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異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 41

 ドラゴンテイルの領内。職人の多くが働く工房が集う職人街は活気に満ち溢れている。

 鍛造工房。鋳造工房。機織り。桶屋などなど、メリアローザの生活を支える人々が行きかう。


「印象としては鉄関連の職人が多いのかな。そこかしこから金属音がする」


 呟くと、アルマが振り返って両袖を大きく広げた。


「おっしゃる通り。龍の職人さんのほとんどは鉄鋼・鍛造関連です。木工職人や染色など繊維関係の職人さんは猫の領内であることが多いですね。刀身は龍で、その他装飾品などは猫で作られます。ちなみに、華恋さんを唯一相手にしてくれる宝飾加工の職人さんは龍にいます」

「唯一相手にしてくれる……」


 ペーシェがアルマの言葉を切り取って復唱した。無茶振りクイーンの名を欲しいままにする彼女の相手ができる職人さん。名前は忘れた。一人だけいるっていうのは覚えてる。一人しかいないっていうのもよく覚えてる。

 雑談をしながら歩く。しばらくして、一軒の家屋の前でアルマが足を止めた。


「こちらの工房に華恋さんたちがいるらしいです。なんの工房なのかはアルマは知りません。ミレナさんがいるので絡繰り工房でしょうか」


 扉を開くと、壁一面に戸棚がびっしりと張り付いた部屋だった。真ん中には作業台が置いてあり、彼らはそこにいた。華恋、ミレナさん、アーディさん、宝飾職人というディザさんの4人が宝石を囲って話しをしてる。

 話しというより、なにかよからぬ儀式をしてるようにしか見えない。


「こんにちはー。なにやってるんですかー? もしや、精霊召喚ですか!? 華恋さん、ついに精霊召喚デビューですか!?」

「残念だけど違うよ。水晶に魔法陣を刻む体験をしてるの。もしかしたら、ミレナさんやアーディさんみたいな技術者のほうが得意な分野かもしれないから」

「なるほど。で、どうでしたか? なんの魔法陣を刻んだんですか?」


 迫るアルマを華恋が制して止める。


「近い近い……。一応、ね。アルマから借りた宝石魔法に関する研究書を読んで、元々は護石としてルーンを刻むことが前提だったみたいだから、シンプルに家内安全のルーンに挑戦してみたんだけど……やっぱり難しいね。水晶の組成を知ってても、ルーンを滑り込ませることができても、定着させることが難しくて。私がやるとどうしてもはじき出されちゃう」

「それはおそらく魔力の練度が低いからだと思います。アルマもやってみましたけど、結構な練度の魔法陣でないとつるっと弾き出されちゃうんです。つるっと」

「たしかにそんな印象だった。ミレナさんとアーディさんはどうでしたか?」


 アルマのキラキラな瞳にあてられた二人は申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。


「俺は全くダメだ。魔力の練度も低いし、魔法陣の構成は理解できても鉱石の組成を知らないと魔法陣が入り込みもしない。ミレナさんはどうですか?」

「あたしも無理。魔力の練度もそうなんだけど、魔法陣の構成っていうのが慣れなくて難しい。水晶の構成は理解できるんだけど、水晶に入れた瞬間に魔法陣が(ほど)ける。全部理解しないと無理そうだな。残念」


 お手上げの二人を見て、サンジェルマンさんが手を挙げる。


「面白そうだね。ぜひとも僕に挑戦させてもらえないだろうか」

「もちろんです。サンジェルマンさんもぜひとも挑戦してみてください」


 歓び飛び跳ねるアルマが水晶をサンジェルマンさんに手渡す。


「浄化の魔法陣を水晶に込める実験をしています。攻撃系のレッサーマジックもいいんですが、フィアナさんの性格的に護摩系の魔法を込めたほうがフィアナさんのお株が上がりそうな気がします」

「そういう理由なの!? まあ、アルマくんは彼女の協力者だからね。それに彼女は心優しい性格だから、護摩の魔法は的確かもしれないね。よし、さっそく試してみよう」

「わくわく♪」


 わくわくが言葉に出てしまうほど、アルマの知的好奇心がほとばしる。

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