異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 33
捌いてもらった魚を陰干し。塩水にくぐらせ、加速術式を使って1日ほど干した状態に進めて水分を抜く。
薪を並べ、火を熾し、縄で結んだ魚を専用の吊るし台にひっかけて燻製を作る。
燻煙が食材に馴染むよう、あと1日干したら完成。サンジェルマンさんもラムさんも手際がいい。あっという間に鮮魚が干物になる。
シャングリラの館の前に干し魚がずらりと並ぶ。ここまで多いと壮観だ。どれもうまそうにできた。炙って焼いて、ご飯と一緒に食うとうまいんだよなあ。
燻製の煙の匂いのせいか、スイーツが焼ける匂いをかぎつけたのか、昼寝から目覚めた子供たちが見慣れない景色を前にして背伸びをする。
一番年下のキィアくんが指差してぴょんぴょん跳ねて聞いた。
「これ、焼いたらおいしいお魚さんだ! こんなにいっぱいどうしたの?」
「あたしたちがさっき獲ってきて作ったんだ。明日に食べごろになるから、みんなでおいしく食べてくれると嬉しいな」
「いいの? ありがとうっ!」
キィアくんの感謝の言葉を皮切りに、あとに続く子供たちからもありがとうとハグと握手をもらえた。サンジェルマンさんも、ラムさんも一様に笑顔でいる。
いやー、いいですなー。子供たちの笑顔には癒されますなー。
おいしいスイーツを前にしたら、彼らはどんな顔をするだろう。
「さ、みんな、中でメアリたちがスイーツを作ってる。顔と手を洗ってティーパーティーをしよう」
「「「「「やったーっ!」」」」」
スイーツが食べられると知った彼らは一目散に洗面台のある厨房へ走りだす。
欲望に忠実。だからこそ純粋。いやー、ほんと、見てて楽しいですわー。
「いやー、いいですねー。みんなかわいいですねー」
ほっこりするあたしの両隣のお二人さんもほっこりタイム。
妹と弟がほしいラムさんは頬を染めてエアハグをする。
「みんなちょーかわいいわあー♪ あーもーちょー抱きしめてー♪」
「よかったら僕の後輩を紹介するよ。君と相性のよさそうな男性がベルン騎士団とハイラックス軍にいるんだが、どうだろう」
「男ですかー。たしかに出会いはないですが、今はまだ仕事を軌道に乗せたいですね。バルは大丈夫なんですけど、ヘルシー路線で新規出店した新店舗の地盤を固めたいところなんです。もう少し、料理のレパートリーを増やしたくて模索中なんです。ターゲット、原価、満足度、その他もろもろの事情を考慮した料理。試行錯誤してるんですけど、なかなかどうして難しくって」
「さすがラムくんだ。努力家だね。もしもその時になったら声をかけてくれ。力になるよ」
「ありがとうございます。その時はぜひに」
なんかいきなり婚活が始まって終わったんだが。異世界ではこれが普通なのか?




