異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 23
少年少女たちは海と空を前に楽器を構える。ハティは両腕を優しく持ち上げて指揮の準備をした。
シャングリラの空に音と光のコンサートが開かれる。
音が弾けるたびに光の花が咲く。
音とリズムの発生をトリガーに自動的に花火の魔法が発動するように即興で魔法を作り変えた。
相変わらず、魔法に関してハティ以上の人間を見たことがない。魔法の出力然り、素質然り、技術然り。魔法を愛することについても。
魔法を愛することについてはアルマも負けてないがな♪
演奏と花火が終わって拍手の嵐が巻き起こる。
花火もそうだが、子供たちの演奏がうますぎる。完璧なオーケストラ。空に光の芸術。満点の星空の下で見たのなら、一生忘れられない夜になる。
直感したシェリーさんは即答した。
「全員採用ッ!」
「「「「「さいよう?」」」」」
よく分からない少年少女は頭の上にはてなマークを浮かべる。シェリーさんにしては珍しく話しの本質がない。大人には分かるが、スカウトの習慣がない彼らには理解が追いつかない。
話しが分かりそうなメアリが前へ出る。シェリーさんが彼女に説明した。
「結論から言うと、我らがベルンのためにみんなの力を、魔法と音楽を貸してほしい。どうだろうか?」
「それはもちろんです。ね、みんな?」
「「「「「もちろんっ!」」」」」
「ありがとう! 具体的なタイムスケジュールや内容は後日、一緒に相談しよう。みんなをベルンに招待するよ。無論、ベルン持ちでな」
「ベルン持ち、というのはどういう意味ですか?」
「んっ……ええと、旅費の心配はしなくていいってことだ。とはいえ、いきなりの依頼だし、知らない土地で演奏することになるから緊張するだろう。そのフォローも任せてくれ」
頼まれて、メアリは子供たちに振り返り、全員に問う。
「知らない土地での演奏だけど、魔法の花火。みんなを笑顔にできる。どうかな、みんな。どれも全部、ハティさんが世界にしてくれたこと。それを今度はわたくしたちができる。やってみませんか?」
「「「「「やるっ!」」」」」
「と、いうことです。なにとぞよろしくお願いします♪」
「こちらこそ♪」
固い握手を交わす二人の周囲で子供たちがお祭り騒ぎ。彼らの演奏が最高のロケーションで聞ける。最高じゃないか。これはオータムフェスティバルの楽しみがひとつ増えたな。




