異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 16
青い空、青い海、青々と生い茂る緑薫る畑には心洗われるよう。
人生二度目のシャングリラ。二度もハティに頭を下げるために、二度もこんな素敵な景色を前にして土下座することになるとは思わなかった。できることなら、心穏やかな昼下がりを堪能したかったものだ。
異世界から友達がきて、双子と双子のテンションが上がる。他の子供たちもおおはしゃぎ。
フェアリーたちはシャングリラに吹き抜ける暖かな風に身を任せて飛び回った。
お昼ご飯を準備する人たちは机を椅子を部屋から運び出す。
あたしはハティに頭を下げた。
「頼みがある」
「……………………」
凄く嫌そうな顔をされた。またクロ関連だと思われたみたいだ。
でも大丈夫。今回はすみれ案件だから。大丈夫ではないかもしれないが。
「安心しろ。今回はクロとは関係ない」
「よかった……」
心底ほっとされた。そんなに嫌か。
「すみれの恋路を応援してあげてほしい」
「こいじ……?」
そうだった。ハティには色恋の概念がないんだった。
「近いうちにすみれとペーシェがマジック・コンペティションっていうトーナメント戦に出場する。ペーシェは弟君を撃破。すみれは真の姿を解放することで、意中の相手と結ばれる。あたしが手伝いに行ければいいんだが、用事があって行けないんだ。ハティに頼みたいんだが、いいかな?」
「分かった。ペーシェとすみれにはいつもおいしいご飯とスイーツを食べさせてもらってる。手伝うっ!」
「そう言ってくれると思ったよ。おーい、ペーシェ、すみれ、ハティが一緒に戦ってくれるって」
「マジすか!? ありがとうございますっ! ハティさんがいれば百億人力ですわ! ついでに優勝狙っちゃおうかな~♪」
調子に乗るペーシェの背後で難しい顔をするシェリーさんが仁王立ちする。
「異世界人は参加不可にしようか……」
「それ、異世界間交流が始まってからにしてください」
「しかしな、ハティに矢面に出られると勝ち目がないんだが……」
「ベルンの守護神に言われると冗談に聞こえないっす」
「冗談ではない。聞いたろ、昨日の」
「ですよね」
まぁ昨日のハティの魔法を見たら絶望でしかないわな。
でも実はハティにはつけ入る隙がある。言わんけど。




