異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 67
暁さんとラムさんの駆け引きなどお構いなく、二人に割って入る。
「アイシャさんと一緒に料理が学べるなら、ぜひとも我が家へホームステイしてくださいっ! 一緒に世界中の料理を探求しましょう!」
「素晴らしいですね! 私も世界中の料理を作って食べて創作したいです!」
アイシャさんとハイタッチ。笑顔を交わす私たちを見た暁さんとラムさんは苦笑いして食事を続ける。
さてさて、私はどこで食べようかな。
悩んで速攻で目があったのはクロさんのほっぺに咲く赤いバラの刺青。自分が刺青をするのは怖いから嫌だけど、クロさんのバラを見るのは大好きです。真っ赤なバラが美しく咲く姿に憧れる。
今度、アラクネートさんにバラの景色染めをしてもらいたい。きっと素敵なスカートとブラウスと帽子とソックスとカーディガンになるだろう。
「クロさん、レオさん、一緒にご飯していいですか?」
聞くと、レオさんはウェウカムの構えを見せる。
「もっちろん! 今日は本当にいろいろあったねー。すみれちゃんはキノコ狩りに行ったんだよね。お昼にお肉をもらってたと思うんだけど、それって今日の晩御飯に出るの?」
「実は今、ドラゴンのお肉を贅沢に煮込んでるところです。ビーフシチューならぬ、ドラゴンシチューです」
「ドラゴンシチューッ!」
「暁さんとアイシャさん曰く、人類初のドラゴンシチューですっ!」
「人類初!」
「それはそうと、まずはこちらをどうぞ。クロさんの大好物のガレットをフリットにしました」
差し出すと、クロさんは無言で一心不乱に食らいつく。そんなに待ち遠しくしてくれたのか。料理人冥利に尽きます!
希望的観測100パーセントの私は、クロさんが私の料理を食べたくて仕方なかったというふうに映る。
事実はそうでないと知るレオさんは私とクロさんの間に生まれる違和感に気づきながらも、問題なさそうと察してスルーした。
そこに現れたのはシェリーさんとプリマちゃん、バストさん、新しく使い魔にしたふわふわきゃっとの二人と二匹。
「すみれ~♪ 一緒の席いいか~♪」
「もちろんです♪ 私にもあとでふわふわきゃっとをもふもふさせてくださいっ!」
「もちろんだとも。そこで、すみれに相談があるんだが」
「私に相談ですか? もちろん、なんでも聞いてください」
構えると、シェリーさんは私の膝にふわふわきゃっとをふわりと置いて真剣なまなざしを向ける。
「この子の名前がなかなか決まらなくてな。なにかいい案はないだろうか」
「この子の名前、ですか。むむむ。てっきり、この子のお口に合うご飯のレシピを作ってほしいということかと思いました」
「それも頼む」
「お任せくださいっ! ともあれ、名前ですか。むむむ」




