異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 51
楽しいランチが終わり、暁さんが最初に私たちに感謝の言葉を贈る。
「すまないな、すみれ、レーレィさん、ベレッタ。国王様は悪い人じゃないんだが、ちょっと子供っぽいところがあるというか、ああいう性格なもんで」
やっぱり、『今夜』って言おうとしてたみたい。
私は今夜でも、なんならこれからでもよかったですがっ!
と言うと、おそらく顰蹙を買ってしまうので黙っておこう。
だから暁さんの表情に集中して答えよう。
「そんな全然! 料理がお口にあったようでなによりです。手抜き料理だからどうなることかとは思いました」
「ほんと……すまん……」
いけない。暁さんに気を遣わせてしまった!
すかさずレーレィさんがフォローを入れてくれる。
「ところで、国王様といえど国外に出られないって、理由を聞いてもいい? お肉好きって話しだから、ぜひともヘイターハーゼのハンバーグを食べてほしいな」
「それなんですが、土地との契約がありまして、残念ながら異世界はおろか、ダンジョンの中にも入れないんです」
あ、それはエルドラドの人たちからも聞いた。
「エルドラドの人々も言ってました。国王様にはぜひとも、開拓したエルドラドを見に来て欲しいということでしたが、やんごとなき理由でダンジョンに入れない、と」
「そうなんだ。国王様もエルドラドと移住してきた彼らの暮らしぶりを直接見たいとおっしゃるのだが、こればかりはどうしようもない」
「それなら、スマホを使って動画で撮って見せてあげればよいのではないでしょうか?」
「すまほ……と言うと、アルマたちが買ったっていう四角い板のことか?」
四角い板。私も最初はそう思った。懐かしい表現を聞いて過去の無知な自分を思い出し、なんだか無性に恥ずかしくなる。
「そ、そうです。動画を撮ってお見せすれば喜んでもらえると思います」
「なるほど。すみれちゃん、エクセレントなアイデアだわ! さっそくエルドラドへレッツゴー!」
思い立ったら即行動のヘラさんが拳を天に掲げる。
国王様のためになにかをしてくれようとしてるのだろうけど、聞きなれない単語が多くて困る暁さんはヘラさんに確認をとる。
「ええと、動画ってなんでしたっけ?」
「ログボードと同じことよ。動画を記録して、別の場所で見れるようにするの。エルドラドのみんなにも出演してもらいましょう。感謝の言葉を伝えられるわ!」
「なるほど、なんとなく理解しました。ですが、申し訳ないのですが、我々は少し用事がありまして、華恋とロリムをつけるので彼女たちに雑務を頼んでもらっていいでしょうか?」
名指しされた華恋さんとロリムちゃんはサムズアップ。
ヘラさんとシャルロッテ姫様たちと一緒にエルドラドへ向かった。
対して我々はというと……。
「さぁ、ダメ押しに次ぐダメ押しだ。ハティに頭を下げに行くか」
「やっぱりやらなきゃダメなんでしょうか……」
ハティさんになにかをお願いするのが嫌なのではない。
ハティさんが嫌がるお願いをしに行くことに罪悪感を感じる。
だけど、大好きなグレンツェンやベルンのことを思えば、レオさんの幸せな結婚生活に必要なことと思えば、きっとハティさんも協力してくれるはず。
果たして、結末やいかにっ!




