異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 43
顔を上げた暁ちゃんが二つの提案をした。
「考えが二つあります。一つはレオさんがメリアローザに移住すること。正直言って、こちらの世界でもいろいろやらかしてくれてますが、力づくで抑えることは可能です」
「フェアリーとクロちゃんがいる世界に俺が移住。やぶさかではない。二つ目は?」
「超荒療治を仕掛けます。そうすると、ハティに迷惑をかける形になります。クロの唯一の長所である『強者の言うことには従う』という性格を利用します」
「唯一の長所……」
それ、長所って言っていいのだろうか。
しかし利用できるものは利用していかないといけない。そもそも、利用できそうな性格がそこしかない。選択肢はないのだ。
問題は、予測される結果と過程。この場合の懸念点は過程。ハティちゃんにどのような迷惑がかかるのか。魔法技術に関して彼女に話しを聞きたいレナトゥスとしては、彼女に忖度しておきたいから、あまり悪感情を抱くようなことはしたくない。
俺の気持ちを知らない暁ちゃんは、ハティちゃんの嫌がる顔を思い浮かべて肩を落とす
「クロはハティが大嫌いです。ハティもクロが大嫌いです。元々、二人は同じ世界に住んでたんですが、嫌いすぎてハティがクロを追い出しました。世界から」
「世界規模で大嫌いって、史上最悪の犬猿の仲やん」
「とはいえ、クロを放置すると別世界の住人に迷惑がかかるということで、あたしが彼女の手綱を握ることになりました。ちなみに、さすがのあたしも疲れます」
「暴れ馬どころの性格じゃないからね……」
「なのでこう言っては申し訳ないんですが」
「俺たちのいる世界に連れて言って欲しい、と」
「でも預かった身としては、綺麗なクロにして送り出してやりたいです」
「綺麗なクロちゃん……」
つまり、今のクロちゃんは汚い、と……。
気持ちは分かるけど。
苦虫を噛み潰す暁ちゃんは言葉を続ける。
「ということで、世界からクロを追放したハティと、送り出すあたしが、なんとか頑張りたいと思います。本当ならクロが内省して他人に迷惑をかけないように自発的にいい感じにしてほしいところですがッ!」
「心中お察しいたします」
暁ちゃんは責任感が強くて義理堅いなあ。
さすがの俺でも、彼女が身内にいたら諦めて放置してたかもしれない。
俺も彼女を嫁にすると決めたのだ。俺と彼女とみんなのためならなんでもしよう。




