異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 30
ひとまずフムスは3人に任せる。あたしはスイーツ作りを見学しよう。あえて言おう、見学する、と。作りはしない。
見学すると宣言したあたしに、すみれが料理仲間を増やそうと努力する。
「暁さんもスイーツ作りをしてみてはいかがですか? 具材はたくさん用意してもらったので、いろんな組み合わせで遊んでみましょう♪」
「おっとー。あたしにそれを求めるかー。具材を決めるまではやるよ。生地を乗せるのはすみれが代わりにやってくれ」
「へ? いいですけど、どうしてですか?」
「それは、だな……」
言葉を濁すと、代わりにセチアが代弁してくれる。
「暁は握力が強すぎて料理に不向きなんです。生地を捏ねるのも、力を入れすぎてクッキーにすらならなくなりました」
「まさかのオーバーミキシング。握力が強すぎると困ることもあるんですね」
「だからこそ、刀打ちができるんでしょうけど……」
そういうことにしておいてくれ。というわけで、あたしは笑って公言する。
「なので、あたしは食べるに徹する。よろしく!」
「かしこまりましたっ!」
「すみれさん、そこは『代わりに食材調達してきてください』でいいんですよ?」
「なにがいいのかさっぱり分からんのだが?」
しかしまぁ、眺めてるだけというのもバツが悪い。シャングリラには突然やってきて、いきなり、しかも二日連続でハティに無理を願い出た。食料調達くらいはやってやらねば女が廃るというもの。
仕方ない。魚でも獲ってくるか。森には獣の気配がないし。荷物持ちにサンジェルマンさんを借りよう。
「剣聖を荷物持ちにするか。さすが、暁」
シェリーさんにマジ顔でつっこまれてしまった。まずかったかな?
サンジェルマンさんはどうだろう。
「いやいや、全然大丈夫だよ。僕も見てばっかりだし、お役に立てるなら本望だ。荷物持ちでも魚釣りでもなんでも任せてほしい!」
「ありがとうございます。それでは台車を持ってきていただいて、魚を拾っていただけると助かります」
「魚を拾う……? なんだかわからないけど、わかった!」




