異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 59
以下、主観【小鳥遊すみれ】
ハティさんにお願いごとをしたのち、戦闘に興味のない私は華恋さんやラムさんと一緒にエルドラドへ赴いた。
そこには先に訪れたヘラさんが子供たちを前にしてスマホを向ける姿がある。国王様への感謝の動画を撮影中のようだ。
めいいっぱいの感謝と笑顔が溢れてる。とっても素敵な光景だなあ。心がぽかぽかしちゃいます。
さて、そんな彼らのため、私の知的好奇心のため、いざ厨房へと参ります。
「さぁさぁ、今日はどんなお魚さんやお野菜たちと出会えるでしょう。とってもわっくわくですね♪」
「すみれは本当に料理が好きだね。できればエルドラドの料理人に、異世界の料理をたくさん教えてあげてくれると嬉しいよ。彼らも基本的な調理はできるけど、すみれほど全く別の世界の食材を扱えるほどじゃないから」
「任せて! 蒸し焼きから揚げ物まで、なんでも作っちゃう♪」
「ほんとに頼もしいよ。ラムさんもミレナさんも遠慮なく楽しんでいってください。特に子供たちは外世界の知識に興味津々なので、彼らの好奇心に応えてくださると嬉しいです」
華恋さんの言葉を、ラムさんとミレナさんは笑顔で迎え入れる。
「もちろん。グリルなら任せて! でもできれば、アルマか誰かに全方位加熱ができる調理設備を作ってもらえると、私の活躍の場が広がって助かる。私もハティさんみたいに、『お姉ちゃんすごーい』って言われたい!」
「おそらくそういう道具は魔術師組合と職人さんたちに相談すれば、1時間くらいで作ってくれると思いますよ」
「はやっ! さすが腕利きの職人と超一流の魔術師がいるメリアローザ」
感心するラムさんの前にミレナさんがチョップを入れる。
「いや、華恋が言う1時間ってそれ、とんでもない皮算用じゃないか?」
「そんなことはありませんよ。きっとフレナグランかラ・ミストルティンにすでにそういう調理器具があると思います」
「確証はないのか……」
「ありませんが、彼らなら間違いなく作れますよ!」
すごい自信だ。自分のことじゃないはずなのに。
ともあれ、調理器具が増えるということは料理のレパートリーが増えるということ。
つまり世界が広がるということ。もしもまだ存在しないにしても、ぜひとも作っていただきたい。




