異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 19
言葉が詰まって、シェリーさんは深呼吸をして話しを続ける。
「ところで、かつてあったハティの相談事が気になるんだが、どんなことを相談されたんだ?」
おっと、そんなところが気になっちゃいますか。
それは言えないんだよね~。口止めされてるわけじゃないんだけど、ハティが世界規模の大風呂敷広げて宇宙規模の大嘘吐かせる提案したの、あたしなんだよね~。
と、言うわけで、真っ向からごまかそう!
シェリーさんに微笑んで、すぐに振り返ってハティを呼ぶ。
「おーい、ハティ。お前の魔法で世界をよくしたいってシェリーさんが言ってるんだけど、暇な時にレナトゥスに協力してやれないか?」
「ッ!?」
シェリーさんが超びっくりしてる。話しを聞く限り、シェリーさんたちレナトゥスはハティが一般人だから遠慮して勧誘を避けてきたみたい。あと、話しを聞いてもまともな回答が得られなかったから諦めた節もある。
そこであたしが仲介役になろうというわけです。無理やり繋げるって言ったほうが正しいかもだけど。
とにかく、シェリーさんたちが欲しがるカードを提案しよう。話しをそらす意味もあるけど、ハティにはもう少し自分の能力を披露してほしいもんです。必要に迫られないと魔法を使わないからな。能ある鷹は爪を隠すと言う。ハティは必要最低限に必要な時以外は爪を出さない。
出した時は一撃必殺だけど。
無意識にそれを理解してるのかもしれない。
しかし、誰かのためになると言われれば彼女は動く。かなり簡単に。
「私の魔法がみんなの役に立つ?」
「実際、オートファジーの魔法は医療現場で大好評って話しだぞ。な、リリィ」
リリィはオートファジーの名前が出ると声のほうに振り向き、名前を呼ばれてダッシュでかけよってきた。
おとなしい印象の小柄な少女が頬を染めて熱弁する。
「そうなんです! 今はまだ検証段階なんですけど、教えてくださったオートファジーの魔法は医療現場で効果が上がってきてます。短期間の検証でも明らかな有意性が確認できていて、これから中・長期の検証を重ねていくんですが、ベルンで有用性が確立できれば世界中に浸透していきますよ。なにより注目すべきは薬物投与の量を減らせるという点です。薬はメリットもありますがデメリットもあります。ですがオートファジーの魔法はその人の気持ちと行動次第で薬学的なデメリットを克服できます。人間の持つ自然回復能力を利用するので、効果が表れればメンタル的にもポジティブになる傾向があるんです。もちろん、場合によっては薬も併用するんですが、自然回復力を高めることで同時に免疫力も高くなるんです。薬のデメリットを抑えながらメリットを残せる。これは本当にすごいことなんです。もしももっともっと素敵な魔法を知ってるなら教えてほしいです! ハティさんの魔法なら、もっともっと多くの人を幸せにできるはずです! ご教授ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますっ!」
「えっと…………つまり、私の魔法で、アルマみたいに誰かを幸せにできるということ?」
「はいっ!」
ハティの言葉に反応したアルマとベレッタがいつの間にか隣にいた。
彼女たちからも援護射撃が絨毯爆撃。
「ハティさんの魔法なら医療系の魔法でも攻撃系の魔法でもなんでも凄いのでなんでも凄いことができますよ! アルマにもっと! もっと攻撃力の高い魔法を教えてくださいっ!」
「アルマ、欲望に忠実すぎ」




