異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 27
さて、もふもふタイムを満喫したところで、本日のティーパーティーの準備を見に行こう。ポーラを抱きかかえたまま、あたしはシェリーさんとアルマを引き連れて厨房へ向かう。
3時のティーパーティーはシャングリラで。フェアリーたちが体得したスイーツを作るため、彼女たちは小麦を捏ねる。
シルヴァの見事な手さばきを見て、スイーツを勉強しようと並ぶ女子たちが真剣な眼差しをむけた。
わくわくするフェアリーがシルヴァの周囲をゆっくりとくるくる回る。目の前にやってきたバーニアにわくわくを共有してもらおう。
「これは何を作ってるんだ? 今朝作ったバクラヴァか?」
聞くと、バーニアは元気よくくるっと回って笑顔を見せてくれた。
「そうなのっ! 今、シルヴァが生地を作ってるところ。次はバーニアがしゅぱっとするからね! それとね、バクラヴァはスイーツにもなるんだけど、チーズとかひき肉とかを挟むとご飯にもなるんだって! パリパリの生地にとろとろのチーズ。うまうまなひき肉の炒め物を挟んで包んで食べるとすっごくおいしいんだって! すっごく楽しみだね!」
「それはとても楽しみだな。スイーツもご飯もどっちも作るのか?」
「そう! スイーツにはたっぷりのバターと、紅茶と、ドライフルーツを使うの!」
「それにチーズ! チーズも入れてみましょう!」
「「「「「…………………」」」」」
エリストリアは相変わらず、チーズを使うことに躊躇がない。あたしも、ラムさんも、ハティですらドン引きして言葉が出ない。
フェアリーたちだけは全肯定。基本的になんでも肯定的に受けとめる彼女たちは楽しく悩み、エリストリアに相談する。
「バターたっぷりの生地にチーズ。とってもおいしそう! それだけでもおいしそうだけど、ほかにもなにか入れたいな。チーズに合う食材と言えば……。エリストリアなら何を入れる?」
ローズマリーに聞かれ、エリストリアは当然のように即答する。
「それはもちろん、チーズだよっ!」
「「「「「ッ!?」」」」」
いや、だからチーズを入れるって言ったのは聞いたけど。
そう思ったあたしたちよりも理解力が高いローズマリーがわくわくと驚きを表情に出した。
「チーズを入れて、さらにチーズを入れるの!? 二種類のチーズの味を堪能できる。なんて贅沢なバクラヴァなんだ!」
「贅沢だよね~♪ 絶対においしいと思うっ!」
「「「「「ッッッ!?」」」」」
なんて発想してやがる…………ッ!
チーズ&チーズなんて、それもうチーズの味しかしないだろ!




