異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 14
「ペーシェ、トーナメント戦って言ったよな?」
「言いました」
「弟君を倒すことが目的で、優勝することが目的じゃないよな?」
「そうです。目的を達成したら棄権するつもりです」
「トーナメント戦ってことだけど、それってチームで出場するの?」
「チームで出場します。というわけで、最悪なことにウララは知らないはずなのに、占いで出た『友人と共に戦い』にぴったり合致します。というわけで、暁さんに出場願いたいんですが。貴女様がいれば優勝間違いないうえに、すみれを守って戦えると思います」
「今月末……実はこっちもこっちで超多忙で手が離せない」
「それは重々承知なんですが、負けると世界が滅ぶ上にすみれの恋路が破綻するダブルパンチですよ?」
「他言無用で頼む。実はあたしたちのほうで近々戦争があってな。負けたら世界が滅ぶらしい占いが出てしまった」
「――――世界、滅ぼうとしすぎじゃないですかね?」
「救える選択肢があるだけマシだと思おう……」
選択肢がなかったら終わるだけだったしな。世界が。
しかし、あたしにはまだまだ手札がある。ペーシェが弟君を倒し、なおかつすみれをサポート、あるいはすみれが戦う前に敵を撃破できる手札が。
「昨日の今日でハティに頭を下げに行くことになるとは……」
「あたしも全力で頭を下げに行きます。黝さんはどうでしょう。あーちゃん師匠の強さはハティさんレベルって話しですけど」
「それはやめとけ。頼んだら応えてくれるかもしれないが、あいつは容赦というか、結果さえ伴えば過程を気にしないやつだから」
「個人的には過程はどうあれ、少なくとも愚弟に勝てれば全てをかなぐり捨ててもいいくらいの勢いでいます」
「マジか……」
ペーシェに黝を引き合わせたのは間違いだったかもしれん。
珍しい闇魔法の使い手で、魔法も近接戦闘もできる超人と言えば黝の名前が出る。教えるのも上手く、褒めるのも上手。ハティとは正反対で教師向け。問題は先にも述べた通り、結果が出れば過程を気にしないところ。
あたしとは正反対の性格。とはいえ、ペーシェが原因で世界が滅ぶらしいから、えり好みできる状況じゃないと判断したのが間違いだったか。
いや、もう終わったことだ。これからなんとかなるだろう。
これからなんとかするために、さっそくハティに頭を下げに行くか……。
と、その前に。
「すみれ、シェリーさんを捕まえてストーンウォールに拳を叩きつけてみようか」
「押忍ッ!」




