異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 57
「みんな、本当にごめん。そしてありがとう。本来なら俺が彼女を御しきらないといけないのに」
「いいんですよ。男は女の尻に敷かれるもんです」
それ、女の子のペーシェちゃんに言われると、なんかちょっともやもやするんですけど。彼女の尻には未来の旦那さんに敷かれてもらいましょう。
今は勝敗の行方。と、同時に彼女たちが本気で戦う姿が見てみたいという好奇心がある。
大問題児とはいえ冒険者として超優秀なクロちゃん。
自称一般人のハティちゃんはワープなどという前人未踏の魔法が使える最高峰の魔術師。
ベルン騎士団員として、魔法の深淵を目指す者として興味がわかないわけがない。
「それにしてもどこに消えてしまったんでしょう。そもそも、身を隠すだなんてハティさんの性格には合わないです。なにか作戦があるんでしょうか (ベレッタ)」
「クロは魔法も使えるが近接戦のほうが得意みたいだから、わざわざ近距離戦を仕掛けるとは思えない。魔法で奇襲にしても、わずかな魔力のゆらぎを感知するだろう。とすれば、魔法での奇襲に関して不可視の魔法を使うのは最適解と言えるのだろうか (シェリー)」
「半径5キロと広大であるとはいえ、射程範囲と命中精度を考えたら、、あまり長距離での射撃は有用とは言えない。魔法自体を隠すこともできるが、視覚的にはともかく、魔法の発生から着弾までを完全に隠しきることはできないはず。いったいどうするのか、僕も全く分からないな (サンジェルマン)」
「ですね。もしかすると足場を奪う系の魔法かもしれませんよ。近接戦闘職が一番嫌がるやつです (レオ)」
「でも直径10キロもあるです。いくらなんでも全域は不可能です。逆に遮蔽物を増やして不利になる恐れがあるです。シンプルに距離をとって長距離射撃だと思うです (ニャニャ)」
「いえいえ、ハティさんのことだからきっととんでもない魔法を使うに違いありません。逆に近接戦を仕掛けるかもしれませんよ (アルマ)」
「え? ハティさんは魔法職ですよね? (ニャニャ)」
「ハティさんは大剣も使えるハイブリッドエクセレントマーベラスグレートレディなのです。剣も魔法もお手の物なんですよ。アルマはハティさんが戦ってるところを見たことはありませんが、暁さんが言ってました (アルマ)」
「マジすか!? 魔法も剣もって! (ペーシェ)」
「事実は事実だが、剣は見よう見まねなうえ、力技で振り回してるだけだから本職の剣士とは言えん。それでも、ハティの体格から大剣が振り下ろされる時の圧迫感は凄いがな (暁)」
「ただでさえ大きいのに……そのうえ大剣を振り回されたら恐怖でしかないです (ニャニャ)」
「ともあれ、近距離から遠距離までお手の物とは、やっぱりどう考えても一般人じゃないな。魔法の特別教諭ってことでレナトゥスに協力してくんないかなあ (レオ)」
「それは私も賛成です。異世界交流にはワープの魔法が不可欠。どうにかして、せめて一人でもいいからワープが使える人材を確保したい。ちらっ (シェリー)」
「片道いくらに設定しようかなー。人数や物資の量でも料金を加算しなくちゃなー。ワープが使えるアルマとハティさんにも周知しておかなくっちゃなー (ペーシェ)」
「ほんとにしっかりしてるな…… (シェリー)」
「アルマであればタダで往復しますよ♪ (アルマ)」
「アルマ、イニシアチブが握れるなら手放したり安売りしちゃダメだ。あたしのためにも! (ペーシェ)」
「ペーシェ…………。そ、それにしても音沙汰ないですね。いったいどこに行ったんでしょう。円の外に出たらアラームが鳴る魔法陣が敷かれてるので、外に出てしまったらすぐに分かるはずですが (ベレッタ)」
「そろそろハティがどこにいるか分かる頃だ。ハティもできる限り、クロと同じ世界で同じ空気を吸いたくはないだろうからな (暁)」
「「「「「…………………… (全員)」」」」」
暁ちゃん、それはさすがに物言いが酷い。




