異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 21
期待に胸を膨らませるシェリーさんの前で、やる気満々のハティたちに水を差そう。
間違えた。水じゃなくて釘を刺そう。
「ちょっと待ってシェリーさん! ハティ、お祭りの間ずっと打ち上げなくていいんだぞ?」
「そうなの?」
ハティは疑問符を浮かべる。
なぜ疑問符を浮かべるのか、常識人たちが疑問符を浮かべた。
話しを切り出したシェリーさんが疑問符を言葉にする。
「暁、それはどういう意味だ?」
「超簡単ですよ。ハティは言葉の通り、『お祭りの間』です」
「――――――――ッ! なん……だと…………ッ!?」
これの意味を理解した全員がハティに振り向く。
鼻息を荒くしてやる気満々の彼女に改めて聞いてみよう。
「お祭りの間ずっと、5日間ずっと打ち上げ続けなくていいんだぞ?」
「そうなの?」
「「「「「ッ!?」」」」」
こういうところなんだよなー。
超次元の魔法力があるもんだから、冗談抜きでなんでもできる。なんでもできるもんだから、なんでもやっちゃう。際限無しに。
こういう時こそあたしの出番というわけです。
「大事なのはハレとケだ。料理だっておいしくってもずっと同じものだと飽きるだろ?」
「私は大丈夫!」
いかん。そうだった。料理の味以前に、彼女は誰かになにかしてもらえることを重視するんだった。例えが悪かったな。
「ハティはそうでもほかの人は違うだろ。ほら、アップルパイばっかり作ると飽きられるかもだから、わざわざ黝に頼んでパン作りを教わりに行ったって聞いたぞ。それってつまり、同じことばっかりだと飽きるかもって思ったからだろ?」
「エリストリアみたいにチーズばっかりだとみんなが嫌がる。アップルパイばっかりだとみんなが嫌がるかもしれないと思ってパンを教わりに行った」
「ッ!?」
これを聞いたエリストリアが絶望した表情で膝をついた。事実だし、愕然とする彼女にフォローを入れられないから無視しよう。彼女には申し訳ないけど。
「花火も同じだ。必要な時に必要なだけ打ち上げないと見飽きてしまうだろう。そこはまたシェリーさんたちと相談してやるといい。ハティの魔法は世界中の人々を笑顔にできる。あたしもオータムフェスティバルには参加しようと思ってるから、楽しみにしてるぞ♪」
「任せてっ!」
うさうさパンチを連打したゆきぽんよろしく、ハティは瞳をすっごくキラキラさせてシェリーさんを見る。




