
「了解した。ソフィアはメリアローザが初めてだよな。滞在するならルクスの家に泊まるだろうけど、さすがの大人数だろう。うちでよかったら宿を用意するけど、どうしようか」
「それはとても助かります。ルクスにつけておいて下さい♪」
「ちょっとなんか聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけどおー?」
「別にいいじゃん。うちに来た時はタダ飯食べてるんだから」
「ぐ、ぐぬぬ……。訪問する時はお酒の差し入れだってしてるじゃん」
「ほとんど自分で飲むくせに」
「うっ…………」
図星を突かれたルクスさんは黙りこくって話しを誤魔化そうとあたりをきょろきょろする。
すると、のれんの外からキキちゃんとヤヤちゃんたちが現れた。今日の午後は知り合いの農場でひよこたちと戯れるため、ある試験の練習のために出かけていたのだ。




