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異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 61

 やっぱり寒ボラは刺身が一番だと思うのです。ということで、思い直してもらいましょう。


「匂いがキツイのは皮の部分だけなので、皮は綺麗に剥いで身を生で食べましょう。ポワレも唐揚げもおすすめです」

「でも、身も匂いがすごくて。獣人の人たちは人間より鼻が利くので相当辛いそうです」

「身の匂いもすごい? それってもしかして……」


 ボラは淡水魚なので鮎と同じで匂いがする。スイーツフィッシュとは違い、ボラは生臭いというか、泥と一緒にご飯を食べるのでとても臭いのだ。けれどそれは皮の部分だけ。身が臭い理由はおそらくまな板が原因だろう。


「これ、皮を処理したまな板で身を捌きましたね?」

「うん、そうだけど」

「皮の臭い匂いがまな板について、まな板についた臭い匂いが身についてしまったんです。なので、皮処理用のまな板と身を切り分けるまな板は分けましょう」

「なるほど。これは盲点だった。教えてくれてありがとう」

「いえいえ。それでは、ボラがおいしいお魚さんだということを知ってもらいましょう」


 当然のように包丁を握ると、華恋さんは当然のように唖然とした。


「本当に料理が好きなんだね。料理してるかご飯食べてるかしか見てない気がするんだけど」

「食材探しもしてますよっ!」

「あ、うん。そうだった。ごめん」

「それでは、捌いてみせますので真似してください。華恋さんもいかがですか?」

「え!? いや、私はミレナさんと一緒にやることがあるから!」

「え!? うん、まぁ、行こうか。どこかに」


 ていよく逃げられてしまった。仕方ない。誰しも興味のあることとないこととあるのだから。でもできれば料理好きになってほしいので、いつか彼女のことも巻き込もうと思います。


「ラムさんは参加でいいですよね?」

「もはや強制参加。いいけど。どんなポワレができるのかは興味ある」

「ぽわれ……ってなんですか?」


 下準備をする私に代わってラムさんがショウさんにポワレの説明をしてくれる。


「ポワレっていうのは、食材から出た脂を加熱中に魚や肉にかけて皮目をパリッと、中をふっくら仕上げるアロゼっていう調理法を使うんだ」

「え、でもボラは皮を剥ぐんですよね。皮を別で処理して、あとで被せたりするんですか?」

「そこは私にも分からないの。どうするんだろうね」


 疑問を向けられて、私は自信満々に答える。


「今回はヌーベル・キュイジーヌではなく、古より伝わりしポワレにします」

「古より伝わりしポワレ?」


 ラムさんも知らないらしい。しょうがない。昨今のポワレと言えばアロゼである。

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