異世界旅行2-6 木枯らし吹けば、焚火が燃ゆる 13
組み手がひと段落ついたところでペーシェの話しを詳しく聞こう。すみれの占いをいいとこどりできる方策を練ろう。
「ペーシェはどうしてどこで誰とどのようにいつ戦うんだ?」
「六何の原則に忠実! あたしは愚弟の野望を阻止するべく、あたし自身の幸せのため、今月末にベルンで開催されるモンスターカーレースの前座イベント、『マジック・コンペティション』のトーナメント戦で全身全霊で愚弟を倒します」
「勝算はあるのか? ペーシェが規格外とはいえ、弟さんは専門的な教育を受けた魔法戦士なんだろ? まぁ、桜と黝とゴードンと太郎がペーシェの強さを認めたんだから、よっぽどの手合いでない限り、ペーシェが負けるとは思えんが」
「超スパルタンヌ教育を受けさせていただきましたおかげで、自分に過剰なほど自信がつきました」
「それはなにより。ところで、ウララの占いでは、『友人と共に戦い、知られざる己の真の姿を解放すれば意中の相手はラブずっきゅん!』って出ちゃったらしいんだけど、うまいこと前半部分だけ取り除けないかな」
「暁さんが一番よく分かってるじゃないですか。ウララの占いがほぼ100パーセント当たるって」
「そうなんだよなあ……」
「逆に言えば、あたしと一緒に戦えばすみれの恋が成就するって考えればいいじゃないですか」
「そうとも取れるが、ケガしないか心配でなあ……」
「それはあたしも怖いです」
心配するあたしたちをよそに、恋路が叶うという占いが出たすみれは希望に満ち溢れる。
希望に満ち満ちた瞳は望む未来を待ち望む。
言えない。危険なことはしないでほしい、とはとても。
でも言いたい。すみれの料理があればどんな男も落とせる、と。
残念ながら、サマーバケーションでは得意の料理で落とせなかったらしい。にわかには信じがたい。だけど、本人が言うならそうなんだろう。すみれには悪いが、彼女の告白を受け入れなかった野郎を殴ってやりたい。
終わったことを悔いても仕方がない。あたしにできることをやろう。




