異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 20
諭すも、全く話しを聞かない。さすがアルマ。だからこそアルマ。
あたしに反論するアルマの瞳が純粋すぎる。
「なに言ってるんですかっ!? 攻撃力があって広範囲で低燃費な魔法があれば、より多くの魔獣やモンスターを倒せるんですよっ! つまりそれは、魔獣に怯える人やメリアローザの国益にもなるんですよっ! ここで活躍せずにいつ活躍するんですかっ!」
「アルマに言われると、ただただ魔法をぶっぱなしたいだけにしか聞こえん」
「魔法をぶっぱなしたいんですよっ!」
「素直でよろしいッ!」
「ひとまず、ドラゴンライドを完璧に仕上げたら、昨日ハティさんが使った超魔法を使いこなせるように訓練しますっ!」
「うん、頑張れ。ベレッタもなにか言ってやってくれ。ハティとアルマに」
「えっ!? あ、はい!」
察しのいいベレッタはどちらに何を言ってほしいのかを理解した。前者はともかく、後者はなんて声をかけていいか分からない彼女はひとまずそのことを置いておいてハティに向き合う。
「医療術者からオートファジーの魔法が好評だっていう話しはわたしの耳にも聞こえてます。オートファジーの魔法を作ったバックグラウンドを聞いて、ハティさんってほんとに素敵だなって改めて尊敬しました。もしもほかに素敵な魔法があれば、わたしにも教えてほしいです」
「ん、んー…………♪」
めっちゃ照れてる!
しかも超嬉しそう!
このまま褒め倒せば折れるに違いないと確信したシェリーさんが畳みかける。しかもグレンツェン仕込みの褒め方で。
「そうだ。ハティもアルマみたいに魔法でみんなを笑顔にさせてみたら実感するんじゃないか? そうだな、例えば――――月末にベルンでモンスターカーレース、マジック・コンペティション、オータムフェスティバルとお祭りが立て続けにある。そこで花火を打ち上げてみないか? ハティの魔法で!」
「魔法で花火を打ち上げる?」
ハティはシェリーさんに提案され、空を見上げながらその時の景色を想像する。
星空にいろとりどりの光の花を咲かせる。それを見た人々が笑顔になる。子供たちにすごいって言ってもらえる。
そうなれば、彼女の答えはただひとつ。
「やるっ! お祭りの間ずっと打ち上げるっ!」
「お祭りの間ずっと!?」
モンスターカーレースが1日。マジック・コンペティションが1日。オータムフェスティバルが3日間。五夜の間、毎夜花火を打ち上げる。
否ッ!
否であるッ!
ハティに限ってあたしたちの常識が通用するはずがないッ!




