異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 37
仲間を倒されて激おこのシーサーペントはなりふり構わずハイドロカノンを放つ。一極集中から横薙ぎの範囲攻撃。小さな水の粒を散弾のように飛ばすハイドロバレット。体を蛇のようにくねらせながらの突進攻撃。
さすが、海蛇様は技のレパートリーも多くてらっしゃる。
だけど、歴戦の猛者には当たらない。躱し、切り返し、防御し、時には仲間の後ろに隠れてやり過ごす。
さて、シェリーちゃんとサンジェルマンさんが大活躍ときたら、次は俺の番って話しでしょ。
俺にはシェリーちゃんやサンジェルマンさんのような、派手な大技はない。だけど、急所を一点集中で打ちぬく武器と技術がある。シーサーペントが口を開けた瞬間に魔弾を叩きこむ。これでジ・エンド。
ライブラから魔銃を取り出し両手に握り、タイミングを見計らって引き金を引く。
本来なら雷系の魔弾を使いたいところ。しかし、対雷系水魔法を使うところをみると、もしかすると対雷対策があるかもしれない。
ここは素直に膂力重視。土系魔法の貫通弾でシンプルにいこう。
四属性の魔弾が放てるリボルバーを土属性に変更。引き金を引くことで貫通力のある魔弾を発射。
――――――するはずなのに、どういうわけか引き金を引いても弾が出ない。
それどころか、魔力を装填した瞬間にリボルバーがぽろりと抜け落ちた。
――――――――――――え?
昨日整備した時は壊れてなかった。
メンテナンスも抜群。絶好調といった様子。
なのに、どうして、こんな壊れ方をするんだ?
経年劣化じゃない。人力で無理やりへし折ったような跡がある。
そういえば……メンテナンスし終わったあとにクロちゃんが、『それ見せろ』って言って彼女に渡したんだった。
ま、まさか…………。
「ねぇ、クロちゃん。昨日、俺の魔銃を渡した時になんかした?」
言うと、彼女はシーサーペントのハイドロカノンを大剣で真っ二つに割って答える。
「構造を見た」
「どうやって?」
「真ん中の筒を外した」
「あ……そうですか…………」
やっぱりか。
俺の、俺が長年愛用してきたリボルバーが壊された。
悲しいとか、怒りとか、そういう感情はない。彼女がどういう人間かを知ってたはずなのに、警戒することなく渡してしまった過去の俺に注意してやりたい。ただそれだけを考える。




