異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 22
絶句するシェリーさんは彼女の圧に圧され、今年のオータムフェスティバルに関わる花火の打ち上げを依頼した。
これにて一件落着。安堵したあたしはフルーツティーをひと含みして溜息をもらす。
「いやー、よかったですね。このままハティの魔法の引き出しを開けまくりましょう。そこはあたしもよく知りません。アルマにも開けてもらいましょう」
「勢いのままオーケーしたが、花火を打ち上げる魔法ってあるのか?」
「え、そちらの世界ではポピュラーじゃないんですか?」
「いや、そんなものはない。ハティが使えるんじゃないか?」
「――――ま、なんとかなるでしょ。ハティ、フラワーフェスティバルで見た花火は覚えてるか?」
「覚えてる。夜空に花が咲いてきらきらだった。とっても綺麗だった!」
「あれを魔法で再現できるか?」
「できる」
即答!
なんて頼もしいのだろう。さすがハティだ。
善は急げ。念のためにもうひとつ聞いておこう。
「今、魔法で再現できるか?」
「わかった」
即答ッ!
即答して即、大海原に広がる青い空に光の花を咲かせる。
光だけだから音がない。花火というにはなんとも奇妙な光景。だけど、子供たちの心を振るわせるには十分だった。
「わあー♪ ひかりのお花がぱーって咲いた! すっごく綺麗!」
「みどりにきいろ、あかいろもある。ぱっぱっぱって、ひるのおほしさまみたいっ!」
「でも花火って夜に打ち上げるもんだろ? 昼間じゃあんまりよく見えないなあ」
「ライアン、そういうことは言わないの」
「でも音がないとちょっと変な感じ。そうだ。みんなで音を作ろう♪」
「「「「「音を作る!?」」」」」
常識が凝り固まった大人が声を揃えて驚いた。
音を作るとはこれいかに。子供たちの様子を見守ろう。




