異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 34
警戒され、視線を外されないと分かったシェリーちゃんは正攻法で挑む。匍匐前進で進み、これ以上警戒心を上げないように細心の注意を払いながら近づく。
にゃんこは咀嚼を止め、近づいてくるシェリーちゃんをじっとみつめて観察した。
ある程度近づいて動きを止め、懐にしまっておいた木の実を手のひらに出しておびきよせる。
これを見たにゃんこはぴくっと体を反応させ、ちょっとずつ、ふわりふわりと近づく。手の目の前まできて止まり、シェリーちゃんを見る。動かない彼女を確認して手のひらにある木の実をぱくり。
もしゃもしゃして、ひとつ、またひとつと食べ進める。
最後の一個になったところでシェリーちゃんはふわふわきゃっとを包むように抱きかかえ、口元に手をやって木の実を食べさせる。
なんて手際がいいんだ。完全に警戒を解いて手なづけた。
そしてなんていい笑顔でもふもふするんだ。
俺ももふりたいっ!
無謀にも勇み足で近づく俺は、気づいたら上空100メートル地点にいた。
湖の遙か彼方。地平線の近くに巨大な鳥の姿がある。この距離から見えるということは、あれはきっとドラゴンだろう。結構近くにいるもんだな。できうることなら、俺もドラゴンの剥製が欲しい。
ドラゴンライドしてーっ!
なんてこと考えてる場合じゃねーッ!
浮遊感の最中、絞りだすようにフライの魔法を全身にかけて勢いを殺す。
幸い、落下の慣性が働く直前で魔法がかけられたから、ふわりと浮くように体を支えられた。これがもし、落下中だったら危なかったかもしれない。フライの魔法で空を飛べるとはいえ、これで慣性を殺すのは時間がかかる。空中に停止する前に地面に激突という未来もありえた。
地面に着地して、両手を大地につけて青ざめる。
「あっぶねー……。シーサーペントに挑む前に死ぬところだったー……」
「レオさん、大丈夫ですか? お二人とも、本当に無茶しないでください。ふわふわきゃっとは見た目はふわふわですがモンスターなんですから。この子は随分と強い威力の魔法を使えるみたいですし」
「ご、ごめん。それで、シェリーちゃんは?」
「ずっともふもふしてますよ。ふわふわきゃっともシェリーさんに懐いたみたいです」
「羨ましいっ!」
「レオさん……」
だって、あんな、あんなにもこもこした猫ちゃん、もふりたいに決まってんじゃんっ!
しかし、だ。今はもふもふをお預けにして戦闘へ備えよう。




