異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 31
「おおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!」
砂浜からは右を見ても左を見ても大海原。あたしは刀を構えて大上段から渾身の一撃を放ち、魚を獲るために海を割った。
モーセの奇跡よろしく、真っ二つに割れた海は滝のカーテンのように海水が流れ、海底にぶつかった海水の流れは潜り込むように海の中へ消えていく。
「いやー、久しぶりに本気の一撃を放ちました。さぁ、30分くらいで海が閉じるので、素早く回収しましょう!」
拓いた海底の道には、あたしが海を割って作った海流の流れのまま、海中からはじき出された魚たちで溢れかえる。魚で山盛りになるから簡単に取り放題だ。
さも当然のように物理法則を無視した奇跡を目の当たりにしたサンジェルマンさん、シェリーさん、ペーシェ、スカサハ、桜が目を丸くして立ちすくんだ。
シェリーさんは腕を組んで桜に疑問をぶつける。
「これ、おかしくない?」
普段から冷静な桜も呆気に取られ、言葉に溜息を混じらせた。
「暁さんは文字通りの人外ですが、ここまでやるとは知りませんでした」
続いてスカサハが冷や汗を流す。
「暁さんが規格外だということは理解してました。しかし、まさかここまでとは……」
スカサハの隣でペーシェがいらんことを言う。
「やべー。暁さん一人で世界滅ぼせそー」
プラス思考を忘れないサンジェルマンさんは、異世界間交流の折りに考えられる危険がひとつ減ったと喜んだ。
「彼女がいれば、異世界を侵略しようだなんて輩は出てこないだろう。安心だね」
「逆パターンが怖いんですけど。暁に限ってないでしょうが、彼女が侵略者になったら世界が終わりかねません。少なくとも、これを見たら異世界間交流が破綻するかもしれないので、今見たことは全員、忘れるように。あとでヘラさんを交えて暁にも伝えておく。行き過ぎた力はあるだけで脅威だ、と……」
「「「「たしかに」」」」
なんか4人で話してるようだ。きっと異世界の魚って言っても結構見慣れた姿形してんだなーっていうことでも話してるんだろう。




