異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 64
「調理したボラの皮の匂いを取り除く方法があれば……」
「そうですね。ボラが臭いのは水質の問題ですから、冬に沖を回遊するボラに限れば臭みのないおいしいボラが手に入るはずです。今日収穫されたお魚さんたちは沿岸部で収穫したものですよね?」
ショウさんに聞くと、答えはイエス。
「まだ船が完成してないから、漁は川か沿岸部までだね。そうか、収穫時期で魚の体質が違うのか。いろいろ体験してみないと分からないな」
「ですね。みなさんはエルドラドに来てから日が浅いですから、なにごともトライ&エラーです。チャレンジしていきましょうっ! ひとまず、おいしいボラ料理を楽しみましょう。こちらに煮込んだボラ鍋がありますので、今晩のおかずにどうぞ!」
「いいの? それはすごく助かるな。本当にありがとう。すみれちゃんにはお世話になりっぱなしだね」
「いえいえ、私もいろんな食材を料理できて楽しいです。こちらこそ、本当にありがとうございます」
お辞儀をするとリンさんからも優しい言葉をかけられる。
「すみれ、本当にありがとう。これでまたおいしいお魚をみんなで食べることができる。でも……」
言葉を濁して未調理のボラを見る。見た途端、しかめっ面をして目を逸らした。
「今日のところは、申し訳ないんだけど、あるだけの臭い魚……ボラをなんとかしてもらえると助かるのだけど…………」
「いいんですか? もらって帰っちゃいますよ?」
「大丈夫です。誰も手をつけないので。むしろ申し訳ないくらいです。いらないものを押し付けたみたいで」
「とんでもありません! いただけるならいただきます。それにこのままだと廃棄されてしまいそうですし」
「本当にありがとうございます。助かります」
ぐぬぬぬ……!
ボラのおいしさを知ってもらえたがしかし、残念ながら時期が早かったようだ。私が知る寒ボラ並みにエルドラドのボラはおいしい。だからおいしさを知れば精神的ハードルが下がると思ったのに。
ボラさん、力不足でごめんね。
せめてメリアローザに持って帰っておいしく調理してあげる。




