異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 71
謙虚な華恋さんにつっこむのも悪いので、名指しされた通り、ミレナさんとインヴィディアさんをロックオン。
「ドラゴンのお肉がちょー柔らかくておいしくて、それでいてしっかりとシチューのスープに合う味になってて絶品! ステーキも信じられないくらいおいしい。これを食べたら、もうほかのステーキが食べられなくなるかも♪」
ミレナさんには高評価。インヴィディアさんはどうだろう。
「本当においしいわ。ドラゴンのお肉もそうなんだけど、シチューが本当においしい。よかったら作り方を教えてもらえないかしら?」
と、レシピを聞くものだから、烈風よりも素早い動きでクラリスさんが現れた。
「それならぜひとも私にご教授ください。インヴィディアさんには私が、私がおいしいシチューを作ってあげますっ!」
「分かりました。クラリスさんにお伝えします。インヴィディアさんにはクラリスさんの作った愛情たっぷりのシチューを食べていただきましょう」
「あ、はい…………」
インヴィディアさんには悪いけど、彼女に料理はさせられない。無意識に、且つ、悪意なく料理を殺人兵器に改造してしまう人に料理はさせられない。
ベレッタさんとの触れ合いで成長したクラリスさんの、インヴィディアさんに対する圧が凄い。1000年の時を生きる大悪魔も冷や汗たらりである。
次はアルマちゃんとニャニャさんのところへ行ってみよう。
ニャニャさんはアルマちゃんの前に模造紙のように大きな羊皮紙を広げ、アルマちゃんはそれに両袖を当てて魔法陣を記録する。何枚も何枚も。百枚を越えて描き続ける。
いったいなんの魔法を転写してるんだろう。きっと料理系の魔法ではないのだろう。ハティさんと一緒にいたってことだから、ハティさんの魔法なんだろうな。
それはそうと、アルマちゃんたちにも私たちが作った料理を食べてほしい。
そろそろご飯にしようと切り込もう。
「アルマちゃん、そろそろご飯にしない? 今日はドラゴンを使ったシチューだよ♪」
「うおおおおおおおおおおおおおッ! すみません、すみれさん。今はちょっと手が離せませんッ!」
「分かった。それじゃあ食べさせてあげる!」
「ありがとうございますッ!」
そうと決まれば善は急げ。
シチューをすくってはアルマちゃんの口に運ぶ。飲み下したことを確認してシチューをすくってはお口へ運ぶ。濃い味大好きアルマちゃんはドラゴンシチューを食べて笑みをこぼした。
わんこ蕎麦よろしく、隙あらばアルマちゃんの口の中に料理を放り込む。
シチュー。シチュー。ボラのお刺身。フリット・ガレット。かぼちゃの煮っ転がし。シチュー。シチュー。シチュー。ポワレ。シチュー。
とってもおいしそうに食べてくれた。




