異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 52
場所を移してシャングリラ。
今日も今日とて素晴らしい秋晴れが広がる。空は青く、海は青く、木々は青々と生い茂る。
本当に素晴らしい場所だ。こんなに素晴らしい場所で、ハティさんが嫌う人に会って欲しいなんて言いたくないなあ。
ペーシェさんのワープで移動した場所は大きなお屋敷の前にある緑の畑。
私とペーシェさん、暁さん、ラムさん、シェリーさんの5人で訪れた。
「ここがシャングリラか。最後に来た時は荒涼とした土地だったのに、ずいぶんと立派になったもんだ」
見渡して、暁さんは腰に手を当てて胸を張る。
お屋敷を見るとガラス窓越しに昼食を楽しむ子供たちの影が踊った。どうやらお昼時のようだ。持ってきた果物を気に入ってくれるといいな。
窓を眺めると、我々の気配に気づいたハティさんが窓を開けて呼び寄せてくれる。
食堂へ入るといつものシャングリラの顔にくわえ、アポロンさんの姿があった。
「なんでアポロンがピッツァを焼いてるのか。もう告白して同棲してるの?」
暁さんのストレートパンチが炸裂。
アポロンさんは噴き出した。
「ぶっ!? それは……まだだけど…………で、暁たちはどうしてここに? というか、どうやって来れたの?」
「どうやらここが異世界だってことを理解してるようだな。話しが早くて助かる」
「それについては、まぁ、僕にもいろいろと事情が……。それはそうとして、お昼ご飯を一緒にしにきたってわけじゃなさそうだけど」
「みんなも一緒にご飯を食べよう。アポロンがおいしいピッツァを焼いてくれるよ!」
ハティさんが容赦なく会話をぶった切った。
相変わらずのハティ節。そこが貴女の素敵なところ。
テンションマックスのハティさんを前に、暁さんは彼女を制止して本題に入る。
「悪いがそれはまたの機会に。今日はハティに頼みたいことがあって来たんだ」
「任せてっ!」
大丈夫だろうか……。
暁さんのことを親友と思うハティさんは彼女のためならなんでもする勢い。であるが、今回ばっかりは断るかも……。
ハティさんが嫌がることを分かっていて、暁さんはいつも通りの声色で頼み事をする。
「クロと戦って勝って、強くなりたかったらレオの言うことを聞いて、周囲の人たちと協調して生きていかなくてはならない、って言ってくれ」
「ッッッ!!!???」
ハティさんが見たこともない嫌そうな形相を作った。
無限の時間とも思える沈黙が横たわる。初めて見るハティさんの表情に子供たちも困惑が隠せない。




